近年、空撮を利用した点検作業の効率化や、人の目が届きにくい高所作業の代替をはじめ、さまざまな産業でドローンの活用ニーズが増加している。ソフトバンクでは、自動飛行や自動撮影などに対応したドローンサービス「SoraSolution:ソラソリューション」を2019年10月から提供している。

そしてソフトバンクは12月17日、 双葉電子工業と共同で、橋梁や鉄塔、建設現場などでの点検をはじめ、測量や災害支援などに活用できる産業向けドローンの共同開発を2020年9月から開始し、機体のプロトタイプを製作したと発表した。

  • ソフトバンクと双葉電子工業が共同開発した産業向けドローン(機体重量が7㎏、最高速度が約11m/s)

防塵・防水性があり自動航行が可能な同ドローンは、双葉電子工業の産業用ドローンをベースにLTE対応の通信モジュールを搭載しているほか、ソフトバンクの高精度測位サービス 「ichimill:イチミル 」に対応している。また、風速15メートル毎秒の環境下でも安定した飛行を実現するとのこと。バッテリーよる連続フライト時間は最大45分。「安定しながら自動航行できる点が最大の武器だ」と、双葉電子工業 理事システムソリューション事業センター長の横山勝氏は話す。

  • 双葉電子による実証実験 風速15メートル毎秒の環境下でも安定した飛行が可能

LTEの利用により、ドローンを遠隔地から飛行制御できるほか、撮影した画像や映像をリアルタイムに送信することが可能。また、機体のテレメトリー情報(機体の位置情報やバッテリー残量など)もリアルタイムに送信できる。

さらに、「ichimill」を活用することで、誤差数センチメートルの精度で飛行の制御が可能だという。これにより、画像に写っている対象物を特定しやすくなるほか、複数枚の画像を1枚に合成(オルソ化)した場合も画像の歪みが少なく鮮明になり、地図データと重ねたときの精度が向上するという。

橋梁や鉄塔、建設現場、ビル、災害現場などさまざまな点検分野での活用を想定しており、今後両社は、ドローンの機能改良を進めるために、 2020年度から21年度にかけて実証実験を行う。21年4月ごろを目途に、ソフトバンクの法人向けドローンサービス「SoraSolution」のサービスラインアップに追加する予定だ。

  • 同ドローンの活用が想定される点検分野

また、サビ検知や差分検知など、AI(人工知能)を活用したデータ解析機能の実装や、機体側でAIによる解析を行うことで、GPSなどの測位衛星の信号が届かない環境でも完全自動飛行ができるドローンの実現(Visual SLAM技術)や、5G(第5世代移動通信システム)やIoTセンサーの実装、360°映像を実現するVR(仮想現実)への拡張など、さまざまな高付加価値の創造を視野に入れて研究開発を進める方針だ。

  • ソフトバンク ドローンコンセプト