TD-SCDMA が中国移動の試金石に

中国移動にとって、将来に向けての最大の「変数」はTD-SCDMAと3Gの発展いかんによる。中国聯通、中国電信との競争の焦点もまさにここにある。中国移動は現在最大規模のモバイルユーザーを持っているが、それこそが同社最大の資産であり、持続的発展を保証する基礎である。

しかし、3G運営について政府の関連部門は、3つの3Gライセンスしか交付しないことをすでに表明している。中国移動はうち2つの3Gライセンスしか獲得できない。そのため、TD-SCDMAの運営に専念するしかないのだ。

中国電信がCDMA2000を、中国聯通がWCDMAを運営するという3Gライセンス交付状況の中、中国移動のTD-SCDMAは競争相手として対抗していけるのであろうか。

また、WCDMAとCDMA2000は、ともに、世界市場で成熟したネットワークとなっている。こうした中で、3Gに参入するがゆえに中国移動の優位性が失われる可能性もある。

確かに、中国移動は現在膨大な数のモバイルユーザーを持っているが、ユーザーの忠誠度は市場の動向により絶えず変化する。3Gの運営で、中国移動のTD-SCDMAが中国聯通のWCDMAやと中国電信のCDMA2000と対抗できない場合はどうすればいいのだろうか。中国移動にもう1つのWCDMAライセンスを交付するのだろうか。しかしそうなった場合、TD-SCDMAの発展は誰が担うのか。

言うまでもなく、これらはただの憶測に過ぎない。TD-SCDMAの発展は、関連部門から大きな期待をかけられているので、中国移動こそこの重責を負うのにふさわしい。

中国移動の強さとその経営能力については疑う余地がない。しかも、政府の関連部門はTD-SCDMAに対し、より多くの優遇措置を提供する可能性がある。中国移動もTD-SCDMAの運営に全力を尽くすことだろう。

独占から寡占に移行、料金値下げの可能性も

再編案では、六つのキャリアは2社ずつ統合され、結局3社体制となる。その目的は、前述のように、ポートフォリオの統合、コア競争力と自主開発能力の強化、コスト削減にある。だが、こうした目標がどこまで実現できるかを危ぶむ声も多い。

今回の通信業界再編の動機の1つは、市場のアンバランス状態を解消することだった。より具体的に言えば、ユーザー規模がいまや世界一の3億7,000万人にも達する中国移動のモバイル市場での1人勝ちと独占体制を打破することにある。現段階で中国移動に対抗し得る唯一のモバイルキャリアである中国聯通のCDMAネットワークとGSMネットワークの双方を足しても1億6,000万人しかいないのだ。

中国移動による強固な独占体制が続けば、中国ユーザーが長らく待ち望んできたモバイル事業の競争、通信料金の値下げ、といった状況はいつまでたっても実現しない。

少なくとも独占が寡占になれば、消費者は喜んで受け入れる。寡占市場の企業は、規模にしても、実力にしても大体同じくらいなので、互いの事業展開は大きく影響を受け合う。言うなれば「囚人のジレンマ」のような市場環境にあるわけで、数年前のテレビや電子レンジの市場のように、一方が値下げすれば、ただちに泥沼の「価格戦争」が引き起こされやすい。

だが今の再編案で行けば、再編後も中国移動の一人勝ちという状況はほとんど揺るがないだろう。なぜなら再編された3つの陣営が依然としてレベル的に同一視できる陣営同士ではないからだ。中国移動の規模と実力は、相変わらず新・中国聯通とも新・中国電信とも比較にならないほど強大。市場のアンバランスという状況には変わるところがないとみられる。