ルネサス エレクトロニクスは9月2日、都内にて「Renesas DevCon Japan 2014」を開催した。なぜこの時期に、という話はまた改めてご紹介するとして、まずは基調講演の内容をお届けしたいと思う。

回復基調にある財務状況

まずは同社会長である作田久男氏(Photo01)より、同社の現状と方向性が簡単に紹介された。

Photo01:オムロンの会長からルネサスの会長に転じて1年2カ月の作田久男会長

まず現状であるが既報の通り、現在のルネサスは黒字転換は果たしたものの、目標である通年での営業利益率10%越えに向けてより一層の固定費削減などの方策を図っている。講演では今年3月末における営業利益率が10%を越えた事を紹介し(Photo02)、今後もより一層の改善を図ってゆくとした。これに関連し、今後は投資を同社の集中領域に重点的に行う(Photo03)事や、デバイス単体からキット/ソリューションの提供にシフトしてゆく事が改めて表明された(Photo04)。

Photo02:絶対額としてはともかく、資金繰りに関してはやっと正常化の方向に進みつつある

Photo03:これは8月頭の第1四半期決算報告でも説明された内容と同じである

Photo04:なぜキットやソリューションか、というのは作田会長の持論である利益率の確保に関係する話だが、これの詳細については個別インタビューでお伝えしたい

ついで同社社長の鶴丸哲哉氏(Photo05)が登壇。

Photo05:同社社長兼COOの鶴丸哲哉氏。東日本大震災の時は執行役員兼生産本部副本部長ということで、まさに復旧の指揮をされていた

まず東日本大震災の際の工場復旧に関して改めて謝意を述べた後で(Photo06)、同社の強みとは信頼性や安定供給性、それと先端技術にあることを再度強調した。

Photo06:このときの最初の復旧ロットの名前が"絆"という話は、これまでも何度か語られてきた

Photo07:具体的な強みの説明は後に任せて、鶴丸氏は簡単に全体の方向性を示すに留まった

マーケット概観

次いで昨年11月からCSMO(Chief Sales Marketing Office)に就任した高橋恒雄氏(Photo08)より、ルネサスが睨んでいるマーケットの概観が説明された。

Photo08:2009年末にFreescaleを退社後、しばらくはアドバイザーや顧問などを歴任していた高橋恒雄氏。こうした公の場で見かけるのは久しぶりである

ルネサスもまた、他の半導体会社と同じように来るべきビッグデータとIoTに大きなマーケットがあるとした上で(Photo09)、この結果としてデータのコモディタイズが起きるとしている(Photo10)。また、そのコモディタイズしたデータをどう使うか、に関しても法改正に向けた検討が始まっており(Photo11)、ここが本格的にビジネスに繋がってゆくと期待されている。

Photo09:数字はともかく、ビッグデータ&IoTの組み合わせはもはや鉄壁というか、どのメーカーも最近はここから話を始めている気がする

Photo10:1バイトあたりのGDP、という切り方はちょっと新鮮だった

Photo11:もちろん、非個人情報に相当するものを複数組み合わせて個人のトラッキングが出来てしまうといった話もあるので、実際には色々と複雑ではあるのだが、少なくともグレーゾーンに当たるものを削減してゆこうという方向性は、適正なビジネスモデルの構築には不可欠である

さて、このあたりからもう少しルネサスに近い話が出てくる。データ量が増えるということは、データを扱うためのエネルギーも増えるということである。ビッグデータ+IoTというのは、これまで単体で動いていた機器がネットワークに繋がりデータを吐き出すという意味でもあるが、そうしたものの代表例の1つであるモータは毎年増えつつあり、これが必要とする電力量は膨大である(Photo12)。また自動車にしても機器制御にしても、安全性をより高める方向の要件が着実に出ている(Photo13)。このセキュリティに関しては、ITとの連携をより高める方向に進んでいる(Photo14)。

Photo12:このあたりは後のセッションでもう少し細かい話もなされたが、とにかく電力需要が着実に増加している事は間違いない

Photo13:これまで個々の機器単独でそれぞれ安全性をどう担保するかという話になっていたが、今後はシステムとしての安全性を求められる方向にシフトしてゆく

Photo14:組み込みシステムは安全というのはすでに過去の神話であり、あくまで実験レベルながら車に侵入する例も示されるなどしている

ルネサスがビッグデータ+IoTというトレンドの中でシェアを取ろうとしているのはまさしくこれらの要件が必要とされる部分であり、これを端的に示したのがこの言葉である(Photo15)。最後に、続く2つのセッションに向けて、今回のDevConでメインに据える2つのテーマについて簡単に触れて(Photo16)、概観説明が終わった。

Photo15:ビッグデータの場合、生のデータは爆発的に増えつつあるから、それをどう絞り込んで格納・分析するかが特にサーバ側では肝になるわけだが、それに向けてルネサスが提供できるソリューションは、少しでも価値の高いデータを提供できるようなものにしたい、というメッセージ

Photo16:そもそもルネサスは非常に広範な製品とこれをサポートするキット/ソリューションを持ち合わせているが、今回はそうした全般を見せるというよりも、特定の分野に絞り込んで判りやすく見せることに腐心した様で、マーケット概観もこれをフォローするようなものになっていた