
「何でもありのトランプ政権」(アナリスト)に自動車メーカーが翻弄されている。トヨタ自動車の北米法人は現地の部品メーカーに対し、関税に伴うコスト上昇への対応を支援。価格を当面維持する方針で、原価低減などでコストを吸収する考えだ。
ホンダは2〜3年かけてカナダとメキシコから米国に主力車種の生産を移管し、米国比率を9割に高める検討を開始。一方で米国内に生産拠点を持たず、輸出に依存する三菱自動車やジャガー・ランドローバーは米国出荷・輸出を一時停止。英調査会社が2025年の新車販売台数を1610万台から1490万台に下方修正するなど、市場縮小の可能性が高まっている。
肝心の米ゼネラル・モーターズ(GM)などの「ビッグ3」にもマイナス影響が出始めている。米国内で自動車を生産しても輸入部品価格が跳ね上がるからだ。利益率の高い大型ピックアップトラックの生産の約半分をメキシコとカナダで手掛けるGMの業績は厳しくなる見通し。
同様に全生産台数の約8割を米国が占めるフォード・モーターも無傷ではいられない。米国内で販売する幅広い車種の値下げに踏み切ったが、当然、利益率は下がる。コストを抑えるため人員削減の動きも出てきた。クライスラーを傘下に収めるステランティスは米国内工場で従業員900人を一時解雇する。
各社は政権の動向を慎重に見極めながら調達先や生産体制の検討を重ねるが、製造業復活のシンボルとされる米自動車業界からも悲鳴が上がっている。