大阪府警とカスペルスキーは5月28日、サイバー犯罪撲滅に向けた取り組みの説明会を行った。偽ブランド品を販売するサイトを利用した詐欺被害を防止する取り組みで、共同説明会を行ったカスペルスキーのほか、シマンテック、マカフィー、トレンドマイクロ、セキュアブレイン、ソースネクスト、BBソフトが同取り組みに参加している。

カスペルスキー 代表取締役社長
川合 林太郎氏

説明会の冒頭、カスペルスキー 代表取締役社長の川合 林太郎氏が登場した。現在のサイバー犯罪は、「標的型攻撃者」「ハクティビスト」「政府エージェント」「テロリスト」の主に4つのタイプに分けられるという。「私達ネット利用者は彼らの攻撃に常に晒されている」と話す川合氏。カスペルスキーは創業当初より「Save the World」を目標に、ITにまつわる脅威から世界のユーザーを守ることを意識してきたという。

今回の発表は「偽サイト」による消費者の詐欺被害を防止しようという取り組みだ。大阪府警では「偽サイト」について「購入者に代金を振り込ませて商品を届けない詐欺サイト」と「購入者に正規品であると誤解させかねないコピー商品(偽ブランド品)を販売するサイト」と定義付けている。

偽サイトの被害者が、大阪府警、税関や消費生活センターに相談することで、大阪府警察本部サイバー犯罪対策課に情報が提供される。これらの情報を精査した上で、サイバー犯罪対策課が情報セキュリティ会社7社に連絡を行うことで、偽サイトをブロッキング対象にする。被害者を増やさないためにも迅速な対策が求められるが、早ければ情報提供の翌日にはブロッキングが行われるとしている。

偽サイトについては、実在するネットショッピングサイトに似せてサイトを構築しているものや、実在する無関係の企業名・連絡先などを問い合わせ先として表示しているものもある。

カスペルスキーによれば、これらのサイトは日本語で日本人向けにサイトを構えていながらも、サーバーやサイト登録者の名前が海外のものばかりだという。偽サイトのドメインを登録しているサイト管理者のメールアドレスにいたっては、上位70%が中国ドメインであった。

これらの偽サイトによるサイバー犯罪の被害額は、世界で2兆4,000億円規模(国連薬物犯罪事務所による調査)にのぼる。この金額は、世界における犯罪被害額全体の1/4にまで達し、深刻な問題となっている。

メールドメインの上位70%が中国のもの

日本語サイトでも、偽サイトの殆どは海外サーバー

カスペルスキーにとって、警察や競合他社と行うこの取り組みは独自の施策ではない。しかし、同社 日本情報セキュリティラボ 所長のミヒャエル・モルスナー氏は「Save the Worldを目標としている我々にとって、被害者を脅威から守ることを最終的な目標としている」と説明。官民一体となることで、広く消費者保護に繋がることに意義があると強調した。

この取り組みで中心的な役割を果たすのが大阪府警察本部。生活安全部でサイバー犯罪対策課に所属する警部補の武本 直也氏は「現在は情報セキュリティ会社の主要7社に限って情報を提供しているが、我々の取り組みに賛同していただけるのであれば、他社にも是非参加していただきたい」と話す。iフィルターを提供する、フィルタリング機能の大手であるデジタルアーツなどが未参加となっているが、協力関係を模索していきたいとしている。

また、他の都道府県警との連携については「京都府警、兵庫県警といった横の繋がりで連携していくのは難しい。上級官庁である警察庁を通じて連携していく形になるが、これからも様々な形で取り組みを広げていきたい」とした。