東芝メモリは8月30日、台湾LITE-ON TechnologyのSSD事業を1億6500万ドル(約173億円)で買収する契約を結んだことを明らかにしたが、LITE-ONの地元である台湾の半導体市場調査会社TrendForceは、この買収について、東芝メモリに恩恵をもたらす可能性が高いとの分析結果を発表した。

TrendForceで調査ディレクタを務めるAlan Chen氏は、「LITE-ONのSSD事業は、製品群と市場ポジショニングの観点から、東芝メモリのビジネスを補完するものである。現在、東芝メモリのエンタープライズSSD市場での売り上げは、主にSASならびにSATA製品によるところが大きく、PCIe対応のエンタープライズSSDについては、依然として主要メーカーとは差がつけられている状況である。一方のLITE-ONは、エンタープライズSSDとしてPCIe製品を提供しているほか、サーバ/データセンター市場の主要クライアント向けSSDの大量生産という点でかなりの経験を蓄積している」と述べており、東芝メモリへのプラス要因となるとの見方を示す。

また、東芝メモリは、クライアントOEMおよびクライアントリテール(チャネル)市場での存在感を強化するため、2014年に米OCZ TechnologyのSSD事業を買収し、グループ会社として新会社「OCZ Storage Solutions」を設立したにも関わらず、当該市場でのシェアを顕著に高めることができていない。一方のLITE-ONは、東芝メモリが自社でNANDまで製造しているという製造コスト上のメリットはないものの、ソフトウェア分野での研究開発能力と生産計画の柔軟性を生かすことで、クライアントOEMおよびクライアントリテール市場で相応の評判を得てきた。

こうした背景から、同氏は「東芝メモリが適切なマーケティング戦略を策定し、かつ明確な分業体制を敷き、両社のR&D機能を効果的に統合できれば、大きな利益を得ることができる」とするほか、「東芝メモリが有するNANDに関する資産や製品テストに関連する専門知識に、LITE-ONのソフトに関するノウハウ、効率、柔軟性が加わることでビジネスの発展につながることが期待できる。これは、単に2つの組織の足し算というよりもはるかに大きなシナジー効果が発揮できることにつながる」と指摘している。

なお、LITE-ONは同事業を売却した後は、LEDライティング、車載電子機器、工業自動化製品、Wi-Fi、LPWAなどのIoT関連ビジネスに注力するとしている。