半導体市場動向調査会社である台TrendForceは、予期せぬ停電の影響によりNANDフラッシュメモリを生産している東芝メモリの四日市工場の一部の生産設備が停止している件が、メモリ市場にどのような影響をもたらすのかについて分析した結果を発表した。

TrendForceは、日市工場のすべての製造棟(第2、第3、第4、第5、および第6製造棟)が停電の影響を受け、6月28日の時点では、まだすべての製造棟が正常な状態には戻ってはいないようであると現状分析をしたうえで、この予期せぬ操業停止により、2019年第3四半期は、NANDのウェハ見積もり価格に短期的な上昇圧力がかかるとの見方を示す。特に、特殊なストレージアプリ向けに2D NANDが提供されているが、同工場はその主要な生産拠点であり、NANDフラッシュサプライヤ各社の2D NANDの在庫が現時点で以前よりも少なくなっていることを踏まえると、第3四半期の見積もり価格が引き上げられる可能性が高いとする。

また、主流の3D NANDについては、eMMC/UFSやSSDなど向けの契約価格の下落を止めたり、上昇に転じるようなことは、現時点での在庫レベルが需要側も供給側も高いままであり、期待できず、停電による供給ストップによって、下落速度が若干ゆるくなる程度との見方を示している。

ただし、東芝メモリの生産パートナーであるウエスタンデジタル(WD)は、小売市場において強いブランドを持つことから、同社の生産量が減少することで、小売価格が上昇する可能性はあるともしている。

なお。東芝メモリとWDは6月28日になって、今回の停電についての情報を公開した。WDの発表によれば、6月28日時点で約6EB相当のフラッシュウェハの供給が滞ると予測している一方で、東芝メモリは順次、復旧作業を進めており、7月中旬までには、ほぼすべての装置が稼働できる見通しとしている。仮に7月中旬に再稼動したとすると、WDの語る6EBは、四日市工場の生産能力におけるWDの取り分を踏まえると妥当な容量と言えるだろう。ただ、このおよそ1ヶ月近くにわたって影響が続くことを踏まえ、「早期に復旧することが望ましいが、下手に時間がかかると、東芝メモリとWDにとっては、フラッシュメモリを購入する顧客からの信頼を失う危険性がでてくる」とTrendForceでは指摘しており、いつ通常の状態にまで戻れるかどうかに関して、注意深く見守っていく必要があるとしている。