電通国際情報サービス(ISID)のオープンイノベーションラボ(イノラボ)は5月17日、有機農産物の生産から最終消費までサプライチェーン全体にわたるトレーサビリティをブロックチェーン技術で保証し、「エシカル(倫理的)消費」の真正性を担保・可視化する実証実験を5月19日より開始すると発表した。
エシカル消費とは、環境や人体への負荷、社会への貢献などを重視して生産された商品やサービスを選択的に消費する行動や理念を指す。
同実証実験は、イノラボが推進する研究プロジェクト「IoVB(Internet ofValue by Blockchain)」の一環として実施するもので、宮崎県綾町、シビラおよびパナソニックが参画するほか、東京・神保町のイタリアンレストラン「レアルタ」が実験用エシカルメニューの提供、UPRが輸送用IoTセンサーの提供で協力する。
検証内容は、「流通や最終消費まで含めた農産物のサプライチェーン全体にわたるトレーサビリティをブロックチェーンで保証する仕組みを構築しうるか」「ブロックチェーンに記録された情報を、どのようなユーザー体験(UX)を通じて消費者に届ければ、その注文行動に影響を及ぼしうるか」「農産物のトレーサビリティが前述2点の実証により担保・可視化されることで、当該サプライチェーンに関わる個々人や、その周囲(SNSでのつながりを含む)の人々のエシカルな行動が喚起・促進されるか」という3点。実施期間は2018年5月19日から5月末までを予定している。
実験の流れとして、まず、綾町では、生産者および管理者(役場の検査官)が、町独自で定める自然生態系の保護評価指標に基づいて、生産履歴や土壌品質検査の結果をブロックチェーンに記録する。次に段ボール1つずつに照度、加速度、温度を検知できるIoTセンサーを同梱して出荷。輸送中に箱が開閉されていないか、適切な温度・場所で保管されていたか、過度な衝撃が加わっていないかなどをモニタリングして、逐次ブロックチェーンに記録される。
レストランでは、綾町野菜を用いた実験用エシカルメニューを提供。来店客が店内でストレスなくエシカルメニューを認知・選択できるよう、専用UXデザインによるメニューを用意するほか、スマートフォンに差し込むだけで綾町野菜の動画を閲覧できる機器(バッテリーレス型イヤホンジャックドングル)を提供する予定だ。
そして、エシカルメニューの注文客だけに別途渡されるドングルをスマートフォンに差し込むことで、消費履歴がブロックチェーンに記録される。この記録はSNSアカウントと連携可能なため、注文客による能動的な情報拡散が行われたか、そこにどのような共感や評価が集まり、フォロワーの行動が誘発されたかという履歴がブロックチェーン上に蓄積され、生産者やレストランへフィードバックとして確認できるようになるという。