データセンター需要がNAND市場をけん引

半導体市場動向調査会社である台TrendForceは、2020年第1四半期のNANDフラッシュメモリ市場の動向分析の結果を発表した。

それによると、同四半期のNANDビット出荷数量は2019年第4四半期とほぼ同じレベルだったが、平均販売価格が全般的に上昇したため、市場規模は前四半期比8.3%増の136億ドルに達したという。

クラウドサービスプロバイダーによるデータセンターへのエンタープライズSSD調達が2019年第4四半期から徐々に増加しており、2020年第1四半期のエンタープライズSSDの需要は供給を上回る結果となった。また、NANDサプライヤの在庫もほぼ通常に戻った結果、主要なアプリケーション向けのほとんどのNAND製品は、契約価格が上昇したという。

また、2020年第2四半期は、リモートサービスやビデオストリーミングなどのアプリケーションは引き続きクラウドサービスのニーズを生み出すほか、WFH(Work from Home:在宅勤務)やリモート授業の増加による、大企業や政府を中心としたノートPC需要の増加が続いているため、NAND需要の大半がタブレット、ノートPC、およびエンタープライズSSDによってもたらされると見られるという。これらのアプリケーションの強い需要によってNANDは供給不足が生じており、契約価格の上昇につながっているという。TrendForceは、需要と価格の両方の継続的な上昇に伴い、NANDサプライヤの売上高が増加すると予想している。

  • TrendForce

    2020年第1四半期における自社ブランドNANDサプライヤ売上高ランキング (出所:TrendForce)

売上高は横ばいも市場シェアを落としたSamsung

新型コロナウイルスの感染問題が発覚直後、Samsung ElectronicsのクライアントSSDの出荷量は予測よりも少なくなった。これは、新型コロナウイルスの感染拡大により、旧正月休み明けの中国企業が業務を再開できなくなったことに起因するという。

また、第1四半期は通常、季節的な閑散期にもあたるため、モバイルメモリ、ストレージ向けの出荷も鈍化した。しかし、これらのマイナス要因はクラウドサービス関連のエンタープライズSSD需要の増加により相殺されたとのことで、同社の同四半期におけるビット出荷数量は前四半期比で約3%減となったものの、平均販売価格は約4%増となり、売上高も同1%増の45億100万ドルとなった。ただ、この伸び率は競合他社と比べると小さいため、市場のシェアは前四半期比で2ポイント減の33%となった。

同社は現在、92層3D NANDの比率を高めているほか、2020年中に128層プロセス技術をさまざまな製品に展開する予定としており、こうした先端プロセス技術を導入することで、コスト競争力を維持し、高密度製品に対する市場の需要に効果的に対応していく模様である。

エンタープライズ関連の伸びにより業績が改善したSK Hynix

モバイル関連がNANDの売り上げの多くを占めてきたSK Hynixだが、2020年第1四半期はクラウドサービス関連の需要の増加により、エンタープライズSSDの出荷が増加し、ビット出荷数量も同12%増となったほか、平均販売価格も同7%増となり、売上高も同19.8%増の14億4700万ドルとなった。この結果、かなりの利益が出たとのことで、過去数四半期にわたって出し続けてきた損失の緩和につながったという。

また同社は今年、プロセス技術の改善に集中しており、96層3D NAND製品の比率を増やすこととは別に、2020年第2四半期中にも128層品の量産を開始する予定だとしている。

96層3D NANDの生産注力で市場需要に応えるキオクシアとWestern Digital

キオクシアの2020年第1四半期のビット出荷数量は、クラウドサービスプロバイダやノートPCメーカーからのSSDへの強い需要により、前四半期比で約3%増となった。加えて、製品構成の調整などもあり、平均販売価格も約6%増となり、その結果、売上高も同9.7%増の25億6700万ドルとなった。

同社は今年、製品構成におけるSSDの割り当てを大幅に増やすと予想されている。背景にはサーバ、ノートPCのほか、年末にリリースされる次世代ゲームコンソールなどからの需要が見込まれるためで、そうしたSSD需要を満たすことを念頭に、96層プロセス品の生産に注力するものと予想される。

また、キオクシアのパートナーであるWestern Digitalも、クラウドサービスセクターで生じたエンタープライズSSD需要の恩恵を受けた結果、2020年第1四半期のビット出荷数量は前四半期比7%増、平均販売価格も約5%増となり、売上高も同12.1%増の20億6100万ドルとなった。

同社は目下、高い需要が続くとみられるクライアントおよびエンタープライズSSD向けに96層品の比率を増やすことにフォーカスしているようである。

新たなプロセス技術で128層品の製造を計画するMicoron

他のNANDサプライヤ同様、Micron Technologyもクラウドサービスセクターからの高い需要を受け、チャネル市場向けウェハの割り当て数を減らし、エンタープライズ向けに回したことで、ビット出荷数量は前四半期比でわずかに減少したものの、平均販売価格は約10%増となり、売上高も同6.5%の15億1400万ドルとなった。

同社は2019年下期よりSSDに注力しており、クライアントSSDをPCメーカーに積極的に宣伝している。また、プロセスの面で同社は今年、第4世代3D NAND技術として、従来のフローティングゲート方式から、チャージトラップ方式にReplacement Gate(RG)技術を組み合わせたものへと切り替えた128層製品を提供する予定だとしている。

年末までに144層品のサンプル出荷を目指すIntel

エンタープライズSSD市場での存在感が強いIntelは2020年第1四半期、クラウドサービスセクターからの注文が殺到。製品構成の変更と相まって、平均販売価格は同20%増を達成した。しかし、同社は生産能力の拡充を図っておらず、急激に増加した需要を満たすだけの在庫が不足し、ビット出荷数量は約10%減となったという。ただし、売上高については同9.9%増の13億3800万ドルと好調な結果を記録している。

同社の販売戦略の焦点はエンタープライズSSDにあり、2020年中の96層品への移行、ならびに年末までに144層品のサンプル出荷を目指すとしている。144層品については、2021年の本格量産が見込まれている。なお、同社のQLC製品は、第1四半期のビット出荷数量の5%以上に達し、2020年後半にはさらにこの比率が向上する見通しだという。