京セラは4月27日、東京にて2018年3月期決算説明会を実施した。ここ数年、好調が続く半導体産業における積極的に推し進める設備投資などが後押しとなり、2018年3月期の売上高は前年度比10.8% 増の約1兆5770億円となり、過去最高を更新した。また、営業利益は同6.1% 増の約956億円、同社株主に帰属する純利益は同5.2% 増の818億円となった。

  • 京セラ 2018年3月期 決算概要

    2018年3月期の京セラの決算概要。売上高は前年度比10.8% の増収を実現し、過去最高を更新した

部品事業が好調! 2期連続の最高売上更新にも期待

事業セグメント別の売上高を見ると、部品事業(産業・自動車用部品、半導体関連部品、電子デバイス)が同18.6% 増の約8500億円(売り上げ全体の53.9% ) 、機器・システム事業(コミュニケーション、ドキュメントソリューション、生活・環境)が同1.8% 増加の約7388億円(売り上げ全体の46.8% )となり、部品事業の成長度合いの高さが目立った(調整および消去として-1.9% が発生しており、これらを足し合わせると100% となる)。

  • 京セラ 2018年3月期 事業セグメント別売上高

    2018年3月期の京セラの事業セグメント別売上高。産業・自動車用部品、電子デバイス、ドキュメントソリューションが2桁成長を果たした

また事業セグメント別の利益については、部品事業全般ならびにドキュメントソリューションで2桁成長を達成したほか、利益率も部品事業全体で前年度から2.3ポイント増の13.2% と好調さを示す。

一方、機器・システム事業はドキュメントソリューションが前年度から2.4ポイント増の11.1% となったものの、生活・環境がソーラーエネルギー事業の減収、およびポリシリコン原材料に関する引き当て損失の発生などにより、550億円の損失を計上。結果として、同事業領域全体でも前年度の約380億円の利益から約88億円の損失へと赤字転落した。

  • 京セラ 2018年3月期 事業セグメント別利益

    2018年3月期の京セラの事業セグメント別利益。生活・環境セグメントが、ソーラーエネルギー事業の減収、およびポリシリコン原材料に関する引き当て損失の計上により赤字に転落した

京セラの谷本秀夫 代表取締役社長は、「今期(2019年3月期)も引き続き、情報通信、自動車関連、半導体市場が好調に推移するものと予想される。この市場では今後、高機能部品の需要の増加が見込まれるとともに、当社が積極的に進めている、生産能力の向上、およびM&Aの効果が売り上げに寄与することが期待される」と説明。さらなる事業の成長への期待を述べた。

  • 京セラ谷本秀夫 代表取締役社長

    京セラの谷本秀夫 代表取締役社長

なお、そうした状況を踏まえ、同社では2019年3月期における売上高は前年度比4.6% 増となる1兆6500億円を目指すとしており、達成できれば、2期連続で過去最高を更新することとなる。

成長が続く半導体産業を見据え、積極的な設備増設を実施

各事業セグメントにおける主な取り組みに関して谷本氏は、「昨今の情報通信機器の高機能化に伴い、ICの性能向上や、メモリ容量の拡大が進み、2017年の世界市場における半導体製造装置の出荷額は、過去最高となる6兆円を記録。今後も引き続き、市場のさらなる成長が期待できるものと予測されている」と語る。

また、高性能化が進む半導体製造装置では現在、エッチング装置やプロセス温度の高温化、プラズマの強化が図られ、露光装置の部品は、軽量化、高精度化が進んでいる。そうした状況を受け、京セラが強みを持つ「ファインセラミック部品」のニーズが高まっており、半導体市場の好調は、自社にとって強い追い風になることを強調した。

さらに谷本氏はこうした市場ニーズを踏まえ、「当社は、半導体製造装置向けセラミック部品において高いシェアを有しており、その需要の増加に応えるため、国内外において積極的な増産・増資を行っている。2018年10月には鹿児島国分工場において新棟の稼働を予定しているほか、滋賀や米国工場においても設備増設を計画している。これらの施策により、20% 以上の売り上げの成長を目指す」と続けた。

  • 京セラ 産業・自動車用部品セグメントの戦略

    京セラの産業・自動車用部品セグメントにおいては、過去最高の半導体製造装置需要に合わせ、積極的な増産投資を行い、売り上げの成長継続を図る

AI・IoT活用で工場の省人化と生産能力向上へ

また、好調のドキュメントソリューションセグメントにおいては、同社子会社である京セラドキュメントソリューションズの工場の生産能力の向上を一層進めていくことで、さらなる成長を促進していく考えだ。

そのため、2018年6月には、中国工場において、AI・IoTを積極的に導入し、工場の自動化を進め、省人化、かつ生産能力の拡充を目指す。具体的には、従業員数を200名から16名程度に省人化し、かつ生産能力を2.5倍にまで向上させる計画だ。

また、同社はすでに2017年より三重県玉城においてトナーコンテナ工場の自動化を実現していることから、これらの工場をモデルケースとしノウハウを共有することで、別工場においても一層の生産性の向上を実現していくとしている。

  • 京セラ ドキュメントソリューションセグメント 事業戦略

    ドキュメントソリューションセグメントでは、工場の自動化により、生産能力の工場、および省人化を図るとしている