分子エレクトロニクスセンサチップのベンチャー企業である米Roswell Biotechnologiesと、半導体ナノテク研究機関であるベルギーimecは、分子エレクトロニクス・バイオセンサチップを共同で開発し、2021年の発売にめどを付けたと発表した。

同チップは、精密医療、分子診断、迅速な感染症の検査、およびDNAなどのデータの蓄積をサポートするためのRoswellの新しいDNAシーケンスプラットフォームの頭脳的な役割を果たすもので、すでに概念実証は完了しており、現在は最終的な量産プロセスの開発に注力しているという。

Roswellの最高科学責任者(CSO)のBarry Merriman氏によれば「分子エレクトロニクスを商業的に実現可能にするにはその技術を半導体チップに搭載する必要があった」とのことで、imecが、最先端の半導体製造技術に基づくCMOS ICとバイオセンサ技術の経験を組み合わせて高いパフォーマンスと低コストを両立されたチップの試作を実現したとしている。また、RoswellのCEOであるPaul Mola氏は「現在の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大において、次世代の迅速かつ低コストな検査・診断ツールの必要性が高まっている。今回の技術を活用することで、ポータブルまたはハンドヘルドデバイスを用いて、一度に多くの感染症やウイルスに対する迅速なスクリーニングが可能となり、感染症の検出方法を大きく変える可能性がでてくる」と今回の成果に対する期待を述べている。

また、imecのライフサイエンステクノロジーのプログラムディレクターであるSimone Severi博士は、「imecのCMOSならびにバイオセンサの技術が、ゲノムシーケンスや感染症のモニタリングなどの医学の重要な分野に貢献につながり、エクサバイトクラスのDNAストレージといった新たな分野の開拓につながることが期待できる」と語っている。

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    右がimecの本部管理棟(通称imecタワー)、左がもともと450mmウェハ棟として計画されていた300mmウェハのクリーンルーム棟