製造業の工場の稼働を条件付きで継続

Intelの新製品開発・製造拠点はじめ多数のハイテク産業が存在する米国オレゴン州は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する目的で州内全域にすでに非常事態宣言が出されており、同州に拠点を持つ企業は最大限、在宅勤務を実施しているが、どうしても在宅勤務ができない製造業や建設業の場合、他人との距離を6ft(約1.8m)以上保つことを条件に操業などが認められている。

ただ、同州の建設関連の労働者からは、雇用主が州のガイドラインを守ろうとはせず従業員に対する新型コロナウイルス感染防止の配慮がないとの苦情が州当局に多数寄せられていると現地メディアは伝えている。このため、現在は一般住宅の建設は禁止されているという。

米国のほかの州では、日常生活に必要最小限の業務を行う業種以外のすべての企業(半導体・ハイテク企業を含む)に操業停止命令が出ているが、多くのハイテク産業からの法人税収入に依存し経済優先のオレゴン州では、他州のような厳しい命令を出せないでいるようだ。

Intelのオレゴン工場の拡張工事作業員が感染

オレゴン州ワシントン郡には、Intelの最先端の研究開発拠点、最先端デバイスの試作工場、量産工場が4つのキャンパスに分散しており、2万名を超える従業員を抱えているが、研究開発者は実験装置がなければデバイスやプロセスの開発を行えず、試作工場の作業員は現場にいなければ作業が行えないため、Intel本社が社員に推奨しているような在宅勤務はなじみにくい。

また、オレゴン州ヒルズボロにある最先端デバイス試作ファブD1Xでは、次世代MPUの製造に備えておおがかりな拡張工事が行われており、約1000名の作業員が建設作業に従事しているという。そのような状態の中で、D1Xの拡張工事を請け負っていた建設会社の作業員1名に新型コロナウイルスの陽性反応が出たことをIntelが3月24日に明らかにしたと地元紙が伝えている。

建設作業現場は互いに離れて作業することは不可能な状況のため、感染の危険はあるものの密接して作業に当らざるを得ないという。

Intelは、MPU製造現場のクリーンルーム内で発生したわけではないため、クリーンルーム内の作業は平常通り行われているとしている。また、同社は、NANDの製造拠点である中国・大連工場での新型コロナウイルス感染防止の経験を全社でシェアして社員の健康を守るとしている。具体的には、作業員の体温を毎日計測して個人ごとの健康管理を行ったり、カフェテリアの座席数を減らしたり、会議出席人数を最小限に絞り込んだり、作業者間の距離を政府指示にしたがって離すなど、さまざまな対策を取っているという。Intelは、作業者から感染者を出さぬように最新の注意を払いながら、薄氷を踏む思いで、半導体生産に取り組んでいるようだ。

  • Intelオレゴン工場

    Intel オレゴン事業所の外観(出所:Intel News Room)

Lamのオレゴン工場は一時操業停止に

シリコンバレーに本拠を置く半導体製造装置メーカーであるLam Researchのオレゴン州テュアラティンにある製造現場では約2000名の従業員のうち1600名が在宅勤務となっているが、現場で製造作業を行っていた2名の社員に新型コロナウイルスとみられる症状が見られたため、3月27日時点では工場の操業を一時停止して消毒作業を行っているとオレゴン州の有力紙The Oregonianが伝えている。

同紙によると、同工場の監督者が従業員にメールを送り「クリーンルームにはあまりにも人が多く、労働者間の間隔を離して作業させることが困難であった」ことを認め、改善に着手しているという。Lam Researchは、カリフォルニア州シリコンバレー周辺にある2つの工場(フリーモントおよびリバモア)で州の命令にしたがい操業を中止しており、これにより業績が悪化することはさけられないため、すでに株主らに発表していた2020年第1四半期の業績予測を撤回している。

なお、オレゴン州衛生当局は、苦情相談窓口を設けて、州内労働者の作業環境把握に努めており、陽性者の増加状況によっては、企業操業ガイドラインをさらに厳格化したり、州内の企業を他州並みの操業休止にする可能性もありそうである。