韓国の自動車メーカーである現代自動車は台湾製の車載半導体の供給に支障が生じたため、4月7日より蔚山工場の操業を停止したほか、12日には牙山工場の操業も停止させるなど、韓国内でも車載半導体の不足の影響が顕在化してきた模様だ。韓国には半導体メモリの大手企業が2社あるが、それ以外の半導体については脆弱であることをさらけ出した格好だ。韓国政府も近年、非メモリ分野の強化を打ち出しているが、民間企業は半導体メモリの成功体験から抜け出せないでいる。

こうした状況の中、韓国で次世代自動車研究を進める国立研究機関「韓国自動車研究院(KATECH)」の技術政策室が、「車載半導体不足、長期的な観点から対応が必要」と題するレポート(自動車産業動向レポート第60号)を公開した。

同レポートによると、「韓国の自動車産業における車載半導体は98%を海外に依存しており、自給率は2%にすぎないことが判明。特に車載電子装置制御用の半導体であるMCUのような重要部品のサプライチェーンそのものが韓国国内にないのは問題だ」と指摘している。

MCUは車両1台あたり40個程度使われるとされており、その70%が台湾のTSMCが各半導体メーカーから委託を受けを生産を行っている。もしTSMCの操業が止まる事態が生じれば、全世界の自動車メーカーの工場が全面的に操業停止に陥るいう致命的な構造となっている。しかも現在、TSMCには注文が殺到しており、従来は発注から納品まで12~16週(3~4か月)であったものが、26~38週(6~10か月)に延びているともしている。

さらに、「需要予測の失敗や災害‧事故による車載半導体不足が完成車の生産に影響を与える中で、根本的な原因である低収益性・サプライチェーン偏重という車載半導体産業の特性に注目する必要がある。未来の車載半導体市場はMCU中心から、モバイル用アプリケーションプロセッサのような高性能半導体を中心として再編されるため、韓国企業が新たな市場での機会を模索することができるよう(国や地方政府の)支援が必要である」と提言している。

こうしたレポートの発行とほぼ同じタイミングで韓国忠清南道のヤンスンジョ知事が4月12日、車載半導体の国産化と自動運転車の開発促進の支援に向け、車載半導体研究開発センターを設立し、韓国国立自動車研究院の研究開発部門などの誘致に成功したことを明らかにした。

それによると、車載用ファブレス企業を中心としたエコシステムを構築し、中核技術の開発をサポートする計画だという。すでに牙山市に敷地面積5696m2、延べ面積1万4616m2(地下1階、地上7階)のビルを建設しており、韓国国立自動車研究院のAIモビリティ・スマートカーなど6つの組織のほか、AIビッグデータ・コンピューティングソフトウェアのトレーニングセンターなど、自動運転に関連する組織が入居することになっているとしている。

なお、同知事は「設立されたR&Dキャンパスが車載半導体不足をすぐに解決することはないが、国内の自動車部品産業のエコシステム構築をリードし、将来の中核技術の基盤となることは意義深い」と述べたと複数の韓国メディアが報じている。