2007年1月に開催された家電の総合展示会「International CES」における大きなテーマのひとつが、情報家電と家電のネットワーク化だったといえる。展示各社が力を入れていたものが、コンテンツサービスと家電どうしの連携 -- たとえばDVRに蓄えたコンテンツを各部屋のTVで自由に閲覧できるようにする仕組みの提供だ。これまでPCの世界にいたMicrosoftも、Xbox 360やZune、Live Servicesを皮切りに情報家電の世界に深く切り込もうとしている。
だが個人的意見でいえば、こうした家電メーカーやMicrosoftよりも情報家電の世界で成功しているのがAppleだ。Apple Computerから社名を変更したAppleは、それまでのPCの枠を越え、Apple TVなどに見られるように、リビングルームへの進出も果たしている。この戦略を支えるのが、iTunes StoreとiPodによるコンテンツ配信ビジネスでの圧倒的シェアだ。2007年半ばにはiPhoneをリリースを予定しており、スマートフォンの市場も視野に入れつつある。競合他社が情報家電攻略法をさまざまに模索するなか、Appleが一歩レースをリードしていると言っても問題ないだろう。
Appleが1月初旬のMacWorld ExpoでiPhoneリリースを正式発表した際、Ciscoは自身が持つ「iPhone」の商標権を理由にAppleに対して携帯電話での「iPhone」の名前の利用を差し止める裁判を起こしている。最終的に両社は和解して、CiscoはAppleにiPhoneの名称の利用を認めるとともに、ネットワーク分野での相互互換性に向けた取り組みを進めることを発表しているが、その意図はどこにあったのだろうか。
Cisco側では金銭を目的にした要求ではなかったことを認めており、Appleの抱えるDRM技術やコンテンツライブラリへのアクセス権など、今後のCiscoの情報家電の分野での戦いを有利にする駆け引きがあったのではないのかと想像される。CiscoとAppleの間で結ばれた合意内容は詳細が明かされていないため推測の域を出ないが、両社を含めた競合他社どうしが置かれている状況を考えれば、そう考えるのが妥当だろう。