真の再編実現には外部からの参入が必要

今回の再編により、中国の通信企業のコア競争力が高まるかどうかも疑わしい。通信業界関係者は常に自分の業界は特別だと言う。確かに通信業界には特別なところがある。通信業界は固定費用が高く、変動費用あるいは限界費用が低いだけに、「独占」または「寡占」となりやすい体質を持っている。

より極端な言い方をすれば、市場に参入する企業が少ないほど良く、1社のみ、というのがむしろ理想的なのだ。こうなれば、膨大な固定費用が節約され、サービスコストを削減するだけの基礎が与えられるからだ。逆に、企業数が多くなればコストもかさんでくる。こうした観点から、競争は望ましからざるもの、との見方も出てくるだろう。

上流の自然な独占状態が競争力を高めることに有利であるとしても、下流の部分では逆に充分な競争が展開されなければならない。そうなってこそサービスレベルが高められるし、、消費者にメリットが出てくるからだ。

コア競争力を身に付けるためにも、外部との競争が必要である。現在、中国の通信市場を牛耳っている大手キャリア各社は、名目上こそ上場企業だが、本当の意味で利潤を追求する企業ではなく、その上にはグループの親会社がある。今回の再編を含むすべての重要な戦略は、全て行政色が極めて濃い親会社によって決められたものなのだ。

業界構造からみれば、現存の6社にせよ、再編後に残る三社にせよ、みな1つの利益共同体である。分割にしても合併にしても、単に内部の資源統合にすぎず、新しい競争者が参入していない以上、突然競争力が高まるはずがない。

将来、中国の通信業界に真の外部からの参入があれば、「競争意識」があるいは蘇えるのかもしれない。

現在は南方の中国電信と北方の中国網通が対峙し、各自の地域内で独占的地位を保っている。中国電信は2億人余のユーザーを持ち、中国網通は1億人余のユーザーを持っている。もう一つの固定通信事業企業である中国鉄通は、2,000万人のユーザーを持つのみだ。固定通信のこの3つのネットワークは、基本的に相互に乗り入れない構造になっている。問題は、モバイル事業である。

いま、中国移動と中国聯通の2社が中国全土をカバーするネットワークを持ち、相当量の企業資源の重複投入がなされている。再編後は、新たにできる3陣営が、それぞれ全国をカバーする固定電話網とモバイルネットワーク網を持つようになる。従って、長らく指摘されてきた企業資源の同一分野に対する重複投入という問題は、さらに激しくなるものと考えられる。