英Armは現地時間の6月18日、同社のMali GPU向けの新しい仮想化ドライバに向けたDriver Development Kit(DDK)を提供開始することを発表した。このドライバはデジタルコクピットの実現のためのものとされる。
元々の話は、2019年1月に、SamsungがAudiと車内Infortaiment Systemに関する提携を結んだところから始まっている。
この提携では、Audiが2021年中に発表する2022年モデル向けに、SamsungがExynos Auto V9を提供するという事になっている。このExynos Auto V9はCortex-A76×8に加えて3つの独立したMali G76 GPUが搭載され、それぞれ別々の表示を可能にするというものであった。またExynos Auto V9はISO26262 ASIL-Bに対応するとされている。
さて、これを実現するためには機能安全が必要とされる部分は、当然OSの側もそれに対応する必要がある。Audiは車内のInfortaimentをAndroidベース(Android Auto)に移行することを数年前から計画しており、Open Automotive Allianceにも加盟しているが、これはあくまでも機能安全が必要とされない純粋にInfortaimentの用途にしか利用できない。そのため、機能安全が必要とされる部分(例えばメータなどの計器表示)に関しては別の機能安全に対応したOS上で動かす必要がある。こうなると、1つのSoCの上で複数のOSを同時に動かし、それぞれが役割分担をするといった形になる訳だが、ここで問題になるのが表示機能(ここで言えばGPU)をどうシェアするかということになる。
これに関しては色々方法があるが、今回Armが提供したDDKでは、GPUそのものを管理する特権Virtual Machine(or特権Hypervisor)を構築し、アプリケーションはここで排他制御を行う形でGPUハードウェアをアクセスするという実装が可能になった(Photo01)というのが今回の発表である。
Mali GPU向けのDDKは従来からVirtualizationには対応しているが、こうしたArbiterの機能は搭載されていなかった。今回のDDKを利用することで、例えば計器クラスタとIVI、ナビゲーションを1つのSoCでまとめて処理することも可能とArmは説明している。
ちなみにDDKそのものはLinuxおよびAndroidに対応、Virtual Machineは複数のOSとHypervisorに対応と説明されているが、Audiが機能安全を必要とするアプリケーション向けにどのようなOSを利用するかは言及されていない。