ホンダの新型電気自動車「スーパーワン」が脅威の売れ行きを示している。直近の販売状況をホンダに聞いたところ、ディーラーの試乗車を含め1.4万台の受注が入っているとのこと。試乗して人気の理由を探った。
パープルもイエローもあるぞ! ホンダ「スーパーワン」の写真を一気に見る
スーパーワンは新発想のEV
ホンダが小型電気自動車(EV)「スーパーワン」(Super-ONE、5ナンバー車)を発売したのは2026年5月22日。月末までに1,736台を売って、日本自動車販売協会連合会(自販連)がまとめた2026年5月の乗用車ブランド通称名別順位で31位となった。翌6月は1,061台を売って42位であり、順位は下げたが50位以内に残っている。
これは、日産自動車のEV「リーフ」(3ナンバー車)の40位に近い成績だ。2010年の登場から16年の歴史を経て、現在は3世代目となっているリーフに対し、誕生間もないスーパーワンへの関心の高さが際立つ。
ホンダ広報によれば、ボディカラーは「プラチナホワイト・パール」が約40%、「ルミナス・グレー」が約35%と人気になっている。購入者はほとんどがガソリン車からの乗り換えで、新規購入が5% 乗り換えが55% 増車が40%という割合になっているそうだ。
スーパーワンは軽自動車の乗用EVとして先に発売となった「N-ONE e:」を登録車の車格とした新発想のEVだ。
エンジン車であれば、軽自動車を基に登録車にする例は限られる。かつてのスズキ「ワゴンR」「ワゴンRワイド」あるいは「ジムニー」「ジムニーシエラ」が思い浮かぶ程度だ。EVではスーパーワンが初となる。
客室を含むいわゆる車体骨格部分は、軽EVのN-ONE e:と同じだ。一方でボディサイズは、全長/全幅/全高ともスーパーワンのほうが若干大きい。
寸法拡大に最も大きく影響しているのは、「ブリスターフェンダー」と呼ばれる前後タイヤを覆うフェンダー部分の拡幅だろう。その造形に合わせて、前後バンパーにもなだらかな膨らみを持たせ、全体の姿を調和させている。全高が高くなっているのは、屋根に取り付けられたシャークフィンアンテナによるのだろう。
スーパーワンの外観は、軽自動車を単に拡大しただけの安易な様子ではなく、全体に調和がとれ、低重心な印象をもたらし、堂々とした雰囲気さえある。事前に写真で見ていたが、実物は上級車の趣さえあった。
試乗車のボディカラーは有料色の2トーン「ルミナス・グレー&ブラック」。色合いの質が高く、スーパーワンをいっそう上質な1台に感じさせる。「もし自分がスーパーワンを買うとしたらこの色だ」と有償色としての価値を納得できる
室内はダークグレーの1色のみ。前席はスーパーワン専用のスポーツシートになる。グレーを主体としながらブルーとホワイトの彩りが座席に与えられ、室内の雰囲気を新たにしている。
意外? 当然? 走りは上質!
走りはどうだろう。
軽EVのN-ONE e:で、EVであるが故の快適さや俊敏さ、取り扱いやすさなどをすでに実感しているが、スーパーワンにはさらに一段階上の仕立てのよさがあり、上級車種の趣を味わうことができた。
車体寸法の拡大は紹介したが、車両重量もベース車両に比べ60kgほど重くなっている。人間1人分ほどの重量増により、走り味に上質さが増している。
さらに、タイヤ寸法が14インチから15インチに拡大しており、より偏平になるだけでなく、タイヤ幅も広がっている。タイヤの接地面積が増し、左右タイヤ間の距離=トレッドが広がっていて、ハンドルを切った際の安定感も向上している。
重量増やタイヤ寸法の変更、またそれによるトレッドの拡幅などを踏まえ、サスペンションの仕立てもスーパーワン用に熟成されているようだ。
室内を見ると、そもそもN-ONE e:の車体骨格なのだから、空間としては軽自動車レベルなのだが、前を見て走らせている分にはそれを忘れてしまう。走りも乗り心地も、あたかも大柄な上級車に乗っているかのように感じるのである。
ちなみに、運転しているとき、車体の外側へ張り出したブリスターフェンダーの幅が気になったり、車両感覚をつかみにくかったりといった不安はなかった。駐車する際も、軽自動車を扱うように手の内にある感覚だ。
人気の理由は「価格」だけではない
スーパーワンで注目すべきもうひとつのポイントは、N-ONE e:の1.5倍近い高出力なモーター性能だ。N-ONE e:と同じモーターを使いながら、軽自動車の自主規制を超えた性能向上を図っている。エンジン車では排気量を拡大するなど追加加工が必要になるが、EVは不要だ。それが証拠に、最大トルクは両車同じ値である。
この最高出力を味わいたいなら、ハンドル右側のスポークにある「ブーストモード」の起動ボタンを押してみよう。これで70kWの最高出力による加速を味わえる。
ブーストモードを起動すると、あたかもエンジン車であるかのような音が聞こえてくる。演出のために作られた人工的な音だが、大排気量のV型8気筒エンジンのような腹に響く低音であった。また加速の仕方も、変速機を持つエンジン車のように段付きが演出されている。
いずれもそれほど違和感を覚えさせない程度に抑えられているが、こうした演出が、EVでは電気制御によって可能になる。必要かどうかは別だが、人によっては、あえてスーパーワンを選ぶ理由のひとつになるかもしれない。
ブーストモードの疑似エンジン音を聞いて、思ったことがある。
ホンダはF1の活躍で有名だ。ならば、あたかもアメリカ車のようなV8の重低音ではなく、エンジンが回り切ったような、より音程の高い高周波音の方が、ホンダらしいのではないだろうか。好みの話ではあるのだが。
こうした演出は、当初は面白がれるかもしれない。しかし何年も乗り続けるうちに、EVらしく静かで伸びやかな加速を味わいたいと気持ちが変わるかもしれない。そのときは、擬音や変速ショックを消せる選択肢があってもいいのではないだろうか。
スーパーワンの価格は339.02万円。手厚い補助金制度を活用すれば、地域によっては実質100万円台で購入することも可能だ。人気の理由が価格面にあることも、間違いないだろう。
ただ、乗ってみて、スーパーワンの出来のよさには感心した。単に軽EVの拡大版ではない。登録車としての魅力を満たした仕上げになっている。発売早々、好調に販売台数を伸ばしている現状にも、試乗してみて納得できた。
































































