10月1日よりサンノゼのFairmont HotelでXDF(Xilinx Developer Forum) 2018が開催されているが、このXDFの初日、Armが新しく「DesignStartプログラム」をXilinxのFPGAを対象にスタートすることが発表された(Photo01)。
ArmのDesignStartは2010年にスタートした。当初は非営利あるいは教育機関向けにCortex-M0を無償で利用できるというものだったが、その後プログラムの内容はどんどん強化され、昨年にはCortex-M3コアの利用も可能になっており、小規模の開発に際しては初期ライセンス費用が免除されることで、Cortex-M0/M3を導入しやすくするというものとなった(Photo02)。
今回発表のDesignStartプログラムの強化はこの延長にあるもので、XilinxからCortex-M1およびCortex-M3のSoft IPが提供され、これを利用してFPGAベースでシステムを構築する場合、Armへのライセンスおよびロイヤリティの支払いが不要、というものである(Photo03)。
これを利用して、迅速にFPGAベースでアプリケーションを開発できるとしている(Photo04)。
なぜ、こうした取り組みに踏み切ったのか? という背景がPhoto05だ。
日本などでもそうだが、最近はASICやASSPを利用する代わりにFPGAで、という動きが高まっており、これは別にアプリケーションプロセッサだけではなくMCUを利用するようなケースでも同じである(Photo06)。
このトレンドをキャッチアップするためにDesignStartプログラムを強化した、というのがArmからの表向きの説明である。では、裏向きは? というと、おそらくはRISC-Vへの対抗ということが挙げられる。Microsemiなどは積極的にRISC-Vを同社のFPGA向けに用意しており、こちらも無償で利用ができる。ArmとしてはFPGA向けのIPを有償提供することで、RISC-Vにマーケットシェアを奪われるよりは、無償でIPを提供することで、ソフトウェアの一貫性をアピールする(Photo06)と共に、膨大なすでに利用されている実績を強くアピールする(Photo07)ことで自社のエコシステムを維持していく考えと思われる。
すでにCortex-M1のダウンロードは開始しており、開発環境に加えてすぐ利用できるハードウェアも用意されている(Photo08)。
またこのDesignStartの対象製品は(Vivadoがサポートする)FPGAすべてとのころで、それこそSpartan 6やVirtex-6とかでも利用できる(ただし冒頭に書いたとおりISEは未サポート)とのことだ。また実装する個数にも制限は無い(ただしシステムとのインターコネクトに限界がある)そうで、なので複数のCortex-M1/M3プロセッサを1つのFPGA上で動かすことも可能という話であった(Photo09)。
ちなみにこのDesignStartプログラム、今のところXilinxのみをサポートするそうで、他のFPGAベンダに関しては「今のところ予定は無い」との事。またCortex-M3はともかくCortex-M1に関しては、当初発表時にXilinx、Altera(現Intel)、Actel(現Microchip。2018年にActelを買収したMicrosemiを買収)の3社のFPGAでそのまま無償で利用できるという話であったため、これに基づくCortex-M1のコアは現在も有効だと思うとArmではしつつ、この時のCortex-M1 IPと今回のDesignStartプログラム強化に基づくIPはまったくビジネスモデルが異なるので、同列に考えてはいけないという説明であった。
このDesignStart FPGA、すでに専用WebサイトにてCortex-M1 IPの提供が開始されており、Cortex-M3コアも2018年11月から提供が開始される予定である。