東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2019年7月のIT・ソフトウェア業界のM&Aは、前年同月と比べて8件多い18件となり、7月としては08年以降の12年間で最も多かった。これまでトップだった09年7月の12件を大きく上回った。2018年1月以降の月別でも2018年9月の21件に次ぎ2番目に多かったという。

  • IT・ソフトウェア業界のM&A件数の推移

取引金額は約109億円で、同期間では2010年(約2,860億円)、2009年(約269億円)に次ぎ3番目に多く、金額を公表した案件が5件と少なかったものの、100億円を超える案件があったため金額が膨らんだ。

金額トップはネクソンの104億円

7月のM&Aで取引金額が最も多かったのは、ネクソンが持分法適用関連会社でゲーム開発を手がけるスウェーデンのEmbark Studios ABの株式32.8%を追加取得し、子会社化(保有割合66.1%)する案件。金額は約104億円に達した。

ネクソンは欧米のオンライン市場でゲームラインアップを強化するために、2018年11月に設立間もないスタートアップ企業のEmbark Studiosに出資した。事業面でのシナジー(相乗効果)を最大化するとともに、ノウハウ共有などを加速するため、傘下に取り込むことにした。取得日は2019年7月1日。

2番目はJストリームが医薬系のインターネット関連事業を手がけるビッグエムズワイ(東京都文京区)の株式61%を追加取得し、完全子会社化する案件で、金額は約3億円だった。

ビッグエムズワイはMR(医薬情報担当者)向けのCLM(クローズド・ループ・マーケティング)のコンテンツ制作に力を入れていた。

Jストリームは2018年7月に同社に出資。自社の主力事業である医薬業界向けライブ映像配信事業とビッグエムズワイが提供するCLМコンテンツ制作などの事業との協業体制を築いてきた。今回の子会社化で事業の深化と業容拡大を推し進める。取得予定日は2019年8月30日。

3番目はGunosyがブロックチェーン(分散型台帳)に関するコンサルティングやシステム開発を手がける子会社のLayerX(東京都港区)の株式45%を、LayerX社長の福島良典氏に譲渡する案件で、金額は約1億円だった。

Gunosyの取締役ファウンダー(創立者)である福島氏から申し出のあったMBO(経営陣による買収)の一環。

LayerXは2018年8月にGunosyとAnyPay(東京都港区)が出資して設立した。この1年間でブロックチェーンをめぐる市場環境が急激に変化したのに伴い、経営の先行きに不透明感が増している。こうした中、同社社長の福島氏からMBOの申し出があったという。譲渡予定日は2019年8月23日。

企業のwebマーケティング支援事業を手がけるショーケースはスマホWebアプリ「Go!Store」事業を、インターネットサービス事業会社のコンコース(東京都渋谷区)に約1,800万円で譲渡する。このほか、人材育成事業を手がけるアルーがデジタルマーケティング事業会社のD2C(東京都中央区)からクラウド型eラーニングシステム「etudes」事業を1円で取得する案件もあった。