半導体産業調査市場企業である米VLSI Researchが発表した2018年の半導体製造メーカーランキングによると、トップ15社中、日本メーカーは3位に東京エレクトロン(TEL)、6位にアドバンテスト、7位にSCREEN、9位にKOKUSAI ELECTRIC、10位に日立ハイテクノロジーズ、14位にダイフク、そして15位にキヤノンが入り、世界地域別に見た企業数としては7社でトップとなった。地域別では、米国メーカーが4社、欧州メーカーが2社、韓国、中国が各1社ずつという構成になっていることから、半導体製造装置業界における日本企業の健闘が目立つ結果となったといえる。

トップは例年通りともいえるApplied Materials(AMAT)で、2018年の売上高は前年比6.5%増の140億ドルとなった。ただし、同社の成長率は、製造装置業界全体の成長率である同15.5%よりも低い結果となっている。

一方、2位のリソグラフィ専業のASMLは、同31%増と大きく業績を伸ばし、120億ドルを突破。トップAMATの尻尾が見えてきた。非常に高価なEUVリソグラフィも量産導入を控えていることから、今後、さらに業績を伸ばすことが予想され、AMATからトップの座を奪う可能性も出てきた。

前年4位であったTELは業績を同25.8%増と大きく伸ばすことに成功。その結果、前年3位のLam Researchを僅差で抜いて3位に浮上することに成功した。この4位のLamまでが、5位のKLA以下を売上高で2倍以上の差をつける形で、半導体製造装置業界のトップグループを形成している。

米国のトランプ政権は2018年、中国の福建省晋華集成電路(JHICC)に対して米国企業からの半導体製造装置および部品輸出を禁止したため、AMAT、Lam、KLAの3社の装置立ち上げのために中国に滞在していた技術者が帰国。その結果、JHICCのファブは操業停止状態にある。米国政府が中国に対して制裁を行えば、中国が苦境に陥ると同時に、結局は米国企業の売上高も下がる結果となる。半導体装置メーカートップ15社の中で、日本企業7社すべてが業界全体の成長率(15.5%)よりも高い成長率を上げたのに対して、米国企業4社すべてはそれ以下の成長率に留まるというきわめて対照的な結果となった。

6位のアドバンテストは、メモリバブルの恩恵で売上高を同54%増とし、2017年に6位だったSCREENを上回ることに成功。9位のKOKUSAI ELECTRICも2017年9位であった日立ハイテクを上回る成長率を達成し追い抜くことに成功した。KOKUSAI ELECTRICは、もともと日立国際電気として日立ハイテクとともに日立グループの半導体製造装置メーカーとしてグループ内で競っていた。しかし、日立製作所が集中と選択を進める中、非中核事業として2017年末に米プライベートエクイティファンドのKohlberg Kravis Roberts(KKR)に売却され日立グループを離れることとなった。さらに、KKRは日立国際電気の中で半導体製造装置や成膜プロセス技術を担っていた旧国際電気の資産をまとめて別組織(KOKUSAI ELECTRIC)として2018年6月に再編していた。そんなKOKUSAI ELECTRICについてKKRは、半導体装置事業の一部あるいはすべての事業を中国大手企業と中国政府系ファンドへ売却し利益を得ようとしているとの検討を進めていることが2019年2月3日付けの英Financial Timesが報じている。ただし、米国および日本政府の反対で、このような中国勢への売却は実現しそうにないと業界関係者は見ている。

ランキングトップ15に唯一韓国から入っているSEMES(Samsung Electronicsの子会社で、韓国最大の半導体装置メーカー。主要製品は洗浄装置、コーターデベロッパー、エッチング装置など)の売上高は前年比13.2%減となり、順位を2017年の9位から12位へと後退させたが、背景にはSamsungのメモリへの度重なる設備投資延期の影響があると思われる。

なお、トップ15社の2018年における売上高総額は、前年比17.8%増の670.7億ドル、半導体製造装置業界全体の売上高(暫定値)は、前年比15.5%増の811.4億ドルであった。

VLSI Researchのこの数字は、ウェハ処理工程(前工程)および組み立て実装・最終検査工程(後工程)すべての製造・検査装置を含んでいるが、製造装置・材料の国際的業界団体である国際半導体製造装置材料協会(SEMI)によると、2019年の半導体メーカーによる半導体製造装置(ウェハ工程=前工程向け装置)投資額は、メモリバブルの崩壊により、前年比14%減の530億ドルに留まるとの予測となっており、半導体製造装置メーカー各社は、前工程関連の企業を中心に業績の下降修正を相次いで行っている。

  • 2018年の世界半導体製造装置メーカー売上高ランキングトップ15

    2018年の世界半導体製造装置メーカー売上高ランキングトップ15。売上高の単位は百万ドル (出所:VLS IResearch)