TANAKAホールディングスは8月31日、田中貴金属グループの田中貴金属工業が低温焼結銀ナノインクを使用した70℃の低温で焼結できる配線形成技術(低温焼結-ナノ銀印刷方法)ならびに従来のエッチングプロセスに対応した銀メタル全面フィルム形成技術(銀メタル全面フィルム形成方法)を開発したと発表した。

  • 低温焼結銀ナノインク

    低温焼結銀ナノインク

  • 銀メタル全面フィルム

    銀メタル全面フィルム

従来の銀ナノインク焼結は150℃以上の高温でしか焼結できず、比較的熱に弱いPETフィルムや他のエンジニアリングプラスチックフィルムなど有機材料への印刷が困難だった。今回開発された「低温焼結-ナノ銀印刷方法」では70℃の低温焼結においても高温焼結と同等の50μΩcm以下の抵抗値が得られ、印刷先の有機材料選択の自由度が拡大する。

また70℃の低温で銀ナノ配線回路を焼結形成できるため、有機発光素子などを傷めることがなく、高画質ディスプレイの安定生産にも寄与。低温焼結により形成されるパターンは銀ナノ粒子を数~数十層積み重ねた薄膜構造のため、折り曲げ特性(フレキシブル性)の改善が期待できる。さらに低温焼結ナノ銀インクとSuPR-NAP法を採用した田中貴金属のメタルメッシュ配線技術を組み合わせることで、4μm以下の微細配線の形成がフィルム上に可能となる。

また、低温焼結銀ナノインクを用いることで、現在タッチパネルなどに採用されているITOと同等以上の光透過率や面抵抗値を実現したエッチング対応可能な銀メタルフィルムを形成できる。そのため、配線形成の際、既存のエッチングプロセスを活用でき、設備投資などのコストを抑制できる。さらに、同技術で形成された銀メタルメッシュはITOをエッチングした透明電極と同等の電気抵抗を持ちながら、フレキシブル性の向上や透明性向上による高画質化が期待できるという。

  • 5μmパターン

    フィトリソグラフィによる5μmパターン

なお、同社では、今回の開発技術について、フレキシブル化への移行が見込まれるハイエンドスマートフォンのタッチパネルなどの用途や、拡大が予想されるフレキシブル電子デバイス市場、有機ELディスプレイ市場への応用が期待されると説明している。