2024年の稼働を目指して米国アリゾナ州に300mmウェハ対応のファウンドリファブを建設中のTSMCだが、同社は将来的に米国にさらに5つのファブを建設し、台湾を上回る生産拠点とする計画を立てていると台湾の経済メディアである經濟日報が報じている。
ただし、TSMCが米国への赴任を希望する従業員に明らかにした情報だとしているものの、TSMCは公式な発表を行っていないが、その規模は月産10万枚をはるかに超す可能性があるとのことで、これが実現されれば、米国内で最大の生産能力と先端プロセス技術を備えた、非米国資本の半導体工場群が誕生することとなる。
現在、TSMCは米国アリゾナ州の新工場で働く人材を社内外から募集している。社内の従業員の応募資格は、同社で3年以上の勤務経験があり、TOEICなどの英語の試験で一定以上の点数を獲得していること、ならびにコミュニケーションがとれるだけの英語力を有していること、さらに2025年8月までの3年間の赴任契約に署名できるものだという。また、合格者は、台南の先端プロセスに対応するFab 18Aにて2022年9月まで先端プロセス製造などのトレーニングを受ける必要があるという。
バイデン大統領の意向にも沿うTSMCの計画
米国のバイデン大統領は、半導体、電気自動車(EV)向け蓄電池、レアアース、医薬品の4品目のサプライチェーン(供給網)の見直しを要求する大統領令に2021年2月24日付で署名した。
主要な米国産業のサプライチェーンのセキュリティを強化すると同時に、共通の価値観を持つ同盟国やパートナーと緊密に協力するとしている。
2020年に決定されたTSMCのアリゾナ進出は、前政権時代の米国政府の要請に従ったものだが、将来に向けた6ファブ群建設構想は、バイデン政権の政策とも合致しているといえるだろう。ファウンドリ業界2位のSamsung Electronicsも、うわさレベルながら、米国内に巨大ファウンドリファブ建設を計画しているといわれており、将来、米国でTSMCとSamsungがファウンドリ市場の主導権を握る激しい争いをする可能性がある。