1月20日に発表された2016(会計年度)第3四半期の業績も好調なXilinx。向かうところ敵なしの状況にあるかと思いきや、日本法人であるザイリンクスのサム・ローガン(Sam Rogan)社長の口調は案外、重いものとなった。2013年5月にも同氏へのインタビューを行っているが、あの時に比べて、TSMC 16FF+を利用したZynq UltraScale+MPSoCの出荷が開始され、2016年2月にはVirtex UltraScale+の出荷も開始されるなど、好調に見える中、果たして同氏の真意とはどのようなものなのか、改めて話を聞いた。

--今年もXilinxは好調ですが、実際のところはどうでしょう?

ザイリンクス日本法人代表取締役社長を務めるサム・ローガン氏

今はおかげさまで好調です。私がこう言うのも何ですが、やはり社長のMoshe(Gavrielov:本社社長兼CEO)が凄かった。彼は「ASICのコスト構造は今後、続けられないことは明白なので、ASICのマーケットに集中して、このシェアをとりましょう」と決めた。ただそのためにはハードウェアを色々と工夫する必要があるほか、従来とは違ってツールやIPといった周辺部にも大きく投資をする必要があった。そうした新たな部分に対する投資判断が凄く速く、ASICから(FPGAに)エンジニアを引っ張ってくるなら、HLSのツールが必要だとして、2011年にAutoESLという会社を買収しました

ただ最近はまた色々と足りない状況になりつつあると思っています。というのも、最近はFPGAファブリック(ユーザーがプログラム可能な論理回路領域)とプロセッサが一緒になっており、それぞれをどう使い分けるべきかという問題が出てきています。そこで新しいレイヤとしてSoftware Definedなもの、我々のソリューションとしては「SDSoC」とかになりますが、そうしたツールを提供するようになりました。このSDSoC、実は日本での売れ行きが好調です。多分グローバルで見ても半分ぐらいのライセンスが日本のカスタマで占められています。Mosheには以前、「Zynqは日本のカスタマのために作った」と言われた事もあります。

最近の国内の動向を見ているとARMのプロセッサコアが入りながらもFPGAファブリックが低~中容量の製品が流行ってきています。そのため長期的には、例えばSpartanのような低価格向けFPGAにも(ARMコアを内蔵した製品が)提供されるのではないかと思っています。

--Zynqも16nm世代製品の出荷が始まりました。パフォーマンスも(前世代から)大きく引き上げられていることを考えると、もう心配する事はないのではないですか?

私が心配しているのは、製品ではなくマーケットなのです。例えば通信はご存知の通り有線と無線が存在し、FPGAはこの領域で大きなシェアを持っています。ただ無線で言えば、4G、つまりLTEに関しては日本・韓国では投資が一段落してしまいました。中国も総人口が多いとはいえ、都市部での普及は一段落して、市場としての成長が終わりかけています。では5Gが出てくるまでの間はどうしていくのか? ということで4.5Gの話がいろいろ出ていますが、その定義も曖昧なわけです。

--4.5Gは本当に立ち上がるんですか?

4Gの普及から5Gのサービス開始までの期間が長すぎるので、逆に立ち上がらないとなると、それまでの間システムメーカーはどうビジネスを維持するのか? という話が出てきます。ビジネスとして考えれば、5Gまで待っていられないと思うところはあります。

こうした背景から通信市場はやや落ち込み気味となっています。にも関わらず日本での売り上げは好調です。丁度、通信の売り上げが下がってきたタイミングで、車載向けの成長が始まったからです。我々は、会社全体としては2002年から車載向けビジネスを行ってきていますが、日本での売り上げとして大きくなってきたのは2016年(会計年度)なんですよ。2016年度末までにカスタマから複数の製品が立ち上がってくるので、事業規模もかなり成長することが期待されます。

--通信分野は、例えば有線であればハイエンドのVirtex製品が用いられたりするわけですが、車載向けだとせいぜいがZynqやKintexですよね? 単価で言えばVirtexの方が遥かに高いわけですから、車載では代わりに数が出ているということでしょうか?

基地局の場合、どこに搭載されるのかでいろいろと話は変わってきます。基地局から末端に行くほど出荷数は増えていくことになりますが、そういったところはこれまでもKintexやZynqなどが用いられてきました。