ITRS2.0では新たに7つのトピックスに焦点

ITRS2.0では、従来の20近いワーキンググループとは別に、7つのフォーカストピックス(特に焦点を当てるテーマ)を選び、7つのフォーカスチーム(特定テーマを検討するチーム)を組織化して、次の2015年版ITRS(2015 TRRS2.0)策定の中心に据えることになった。ITRS2,0で取り上げた7大トピックスは以下のとおりである。いずれのトピックスも、半導体微細化からではなく、半導体のアプリケーションから議論を始めることになっている。

  1. System Integration(システム統合化)
  2. Heterogeneous Integration(異種デバイスの集積化)
  3. Heterogeneous Components(センサ、アクチュエータ、RF-MEMSなどの異種部品)
  4. Outside System Connectiviy(システム外との無線あるいは光学的接続)
  5. More Moore(ムーアの法則に従ったさらなる微細化)
  6. Beyond CMOS(CMOSの先に位置付けられる将来の新規デバイス)
  7. Factory Integartion(装置、材料、ファシリティ、自動化システム、管理システムなどの構成要素の工場レベルへの統合)

日本のロードマップ委員会はすでに終息

このような状況の中で、ITRSは役割を終えたとして、推進母体であったSIAをはじめとした各国諸団体がスポンサーから降りてしまった。ITRSの日本での活動母体である「半導体技術ロードマップ専門委員会(STRJ)」は、電子情報技術産業協会(JEITA)半導体部会半導体委員会傘下の組織として、1998年以降、20年近くにわたり、半導体メーカーや装置・材料・周辺メーカーやアカデミアの委員数百名(最盛時)を束ねて活動を続けてきたが、2016年3月に活動の終息を宣言した。SEAJのWebサイトは、活動記録を残しておくため10年後の2026年3月までは閉鎖しないが、すでに委員会活動は終息しているので問い合わせには応じないと言う。

遅れる2015年版ITRS2.0の発行

新方針に基づく2015年版ITRS (2015 ITRS2.0)は2016年3月に公開予定だったが本稿執筆時点(2016年6月13日)で未だに公開されていない。ITRS委員長だったGargini氏に確認したところによるよ、2015年版ITRSの原稿はすでに完成しており、SIAの最終承認を待っている段階だと言う。ITRSワーキンググループの一部は未完のまま終了してしまったため、一部の章節が歯抜け状態で公開される可能性が高いようだ。

2016年版以降は、IRDSとしてIEEE Standards Associationより発行される予定であるが、上述したように未だその体制や組織化が確立しておらず、具体的なロードマップ作成作業は始まっていないので、公表は来年以降にずれ込むのは必至だろう。IEEEによるIRDS策定には、日本からは、(従来スポンサーであったJEITAは降りてしまったので)IEEEと相互協力協定を結んでいる応用物理学会が何らかの形で協力する可能性が高い。

コンピュータ業界でムーアの法則を狙う

SIAが中心になって世界中の半導体工業会の資金で進められてきた半導体業界のためのITRS活動は終了してしまったが、今後は、"半導体への要求を含む"コンピュータ業界のためのロードマップとなって形を変えて登場する。その趣旨も内容も大きく変革されるのは必至である。

IRDSの運営母体であるRC Initiativeの座長で、2015年度IEEE Computer SoxietyのプレジデントだったThomas M. Conte氏は「IRDSをIEEE傘下に持ってくることで、コンピュータ性能に関する新しいムーアの法則(コンピュータの情報処理バイト数が年々指数関数的に増えるという法則)が作り出され、新規コンピュータ技術の市場開拓が加速されるだろう」とIRDSへの期待を述べている。