ルネサス エレクトロニクスは、11月29日から12月2日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている「SCF(システムコントロールフェア)2017/計測展2017 TOKYO」において、同社が11月27日に発表した工場における製造装置や設備の予知保全や異常検知を後付けで可能にする「AIユニットソリューション」のデモを行っている。
これは、同社のRZ/T1を活用したソリューションで、同社那珂工場で先行試験的に導入されていた技術をAI処理などのソフトウェアを組み合わせ、リファレンスデザインとしたもの。これまでも半導体製造の現場では、装置同士が情報をやり取り(フィードフォワード/フィードバック)し、歩留まりを高めるといった取り組みは日常的に実施されてきた。しかし、例えば、装置のプロセス処理における電圧の測定であっても、あるポイントごとでの判断であり、すべての時間の電圧波形を見て判断する、といったことはなく、従来のテストではOKだが、ウェハ処理をすべて終えた段階では不良になる、といったことがあったという。
同ソリューションは、AIを活用することで、例えばエッチング工程の電圧波形は、プラズマを発生させ、加工しているタイミングでは高くなり、処理を終えると下がるという波を描くが、従来の測定点以外でスパイクが発生したり、電圧降下時の曲線が普段と違う、といった症状を認識。こうした症状が出た場合、不良となる可能性が高いという学習をデータのフィードバック、フィードフォワードと組み合わせて実施することで実現し、上流での不良判定を可能都とし、実際に同社の那珂工場でのテストでは6か月で不良ウェハの製造ラインへの投入数の減少による生産数の増加など5億円規模の価値を生み出すことに成功したとしている。そのため、同社でも、那珂工場の製造装置への搭載台数をテスト時の数十台規模から数百台規模に増やすとともに、他の前工程工場にも同様の取り組みを横展開で進めているとする。
また、パートナー企業である明電舎およびアドバンテックが、同リファレンスソリューションをベースとしたAIユニットを開発、発売される予定であるという。
さらに同社では、現在は学習データの処理はクラウドを経由して行う必要があるが、将来的にはエッジのPLCでも学習も推論も可能とする数Wクラスのデバイスの開発を進めており、12月にはテストチップが完成する見込みだという。これが完成すると、PLC側にある程度のストレージを搭載する必要がでてはくるものの、ネットワークを介してクラウドにアクセスし、そこで学習データをHPCで実行する、といった手間などを省くことが可能となり、PLCの下流のみで学習も推論も可能になるという。なお、この開発中のチップは、2019年にはPLCのオプションチップとして実用化をしたいとしており、最終的には、こうしたチップのみならず、クラウドの部分まで含めたトータルでのソリューションの構築も検討を進め、工場内でのeAIやIIoTの活用の推進につなげたいとしている。