「Adobe CS5」発売から約半年が経過した。各ツールの機能や進化に関するクリエイターの認知も進み、「CS5」以後の刺激的なアウトプットも多数生まれつつある。そのような状況のなか、「Adobe CS5」の映像関係に関して注目すべき動きがある。映像編集ツール「Adobe Creative Suite 5 Production Premium」に関する気になるキャンペーンがそれだ。

「Adobe Creative Suite 5 Production Premium」

ご存知のように、「Adobe Creative Suite 5 Production Premium」は「Premiere Pro CS5」や「After Effects CS5」を中核とした映像編集に欠かせないスイート製品だ。既報の通り、アドビでは「"Switch!"キャンペーン」を開催している。このキャンペーンでは、「Apple Final Cut Studio」から「Adobe Creative Suite 5 Production Premium」へと買い換える(乗り換える)ユーザーを対象に、通常価格26万1,450円の製品を、14万4,900円という半額に近い割引価格で提供するというもの。過去のアドビでは例のないようなアグレッシブな取り組みに関して アドビ システムズ 代表取締役社長 クレイグ・ティーゲル氏(以下、ティーゲル氏)に話を訊いた。

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「映像編集の世界で、『CS5』によってアップルの一歩先に行けた」

クレイグ・ティーゲル
アドビ システムズ 代表取締役社長。2009年1月にアドビ システムズ 代表取締役社長に就任。就任以前は、アドビ システムズ 英国・北欧地域担当のマネージング ディレクターとして、セールス、マーケティング、チャネル流通、カスタマーサポート、プロフェッショナルサービスなどの事業を統括

ます、ティーゲル氏は「CS5」発売後のアドビを取り巻く状況に関して、語ってくれた。

「ここ1年は、アドビにとって本当にエキサイティングな1年でした。そのなかでも『CS5』のリリースはやはり大きいですね。アドビ システムズという会社の歴史を振り返ってみても、『CS5』はベストな製品だと思います。『Photoshop CS5』、『InDesign CS5』、など『CS5』に含まれる全てのツールのバージョンアップが満足いくものだったと思います」

「CS3」から「CS4」にバージョンアップしたとき以上に、各ツールとも「CS4」から「CS5」へのバージョンアップで大きな進化を遂げたという印象は確かにある。その中でも、映像編集において大きな役割を果たす「Production Premium」にフォーカスしたキャンペーンをアドビが行う理由を、ティーゲル氏はこう語る。

「映像編集に関して、これまではアップルの『Final Cut Studio』のマーケットシェアが多いという現状がありましたが、『Production Premium』に含まれる『Premiere Pro CS5』の進化によって、非常に良い戦いが出来る環境が整ったという自負があります。これまではリリースサイクルや新機能投入に関しても、アップルに一歩遅れをとっていましたが、CS5によって一歩先に行けたと思っています」

さらにティーゲル氏は『Final Cut Studio』に対する、『Production Premium』の大きなアドバンテージについても説明した。

「『Production Premium』の中核となる『Premiere Pro CS5』は64Bit対応という部分で、Macで映像編集に取り組んでいるユーザーにとっても非常に良い製品だと思います。『Mercury Playback Engine』により、プレビュー再生処理速度が高速化されています。また、GPUアクセラレーションにより編集時のエフェクト処理も高速化されています」

アップル製品からアドビ製品に乗り換える意義

Premiere Proの64Bit対応最大の長所は、HD映像の編集におけるテープレスワークフローであるとティーゲル氏は続ける。

「すでに映像業界では、HD映像編集を無視できない時代となっています。タイムラインで編集を行う場合、PCのメモリを多く使用することになります。HDにおいては、これまでの6倍以上のデータ量を扱うことになるのです。大きな映像を長時間にわたり編集で使う場合には、システムの安定が大切です。その部分に関して弊社の従来製品を含む32Bit対応の映像編集製品では、これまで問題を抱えていました。ただ単に処理速度が早いというだけでなく、HD映像編集の環境がより安定したという部分も、『Final Cut』に対する『Premiere Pro』の大きなアドバンテージです。また、デジタル一眼カメラで撮影した動画の映像編集に関しても、アドビのツールは最適です。キヤノン製EOSで撮影されたファイルや、ソニー製、パナソニック製デジタル一眼カメラで採用されているAVCHD形式のファイルを利用して編集を行う場合、『Premiere Pro CS5』では、『Final Cut』で行うようなデータフォーマットの変換の必要がありません。撮影したデータフォーマットを変換なして編集できるという部分は大きなメリットだと思います」

このようにアドビ製品のアドバンテージを説くティーゲル氏だが、これまで『Final Cut Studio』での映像編集に慣れ親しんでいる映像クリエイターが、安易にアドビ製品への乗り換えを敢行するのだろうか? この点に関してもティーゲル氏は強い自信を見せる。

「『Final Cut』でビデオ編集を行っている人でも、『Photoshop』や『After Effects』などのアドビ製品と組み合わせて使っている人は多いのです。これまでのツールを使いながら、中核となるツールもアドビ製品に移行する良い機会だと思います。アドビの歴史を考えると、ページレイアウトの世界でも、『QuarkXPress』という先行製品に対して『InDesign』を製品として投入し、皆さんもご存知の結果を出しました。5年10年先行した製品から、別の製品に移行する時というのは、使い方を学ばなければならないですし、確かに大変です。ただ、そうまでしてアドビ製品に移行する必要や魅力があるということを、今回のキャンペーンで伝えたいですね。価格面での不安や躊躇はないと思いますので、この機会にアドビ製品に移行うしていただけたら、嬉しいですね」

Flashを巡る問題などで、アップルとの関係に様々な声がある時期に、大胆なキャンペーンを実施したアドビ。その点に関してもティーゲル氏は笑顔で語ってくれた。

「アドビは常に『プラットフォームに依存しない、それに縛られない』という事を目指してきました。どんな場でも、とにかくアドビのツールを使って欲しいという願いがあるのです。確かにFlashに関して色々と物議をかもしている部分もありますが、私達はいつも同じスタンスでツールを制作してきました。ユーザーがどのようなプラットフォームやデバイスを選ぼうとも、その上でコンテンツを制作できるツールを提供するという部分です」

「"Switch!"キャンペーン」とは?

アドビの「"Switch!"キャンペーン」では、2010年11月19日までの期間、『Final Cut Studio』のインストールメディアと本キャンペーンの申込書をキャンペーン事務局に送ったユーザーを対象に、アドビストアにて通常価格26万1,450円の『Creative Suite 5 Production Premium』が、14万4,900円の特別価格で提供される。希望者はアドビの同キャンペーンサイトに掲載している申込書に必要事項を記入の上、Final Cut Studioのインストールメディアと合わせて事務局に送る(※もしくは申込用紙にFinal Cut Studioのシリアル番号を記載してメールにて申し込み)。その後、アドビストアにてAdobe Creative Suite 5 Production Premium(ダウンロード版)を特別価格で購入できるクーポンが提供される。
キャンペーン期間(申請)は2010年11月19日まで(※当日消印有効)。注文期間は2010年11月26日23時59分まで。キャンペーン対象製品はApple Final Cut Studio Version1、2、3で、Final Cut Pro Version 1.xから5.xは対象外。申し込みは日本国内の居住者のみが対象で、申し込み時に送ったFinal Cut Studioのメディアは返却されない。
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撮影:石井健