6年近くにわたって50%を超える年間成長率を維持し続けてきた中国半導体業界に再編の波が押し寄せている。珠海炬力集成電路設計による上海鉅泉科技買収などがいい例だ。再編の背景には、受託生産から自主開発型企業へ業態を転換しようという中国半導体企業の共通認識がある。単なる"製造センター"からの脱却はなるのか? 最新の業界動向を追いながら、その可能性を占ってみる。

高度成長期を終え、調整期に入った中国半導体産業

昨年10月11日、12日の2日間、中国半導体業界協会が主催する「集積回路設計分会2007年度大会」が中国・大連で行われた。同会議で公表されたデータによると、現在、中国には500社近い半導体企業が存在しており、昨年のそれら企業の売上総額は234億元(約3,598億円)。今年も267億元(約4,106億円)に達する見通しだという。2001年以降、中国の半導体業界は急速に規模を拡大し、年平均成長率は50%を上回ってきた。

現在は、6年間近くに及んだ高度成長期を終え、調整期に入ってきている。こうした状況下、主要企業の間には、競争力強化をめざして買収や合併の動きが顕在化してきている。

例えば、多機能携帯電話用チップのメーカーである智多微電子(上海)は、ソフトウェア開発力の強化によるスマートフォン開発のプラットフォーム確保のため、携帯電話やPDAを開発する端末メーカーの恒基偉業電子産品(Hi-tech Wealth)のソフトウェア開発部門を買収。その後、見事にスマートフォン「NX200」の開発に成功した。

また、半導体開発メーカーである珠海炬力集成電路設計は、同業の上海鉅泉科技を買収することで、事業の範囲を急速に上海まで拡大した。同じく半導体開発企業の杭州士蘭微電子は、Blu-ray Discチップの開発力を持つエレクトロニクス企業、ESS(Energy Efficiency System)を買収することで、DVD製品への対応力を獲得した。

経営レベルでの買収や合併までいかずに、設計や製造面で他社との提携を図る企業も多くみられる。日中合弁のIC受託生産メーカーで、世界のトップ10に入る上海華虹NEC電子(以下、華虹NEC)は、上海においてICカードメーカーとCPUに内蔵されるメモリ管理機構であるMCU(Memory Control Unit)のメーカーが次第に製品の出荷量を増やす中、これらの企業と協力し、電気信号によって記憶内容が消去できる組み込み型のEEPROM(Electrically-Eraserble and Programable ROM)やシステムLSIなどの製造工程を積極的に共同開発している。