再開したリアル展示会と会議にバーチャル参観

SEMICON China/FPD China 2020の展示会と併設会議が6月27日から29日の3日間、中国・上海の新国際博覧中心(SNEC)で開催された。

本来は3月の開催が予定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大により3ヶ月間の延期となり、再開が正式に発表されたのは中国の労働節明けの5月8日であった。

世界中の電子産業に関わる大規模イベントは、年初のLas VegasのCESが開催されて以降、新型コロナウイルスの感染拡大により次々と延期または中止になり、オンライン会議やバーチャル展示会にシフトしつつある。その中で、今回のSEMICON China/FPD China 2020は、2020年に入って上海新国際博覧中心(SNEC)会場で開催された初めてのリアルイベントとなった。

FPD Chinaの併設会議では、有機EL(OLED)とマイクロLED(Micro LED)にフォーカスしたリアル会議も開催され、多くの聴衆が参加した。筆者もSEMICON China/FPD China展示会ならびにFPD Chinaのリアル会議にバーチャル参観する形で現地の状況を取材した。

現在は日本からの渡航は難しく、もし現地にいたとしてもイベント会場に入る為には身分証明書や健康確認などの何重もの厳重なチェックを受けなければならない状況ではあるが、現地スタッフの協力を得ながらのバーチャル参観では楽に多くの生の情報を得る事ができた。

展示会場は、出展のキャンセルなどもあり、当初計画されていた出展数の約3割減(主催社公表数値)であり、準備期間や物流の制限から出展していた企業もパネル展示が中心の所が多く、会場スペース、ブース内スペースは普段の展示会と比較してかなり余裕がある状態であった。日系を始め海外企業の出展もあったが、説明員はほぼ全員現地の中国人スタッフであり、海外からの参観者も見当たらず、普段の活気ある商談風景は見られなかった(図1)。

そのような中で、活用され始めたのがバーチャル商談である。ネットとビデオ映像を介して会場の出展企業担当者などとの商談を日本にいながらに実施できるということで、筆者も試して見たが、慣れてくると結構スムースにでき、現地に出張すること無く情報を効率的にやりとりできる。筆者もサポートしている今後の中国のイベントでも有効な活用方法として期待している。例えば、7月21日から4日間の会期で上海虹橋の国家会展中心(NECC)会場でリアル開催を予定している「Display Innovation Convention & Expo」での第2回『日中電子産業BIZ Forum』での活用である。テーマである「リアルとバーチャルの融合」は、今後の展示会のニューノーマル(新常態)として期待されている1つの方向である。

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    図1 SEMICON China/FPD China 2020 会場風景。出展していた日系企業を中心に筆者が撮影。中国半導体メーカーの出展はほとんど無かった

量産に入るOLEDと開発が加速するMicro LEDのホットな議論

リアルな展示会に併設された会議もリアル開催となった。ここ4ヶ月間は中国内の会議はすべてオンライン開催で行われていたが、ここでようやくリアルでの開催となったわけである。

オンラインとはいってもさまざまなテーマで多くの会議が開催され最新の技術情報や産業動向などを効果的に共有することができることが示されてきたが、今回は久しぶりにリアル会議が復活し、会場では多くの聴講者と生の講演で臨場感を感じることが出来た。

参考:アフターコロナで大規模なリアルイベントを再開する中国

今回のFPD China併設の会議では、「OLED or Micro LED」と題して、現在中国で立ち上がりつつあるOLEDと今後の新技術として期待され多くの企業が参入しつつあるMicro LEDの双方の立場に立った講演が集められた。

海外講師も含め14名の講師が登壇したが、海外勢はビデオ講演であった。会議は、席の配置に若干の余裕を持たせた感じではあったが、Micro LEDの人気もあって立ち見が出る盛況であった。会場は、普段に比べて心持ち席の間隔を開けた感じではあるが、立ち見も出ており感染防止よりも熱気の方が上回った(図2)。

Micro LEDに関する会議は、ここ4ヶ月ほどの自粛期間中でもオンラインでいくつもの開催されており、さまざまな講師が講演しているが、今回のFPD China会議でも新しい内容の講演を聴くことができ、この分野の技術開発が急速に進んでいることを実感させられる。

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    図2 FPD China初日のリアル会議「OLED or Micro LED」のプログラムと会場風景

著者プロフィール

北原洋明(きたはら・ひろあき)
テック・アンド・ビズ代表取締役

日本アイ・ビー・エムにて18年間ディスプレー関連業務に携わった後、2006年12月よりテック・アンド・ビズを立ち上げ、製造拠点および巨大な市場であるアジア各地の現地での生情報を重視し、電子デバイス関連の情報サービス活動、セミナー・展示会などのイベント開催、日系企業の海外ビジネス展開をサポートしている。
直近の活動として、「日中電子産業 BIZ Forum、第1回 アフターコロナのディスプレー産業」をオンラインで開催し、日本および中国の講師によるディスプレー産業の現状とコロナ後の方向を示した。