TrendForceによると、ノートPC市場の好調を背景に、PCメーカーがクライアントSSDの追加注文を出しているため、NANDの需要は増加し続けているという。

また、一部のスマートフォンメーカーの積極的な在庫積み増しより、NANDサプライヤの在庫はすでに減少傾向に入っているとするほか、データセンターの顧客が2021年第2四半期にエンタープライズSSDの調達量を増やすとの予想があることから、NANDサプライヤ各社はNANDウェハの供給量を絞る方向で動いているという。これはほかの製品カテゴリと比べてNANDウェハの粗利益が低いためだという。

一方、テクノロジーとして市場を見ると、2021年第1四半期は100層を超すプロセスへの移行が、ノートPC向けSSDでは期待されたほどには進んでいないとTrendForceは指摘している。

背景には、PCメーカーによる100層超え製品のテストと承認が当初の予定より遅れていることが挙げられており、現在の需要の大部分は、92/96層プロセス品だとする。他のアプリケーションセグメントの顧客も、64層品ならびに92/96層プロセス品に需要を集中させており、こうしたアプリケーションからの需要に対応することを目的にウェハの出荷量が減少、結果としてウェハの契約価格が下げ止まってきており、すでに一部のNANDサプライヤは2月に入ってNANDウェハの見積もり額を引き上げたという。

こうした動きをもとにTrendForceでも2021年第1四半期のウェハ価格の予測を、従来の前四半期比10〜15%低下から、比較的安定へと変更している。

今後の動向についてだが、2021年第2四半期に向けてデータセンターおよびサーバセグメントの顧客が、調達に注力することが期待されており、NANDサプライヤもそうしたエンタープライズSSDの需要を満たすことに集中することが予測されるため、ウェハセグメントへの注力度は下がる見通しだという。ただし、NANDコントローラーICの継続的な不足と値上げの影響により、モジュールメーカーからの注文量はやや控えめになる見込みであるともしており、こうした需要と供給の両方の弱まりにより、NANDウェハ価格は2021年第2四半期もほぼ横ばいになる予想だという。

なお、TrendForceによると、NAND以外のICが依然として不足しているため、NANDサプライヤがクライアントSSDの需要を満たせたとしても、そのほかのICの不足により、ノートPCの出荷量が予想を下回る可能性があることに注意する必要があるという。また、世界各国で新型コロナワクチンの接種が始まっており、2021年下半期にパンデミックが沈静化に向かう場合、ノートPC需要はパンデミック前のレベルに近づき始めることが見込まれ、OEM各社もそれに応じて事業計画を修正する可能性があるため、2021年下半期のNAND市場に不確実性が残るとしている。

さらに、NANDウェハの価格は、サーバからの需要の高まりもあり、2021年上半期は上昇圧力がかかることから、比較的穏やかになると思われるが、2021年第3四半期にはMicron Technologyが176層製品の出荷数量の増加を目論んでおり、多くのアプリケーションがそれまでに100層を超す製品への移行が進むことが見込まれることから、2021年下半期のNANDウェハ価格についても不透明さが残るともしている。

  • TrendForce

    2021年第1四半期および第2四半期のNAND価格予測 (出所:TrendForce、2021年2月)