新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は10月21日、情報通信研究機構(NICT)や東京農工大学、タムラ製作所らで構成される研究チームの成果として、次世代パワーデバイス材料「酸化ガリウムエピウェハ」を開発したと発表した。

酸化ガリウム(Ga2O3)は、バンドギャップが4.6~4.9eVと、ワイドバンドギャップで知られるSiCやGaN(3.3~3.4eV)と比べても大きな値を有しているため、次世代のパワーデバイスの実現に向けた材料として期待され、研究が進められている。

実際のパワーデバイス用エピウェハとしては、エピ層表面の平坦性と低キャリア濃度領域での濃度制御が重要となるが、今回、研究チームは各種の成長パラメータの最適化を達成。これにより、パワーデバイス用エピとしての性能を満たす、1nm以下の表面粗さと1016cm-3台の低キャリア濃度での制御を実現したとする。

また、すでに同エピウェハを用いて良好な特性のショットキーバリアダイオードやトランジスタが作成可能であることなども確認したという。

なお、これらの成果の事業化についてもすでに着手しており、タムラ製作所ならびに研究者などが出資を行い、タムラ製作所からのカーブアウトという形態で新会社「ノベルクリスタルテクノロジー」を設立。NICT技術移転ベンチャーとして、NICTから知的財産の技術移転を受ける形で2015年10月より酸化ガリウムエピウェハの製造・販売を開始したとしている。同社では、本格的な市場立ち上がりを2020年ころと見ており、2020年度には7億円の売り上げを目指し、当面は研究開発向け製品の出荷を行いつつ、低コスト化ならびに大口径ウェハによる量産技術の開発を行っていくとしている。

酸化ガリウムエピウェハの断面構造イメージ(左)と、実際のウェハ写真(右)