10月13日と14日の2日間にわたり、産業技術総合研究所つくばセンターで開催された「産総研オープンラボ2011」。企業の経営層、研究者・技術者、大学・公的研究機関を対象とした、産総研が研究開発している技術や機器などを公開する催しである。約340の研究テーマが今年は取り上げられ、その中にロボット系の出展が複数あったので、それらに絞ってお届けする。

アクトロイド-F 男性仕様

今年のロボット系の目玉といえば、「アクトロイド-F」だろう(画像1・2)。大阪大学の石黒浩教授が開発した人にそっくりなロボット「ジェミノイド」の量産型としてココロが販売している最新型の女性型ロボットがアクトロイド-Fである。産総研ではその2台目を導入したのだが、今度は男性型仕様だった(画像3・4)。

画像1。2台のアクトロイド-F。このカットだと、男性仕様の方の首のかしげ方が微妙に不自然な感じがしないでもないが、実際に見た時は、遠目だと瞬間的にはまずわからない

画像2。アクトロイド-Fは、歩くことはもちろん、基本的には立つこともできない設計で、通常はこのように座らせる形で用いる。が、この自然なたたずまいは驚嘆に値する。手なども間近で見ない限りは作り物とは思えない

画像3。男性仕様アクトロイド-Fの顔のアップ。ベースの女性仕様とまったく同じ顔かたちだが、髪型、眉毛などのメイク、そして衣服によって男性にしか見えない。記者は個人的に、サッカー日本代表FWの李忠成選手に似ている気がしたので、勝手に「タダナリくん」と命名

画像4。肩幅は若干女性仕様よりも厚みを持たせている。しかし、身長はまったく同じなため、男性だと思うと小柄に見えるからこれまたイメージとは不思議

とはいっても、実際には髪型やメイク、着衣を男性のものにしただけで、機械的な変更は一切ない。ボディは中の詰め物の量を増やして肩幅をややガッチリさせてはいるが、そのほかは一切変更なし。顔立ちはまったく別人に見えてしまうが、隣の女性仕様とはまったく同一である。でも、姉弟にすら見えないから(人によっては見えるかも知れないが)不思議だ。

ちなみに、どれぐらいアクトロイド-Fが人に似ているかというと、事前に男性仕様があるとは知らないまま設置されている部屋に入ったところ、最初は男性仕様を産総研のスタッフの方と思ってしまったほど。また、振る舞いの自然さもさらに磨きが増したようで、なかなかロボットらしさを感じられない。唯一、操縦者の顔の動きをトレースする際に、操縦者の首のふりが速かったりすると若干カクカクした動きが出る程度。そこで初めて人っぽくないと感じたぐらいで、写真で見た場合はあらかじめロボットといわれていない限りはわからないのではないだろうか。

また、この産総研のアクトロイド-Fたちの機能で新たに追加された部分は、瞳の部分にカメラが搭載されたこと。操縦者がそれを通して前方を見られるようになった(画像5・6)。人とのコミュニケーションを取る際に、これまでだと若干視線が話者をとらえていなかったりするケースがあり、「ちゃんとこっちを見ていない」という感想を持たれてしまうことがあったという。それをなくすための仕組みで、ますます人に近い挙動を見せるようになったというわけだ。

画像5。瞳のアップ。遠目には普通に人の目に見えてしまうのだが、フラッシュを焚くと、人の目とは違う反射の仕方や、レンズの金属パーツなどが若干見えるので、ロボットであるのがわかるというわけだ

画像6。PCモニタ上に女性仕様アクトロイド-Fの瞳のカメラがとらえた像が映し出されている。そのほか、基本アクションを割り振られた複数のボタンや、表情を設定するための各種パラメータの設定スライダーなどがあるのがわかる

なおアクトロイド-Fの価格だが、1000万円。もちろんおいそれと個人で買えるような価格ではないのだが、前モデルのアクトロイドの3分の1となっており、大幅な低価格化を実現したロボットでもあるのだ。

画像7。最後に女性仕様の本来のアクトロイド-Fを顔のアップをワンカット。ちょっと憂いを含んだ切ない感じ