カスタマーゼロチームがもう1つ取り組んだのは「Active IQ」(旧製品「AutoSupport」)のインフラ整備だ。

Active IQは、20年以上前からあるNetAppのサポート「AutoSupport」をベースに、同社が2016年に買収したSolidfireの技術を組み合わせたテレメトリシステム。Webポータルやモバイルアプリの形式で提供し、顧客はこれを利用して単一ビューから他社と設定を比較したり、リスクやストレージ効率化についてアドバイスを受けることができる。

飽くなきNetAppの挑戦

グローバルで30万以上あるNetAppのストレージのエンドポイントから、設定データ、性能、システムログといった情報を収集しており、1日あたり700億以上のデータポイントがある。それまでは「Oracle Data Warehouse」を利用していたが、6年前に100TB程度だった容量は毎月150TBを超えるというレベルに達している。

まずは「Hadoop」に移行させることを模索したが、HadoopではQA用、開発用、ステージング用など複数のコピーを作成する必要があり、ホット、コールドなどデータ階層化の概念はない。Hadoopのファイルシステムである「HDFS」は大規模なブロックサイズのデータには適していても、IoTで生じる小規模なデータサイズでは性能効率が悪くなる。HDFSはまた、災害復旧の機能も備えていない。

そこで、DAS(Direct Attached Storage)/Hadoopから全データをONTAPに移行させることにした。それまでは、4PBのデータに対し3つ複製を行っていたため、データは12PBあったが、ONTAPの圧縮、重複排除、ストレージ効率化などの機能を利用することで1.3PBまで削減した。当然、ライセンスとサポートのコストが下がるため、ノードは120から40ノードになったという。

次に行ったのが機械学習のためのハイブリッドクラウド環境の構築だ。データをパブリッククラウドに移すことなく、クラウド側の処理能力やTensorFlowなどの機械学習機能を使うというもので、SnapMirrorを使い、パブリッククラウドのコロケーションであるNetApp Private Storage(NPS)にデータをミラーリングした。そして、AWSなどのパブリッククラウドとはコネクタで接続する。

  • 「Active IQ」の概要

    「Active IQ」の概要

データの活用により97%のオープンなケースを自動解決しており、P1に分類されるケースの85%をActiveIQにより削減でき、解決に要する時間は従来比で60%高まったという。

Fondekar氏は「顧客からサポートの依頼があると、担当者は顧客の設定情報がわかっているので迅速に解決できる」と、強調する。

また「ONTAPではFlexClones機能、それにデータ保護やストレージ効率化などの技術により、DAS/Hadoopで物理コピーを作る必要はないし、データをパブリッククラウドに移すことなく管理できる。つまり、データの容量を抑え、規制遵守の要件を満たすことができる。これは重要な差別化になる」とも話す。

  • Biren Fondekar氏

NetAppが約2年がかりで構築したDevOps環境は業界でも知られており、ノウハウを知りたいという企業は多いという。残念ながらパッケージ化して提供する予定はないというが、環境構築で協業したJenkinsのプラグインを無償で公開しているほか、Ansible、Puppetなどとの提携のメリットも享受できる。ActiveIQのハイブリッド環境については、リファレンスデザインを公開しているという。