4. 分散型および再生可能エネルギー
エネルギーをより効率的に生成、分配する方法に需要が集まっています。効率化にあたっての課題は、電力変換とさまざまなエネルギー源の処理を最大効率で実現することです。GaNとSiCは、高電圧で動作できるという固有の性質を高効率や小型のサイズと組み合わせることにより、この最大効率を実現できます。
これまでは限定的にしか導入されていなかったGaNとSiCですが、どちらも分散型および再生可能エネルギーへの対応に必要な電圧範囲で、以前は達成不可能だった効率と密度を達成できることが実証されています。
これらを興味深いプロトタイプとしてではなく、実用的なテクノロジーとして大規模に普及させるために、TIでは、パッケージにゲート・ドライバを組み込むことが効果的であると考えています。たとえば「LMG3410」では、ゲート・ドライバをデバイスの近くに配置することで、これらのテクノロジーの普及をさらに進めるために必要な性能と製造性が実現できることを実証しました。
5. 自動車の電子化
過去10年間で、自動車の機能が変化したのは明らかです。新世代の自動車が登場するたびに、搭載される電子機器の数は加速度的に増加しています。自動ブレーキ、車線逸脱センサ、自動ビーム制御ヘッドライトなどは、現在ではごく普通の機能であり、半導体と電力管理によって実現されています。これまでは走行距離、コスト、充電時間の問題から普及が限定的だった電気自動車でさえ、主に半導体ベースの電子機器の性能向上により、2040年までに200万台から2億8,000万台まで増加することが予想されています(5)。
車内では、電子機器が増えることによって利用者の運転環境は改善されますが、こうしたテクノロジーの向上には電磁妨害(EMI)という課題が伴います。放射EMIであれ伝導EMIであれ、EMIはミッションクリティカルなシステム内に妨害を発生させる可能性があり、それはユーザ・エクスペリエンスの低下だけでなく、悪ければ安全性の問題にもつながります。
そのため、EMIの低減は、重要な課題かつ技術革新の大きな機会となっています。スペクトラム拡散(例:「TPS55165)やアダプティブ型ゲート・ドライバ、アクティブ・ノイズ・キャンセルなどのさまざまな技術に投資することで、今後の自動車への電子機器やテクノロジーの導入をさらに加速させることができます。
6. 産業用オートメーション
産業用オートメーションを導入すれば、生産性や製造効率を向上させることができますが、一方でこのような機械には安全性の課題が伴います。自動化された工場は、動作に高電圧が必要な重機を備えていることが多く、過酷な環境や潜在的な危険につながります。
そのため、産業用オートメーションを実現する鍵となるのは、高電圧が生じる環境でもセンサ・ノードが効果的に動作し、作業者が安全に作業できるようにする絶縁テクノロジーです。コインの直径よりも狭い範囲内で、一方では各種センサ・システムに低電力を供給しつつ、他方では家庭用の電圧の60倍にもおよぶ電圧サージから作業者を保護できるテクノロジーを想像してみてください。設計者が「ISOW7841」などのデバイスを使用することで実現できるのが、まさにこのようなテクノロジーなのです。
TIは、新たなテクノロジーを開発することにより、ここで紹介したトレンドが提示する機会や課題に取り組んでおり、それによりカスタマは電源管理やエネルギー管理の課題に対処していくことが可能となります。
参考文献
(1) IEA.org
(2) WSTS
(3) Department of Energy / Here's How Much Energy All US Data Centers Consume
(4) Department of Energy
(5) IEA.org
(6) Nanochip Fab Solutions
著者プロフィール
Jeff MorroniTexas Instruments所属
TI研究開発グループ「Kilby Labs」電源管理担当ディレクタ
コロラド大学ボルダー校 電源管理分野 博士号取得