台TrendForceのメモリ市場調査部門であるDRAMeXchangeは、2019年第1四半期(1~3月期)のDRAM在庫水準が依然として過剰気味にあるため、DRAM契約価格は下落が続き、すべての種類のDRAMの平均販売価格は前四半期比20%超の下落となる見通しながら、それでも在庫が一掃されないため、第2四半期、そして下半期も継続して下落が続いていくとの見通しを明らかにした。

DRAM価格は下半期まで下落が続く見込み

第2四半期に入ると、1Ynmプロセスへの移行よる収率向上の結果、投入ウェハ数を増やさなくても供給ビット数量自体は増加し続ける見込みである。このため、DRAMサプライヤは、在庫レベルを削減する目的で、大幅な値下げを行って販売を促進しようとする可能性が高いという。その影響から同四半期は、前四半期と同様、PCおよびサーバ向けDRAM価格の下落率が大きくなる見通しで、がDRAMeXchangeでは、いずれの平均価格も前四半期比で20%の下落率となるとの予測を立てている。また、モバイルDRAMについては、新たなスマートフォンの購入者が一定数いるおかげで、10~15%ほどの下落率に留まる見込みだが、全体を通してみると、下落率は同20%減といったところになる模様だ。

  • DRAM価格の下落率

    用途別DRAMの2019年第2四半期および第3四半期の前四半期比の価格下落率の予測 (出所:TrendForce/DRAMeXchange)

第3四半期以降、DRAM価格の下落が収まるかどうかは、需要がどの程度回復するか、そして第2四半期に在庫がどの程度捌けるかにかかっている。DRAMeXchangeの分析によると、PC、サーバ、モバイル、コンシューマ製品などの最終製品の需要回復が、DRAMの価格を決定する重要な要因になるとしている。そのため、下期のDRAM供給状況は、上期ほど深刻ではないと思われ、DRAM価格の下落幅も第3四半期さらには第4四半期になるにつれて緩やかに縮小していくとみているが、年間を通して下落していく可能性が高いともしている。

2019年のDRAMの価格動向を見ると、コモディティDRAMおよびサーバ向けDRAMは、在庫レベルの上昇により、2018年第4四半期以降、顕著な価格下落を示しているわけだが、その背景にはIntelの内部事情によるMPU出荷不足に伴うミドルレンジおよびローエンドPCが計画通りに出荷できないという状況がある。その結果、DRAMが捌ききれずに、主流の8GBコモディティDRAMモジュールの価格は、第1四半期に前四半期比30%の下落となり、40ドル前後にまで下げているが、第2四半期も35ドルに向けて下落を続けており、年末までに30ドルを切るかもしれない可能性がでてきている。

一方のサーバ向けDRAMも、2年にわたる需要の高まりを経て、第1四半期の在庫レベルがかなり高い水準に達している。一部の北米のデータセンターが3月から発注を再開したが、全体的な購入数量は、まだ明確に復活を遂げる、というほどのものではない。さらに、現在の在庫レベルは需要側と供給側の双方で高いままとなっているため、DRAMeXchangeでは、在庫が一掃されて需要が回復するまでサーバDRAMの価格は下落を続けると予測しており、第2四半期には前四半期比で約20%の下落となり、第3四半期ならびに第4四半期も前四半期比でそれぞれ約10%ずつ下落すると予測している。

また、モバイルDRAMについてだが、スマートフォンの総生産量が前年比10%以上の減少となっている結果、モバイルDRAMのサプライヤは在庫を効果的に減らすことができず、価格を下落させる状態に陥っている。第1四半期におけるディスクリート製品とeMCP製品価格は平均で約20%下落となっているが、第2四半期の契約価格の下落率もディスクリートで同5~15%減、eMCPで同10~20%減となり、第3四半期も同程度の下落率となるものと予測されている。

2019年のスマートフォンの総生産量は前年より減少する見込みなうえに、ミッドレンジおよびローエンドのスマートフォン一台当たりのメモリ容量はほとんど増加しなそうなため、メモリ価格が第2および第3四半期を通して下落し続けるのは避けられそうにない。

NANDも継続して下落の見通し

価格下落が続いているのはDRAMだけではない。TrendForceはNANDの価格動向について、2019年第1四半期の契約価格は前四半期比で20%ほど下落する見込みで、NANDの供給が2018年初頭に需要を上回って以来のもっとも大きな落ち込みとなっていると指摘しているほか、第2四半期も、同10~15%の下落率との見通しを示している。

NANDの契約価格は2018年の年初以降(スポット価格は2017年の秋以降)下落が続いており、2018年第4四半期には前四半期比16.8%減を記録している。こうしたNAND価格の下落は、サーバ需要の低迷、スマートフォンの交換サイクルの長期化、Appleの新しいiPhoneの売り上げが予想を下回った結果、ならびにその他の製品の期待外れの売れ行きなどの影響を受けたとTrendFiorceは指摘している。

こうした状況を踏まえ、NANDサプライヤ各社は、設備投資を抑制したり、新しい生産プロセスの生産比率を減らしたり、さらには生産量自体を削減している。Micron Technologyは、メモリの需要低迷に対処するため、DRAMとNANDのいずれも5%程度の減産(投入ウェハ数量削減)を行うことを示したほか、設備投資も5億ドル削減するという。NANDの減産についての公式でのコメントは、東芝メモリと四日市工場で協業するWestern Digitalに次いで2社目である。減産により供給過多の状況をただちに解消することはできないにせよ、市場環境にプラスの影響を与えることが期待される。なお、TrendForceは、第3四半期以降のNANDの価格動向についての見通しについては現時点では明らかにしていない。