世界規模の半導体製造装置および材料の業界団体である国際半導体製造装置材料協会(SEMI)の米国本部は8月24日(現地時間)、米国商務省が8月17日に発表したHuaweiへの半導体および関連会社への輸出輸管理規則の変更について、批判的な声明を発表した。
発表文は英文だが、日本語に訳すと、以下のようなものとなる。
SEMIは、米国が国家安全保障に対する脅威に対処するために行う輸出管理措置の役割をきちんと認識している。しかし、米国商務省が2020年8月17日に発表した新たな輸出管理規制は、米国の半導体産業に害を及ぼし、半導体サプライチェーンに大きな不確実性と混乱をもたらすことにより、最終的に米国の安全保障上の利益を損なうことを非常に懸念している。7月14日、SEMIは5月15日の規制に関するパブリックコメント(米国商務省に提出した意見書)で、これらの比較的狭い範囲のアクションが米国製の半導体製造装置と設計ソフトウェアを購入することを阻害し、Huaweiと関係のない企業への米国製品目の売上高がすでに1700万ドル失われてしまったことを警告した。
これらの一方的な制限をさらに大幅に拡大するという今回の米国商務省の決定は、売り上げの損失をさらに招き、米国原産品の顧客基盤を侵食する可能性がある。また、新しい規制は、米国の技術の供給は信頼できないとの認識を広め、米国以外の顧客が米国の技術に頼らない設計を行うことを助長することにつながるなど、対象者が米国の技術に取って代わる技術を探す努力を奨励することになる。
SEMIは、商務省に対し、8月17日より前に生産された製品の保留条項を120日間に延長することを要請する。そしてすべての製品に対する出荷許可をタイムリーに与え、とりわけ5G技術には関係ない製品にはすぐにでも出荷許可を出すように要請する。
また、意図しない結果をもたらすような政策や米国の技術指導力へ損害を与えるような政策を実施せぬように行政当局に要請する。グローバルなセールス活動からの売り上げは、これらのテクノロジーにおける米国の研究開発(R&D)資金の主要な源泉である。グローバルな売り上げの損失は、研究開発の減少につながり、米国の半導体イノベーションを損ない、国家安全保障を損なうことになるとSEMIはとらえている。
米国半導体工業会(SIA)は、8月17日の段階で商務省の決定に強い懸念を表明していたが、SEMIもそれに続く形で、同様の声明を出したことになる。
またSEMIは、今回の声明発表と同時に、いくつかの事柄を商務省に対して要請したという。
例えば、8月17日の商務省の通達は即日実行されたが、それによりHuaweiに販売しようとして製造ラインに仕掛っていた半導体デバイス(標準品)がHuaweiに売れなくなってしまった。そこで、5月15日のHuaweiからの特注半導体製品と同様に仕掛ウェハが投入されてから完成されるまで120日間分、通達の執行を延期し、Huaweiグループへ販売できるようにしてほしいと要請しているほか、5Gに関係のない半導体チップに関してもHuaweiグループへの出荷許可を出してほしいとも要請している。
商務省の通達は、ストレートな「輸出禁止」ではなく、建前上は「輸出に際して商務省のライセンスを取得する」ことを企業に要求している。現実には、ライセンスが発行される見込みはなく、事実上の禁輸措置となっているが、SEMIは、建前通りライセンスを発行するように要請している。
Qualcommはじめ米国の主要半導体メーカーにとっても中国は巨大市場であり、首都ワシントンD.C.でSIA、SEMIはじめ多数の業界団体とともに輸出規制を撤廃するように議会ロビー活動を展開してきた経緯がある。しかし、商務省は国家安全保障を口実にこれらの声を一切無視して、米国製品だけではなく他国製品にまで輸出規制を強化してきた。今後も米国では大統領選を控えてさらなる規制強化が実施される可能性もある。モノ言う米国の業界団体や半導体企業と米国政府の溝は深まるばかりである。