カプセル追跡の精度はなんと200m!
JAXAのカプセル回収班は、全員がオーストラリアより帰国。現在、2週間の隔離期間中だが、隔離先よりオンラインで説明会に出席し、現地での活動結果を報告した。
はやぶさ2では、より確実にカプセルを発見し、回収するために、初号機よりも体制を強化していた(詳しくは下記の記事を参照)。バックアップのために、複数の追跡手段を用意していたのだが、それぞれ順調に成果を出せたようだ。
光学観測係(GOS)は、火球となったカプセルの追跡を担当。そのために、星合わせカメラと追跡カメラを組み合わせ、高精度に自動観測ができるシステムを開発したという。カプセルを模擬できるような高速移動光源が無かったため、事前のテストは十分とは言えなかったものの、光が消える直前まで追跡することに成功した。
方向探索係(DFS)は、カプセルが出すビーコンを受信し、位置を推定。内之浦での気球を使った追尾訓練、シミュレータによる追尾訓練など、日本で10回以上の練習を行っており、「練習よりも本番の方が簡単だった」とのこと。位置決定の精度は、目標が3kmだったところ、約200mという高い精度で追跡することに成功した。
方向探索係(MRS)は、マリンレーダーを使ってカプセルを追跡。こちらは、メーカー主体の混成チームで、2019年には、内之浦やウーメラで気球を使った試験を実施、帰還直前の9~11月には国内訓練を行い、現地に乗り込んだ。なかなか繋がらない衛星電話での連絡に苦労したものの、本番では着陸地点の200m近くまで探知できた。
ドローン係はカプセル発見のバックアップ手段だったが、現地では、前面ヒートシールドの探索に活用されたという。7:20頃に離陸し、2km×2kmの範囲の空撮を行い、約2,500枚の画像を取得、8:50頃に着陸し、画像認識による解析を開始した。9時前にはもう位置を検出し、本部に状況を報告したそうだ。
RHQ・ヘリコプタ係は、事前に国内で本番と同型のヘリを使い、視認性や振動環境などの試験を行っていたという。初号機では、探索フライトと回収フライトを分けていたが、今回は高速化のため両者を1回で実施、短時間で回収を完了することができた。ただし、ヘリの航続時間としては、ギリギリの運用だったとのこと。
カプセル係には、安全化処理という大きな役割がある。ヒートシールドの分離やパラシュートの切り離しなどのため、カプセルでは火工品が使われているのだが、もし未作動のものが残っていると危険。事前のリハーサルでは、アドリブでそういう事態のケースを練習したところ、不手際が見つかり、本番の手順に反映したそうだ。
この帰国報告には、各係の担当者が出席。詳細な説明からは、大仕事を成し遂げた充実感まで伝わってきた。今回はそれをダイジェストにまとめたが、興味深いエピソードが満載なので、ぜひ説明会の動画もフルで見てもらえればと思う。