NECエレクトロニクスは23日、同社が2007年に排出した温室効果ガスの1種であるPFC(パーフルオロカーボン)の量を前年比で21%減となる76万t-CO2へと削減することに成功したとを発表した。

PFCは、炭化水素(C-H)のHを1部あるいはすべてをフッ素(F)で置換した化学物質で、CO2と比較して地球温暖化係数が約5,000倍から1万2,000倍と高く、環境負荷が大きいことが問題となっていた。

半導体の製造工程では、主にSiウェハ表面に絶縁膜や金属膜などの薄膜を形成する「成膜工程」におけるチャンバ内に付着した原材料のカスをクリーニングする際と、それらの膜を除去する「エッチング工程」でエッチングの材料ガスとして用いられている。

半導体製造におけるPFC適用工程

同社では、「PFC使用量の削減」「代替ガスの導入」「PFCを分解する除害装置の導入」の3点を重点施策として実施、PFCの排出量削減を実現したという。

2007年にNECエレクトロニクスが行ったPFC排出量削減に向けた施策

NECエレクトロニクス 生産本部 環境管理部長 鈴木芳明氏

削減に最も寄与したのが"PFC使用量の削減"だという。これは、成膜時に発生する原材料のカスを取り除く際に使用するPFC使用量が最小となるように、PFC使用条件を改良。これにより、従来の使用条件と比較して最大で40%程度使用量を削減することに成功したとしており、「2007年の実績においては、3つの施策の内で、これが最も大きな効果をあげた」(同社 生産本部 環境管理部長 鈴木芳明氏)という。

また、PFCガスの使用量削減については、「コスト削減や生産性向上の観点から言っても効果がでてきており、競争力強化へ向けた取り組みの1つとなっている」(同)とした。

さらに併せて、従来用いられてきた温暖化係数1万1,900のPFC「C2F6」から温暖化係数が8,600の「C3F8」へとガスを代替することでCO2の排出量の削減を行っている。

CVD装置におけるPFC削減に向けた取り組み

除害装置の導入に関しては、「300mmウェハ対応ラインでは、設備スペースが用意されており、ライン立ち上げ時から対応が可能だが、既存の200mm以下の生産ラインでは、余分な設備を置くスペースが無い。そのため、ラインに専用の排気ダクトを設置し、CVD装置より排気されるC2F6を屋外に設置したPFC除害装置へ引き込み除害する仕組みを考案した」(同)としており、排気ラインに自動切換弁を設けることで、C2F6排気のみPFC除害設備へ導入する仕組みを取り入れた。

PFCの除害装置には燃焼方式、ヒータ方式、触媒方式などの方法があるが、同社では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、燃焼方式のPFC除害装置の導入を進めている。

燃焼方式のPFC除害装置は、火炎の持つ反応活性を利用してPFCガスをCO2とFに分解、CO2は大気開放され、Fは水スクラバにてフッ酸(HF)へと生成され処理される。「PFCの除害率はおおむね90%程度」(同)であり、主に石油燃料を用いて燃焼を行うため、その分もCO2が発生するが、PFCをそのまま排出する場合に比べて、CO2の排出量の総量を低く抑えることができる。

NECエレクトロニクスの半導体製造工程におけるPFC削減施策の概要

2008年2月よりNECセミコンダクターズ九州・山口の山口工場およびNECセミコンダクターズ関西のそれぞれ150mmウェハ対応ラインに合計で6台の設備を導入。除害対象ガスはC2F6ならびにSF6で、「2008年のPFC排出量削減の要」(同)としている。

また、2008年度の末頃をめどにNECセミコンダクターズ九州・山口の熊本川尻工場ならびにNECセミコンダクターズ関西のそれぞれ200mmウェハ対応ラインにも同数程度の除害装置を導入する計画である。

さらに、PFCの回収および再利用に対しても模索していく計画で、「個人的な意見としてだが、2010年頃には実現できれば」(同)と希望的観測を示した。

同社では、こうした取り組みを進めることで、2010年までにPFCの排出量を1995年の52万9,000t-CO2の90%となる47万6,000t-CO2以下まで低減することを目標にしていくほか、ポスト2010年の削減活動も視野に入れて、削減量の上積みを行うべく活動を展開していくとしている。

NECエレクトロニクスのPFC排出量推移