ホンダ「シビック」のハイブリッド車(e:HEV)にスポーティーな「RS」が登場する。ホンダがハイブリッド車でスポーツ走行を追求する理由は? 「e:HEV RS」は実際のところ、走って楽しいクルマなのか! 実物に乗って確かめてきた。
ホンダ「シビック」(現行型)の写真を一気に見る
シビックのハイブリッドは意外に…
2021年に11代目としてデビューした現行型「シビック」は、ガソリン(MT、CVT)、ハイブリッド(e:HEV)、タイプR、ガソリンRS(6MT)とラインアップを順次拡大してきた。2025年度の販売台数は1.6万台を記録。その内訳を見ると、タイプRとRSモデルが大半を占めており、スポーツイメージが先行している様子が読み取れる。
一方で、ハイブリッドの販売はわずか0.3万台にとどまる。ホンダが主力と考えていたe:HEVは、思いのほか販売が伸びていなかったのだ。
市場の声を調査してみると、運転が楽しいRSモデルの足回りやハンドリング、つまり、シビックの「走り」が評価されている一方で、スポーティーさを重視したいが家族で乗るにはMTではなくCVT、また次の候補としてはハイブリッド、という声が多くあがっているそうだ。
となるとRS×e:HEV、つまり、誰もが走りを楽しめる「意のままに操れるハイブリッド」という“いいとこ取り”のモデルを開発すればいいのでは……ということで登場したのが、今回の「e:HEV RS」というわけだ。
ハイブリッド車でMT車の運転を楽しめる?
ハイブリッドの本格スポーツモデルを目指すべく、シビックの「e:HEV RS」にホンダが導入したのが「S+シフト」という技術だ。すでに「プレリュード」で採用実績があり、今回で2例目となる。
従来の制御を行う標準モデルはリニアシフトによるスムーズな加減速駆動を特徴とするが、「S+シフト」では加速時にステップ変速制御、減速時にレブマッチダウンを行う。エンジン回転数は上記の制御に同調するとともに、針式メーターが追針して振れ、さらに変速ショックが体感できるようになっている。
コーナー進入時には、ワインディング脱出に向けて最適な仮想ギア段へダウンシフトする「アーリーダウン制御」を行うほか、その仮想段は旋回中にホールドされて、コーナー脱出時の加速意思に遅れることなく応答できるような「スポーツアダプティブ制御」も入る。
「スポーツ」「ノーマル」など4段階ある走行モードに対する「S+シフト」の移行に関しては、プレリュードがそれぞれのモードごとに遷移していたのに対して、シビックではどのモードからでもスイッチを一度押すだけで「スポーツ & S+シフト」モードに一発変換できるようになっている。
さらに、そのスポーティーさを強調するエンジンサウンドについては、低回転域では迫力感、中回転数域では軽快感、高回転数域では吹けきるような澄んだ音色を味わえるようチューニングを実施。前後に搭載するマルチスピーカーからのアクティブサウンドコントロールで補完(プレリュードより発生領域を拡大した)することで、気持ちいい加速感を表現したという。
エクステリアでは前後の赤いRSバッジのほか、アルミホイールやシャークフィンアンテナなど各部にブラックパーツを採用。搭載する2.0L直列4気筒エンジン+モーターのスペックは未公表だが、プレリュードと同等であるとすれば、それぞれ最高出力141PS/最大トルク182Nm、184PS/315Nmを発生するはずだ。
伊豆のクローズドコースで「e:HEV RS」を体感!
伊豆にあるクローズドコースを使用した試乗会では、標準モデルとの走り比べが体験できた。もちろん、これまでのクルマで走っても悪いわけではないのだが、「e:HEV RS」に乗ってしまうと、その爽快感やクルマとの一体感が大きく進化していることに気がつく。
迷わずS+ボタンを押してストレートを加速していくと、まるでDCT搭載モデルのようなキレのよいシフトアップとともに、グングン車速を伸ばしていく。その先のアップダウンにあるコーナーでは、ゆったり進入すると5速→4速のようなシフトダウンを行うが、急減速しながら入っていくと3速まであっという間にシフトダウンしてくれる。その時の「ブォン、ブォン」という軽いブリッピングを伴った音もその気にさせるし、個々の変速が一瞬で終わるスピード感が走りのリズムをつかみやすくしてくれる。
ステアリングホイールはプレリュードと同じ下側が平らなDシェイプで、トーションバーレート(ねじれにくさ)は60%もアップ。大小のコーナーをクリアしていくのだが、どおりでラインが正確に狙えるわけだ。
「e:HEV RS」ではフロントのスプリングとスタビライザーの剛性を高めたことで、ロール剛性が11%、サスペンションダンパーの応答性が107%アップ。接地感や姿勢の安定感がさらに良くなっている。
タイヤが従来のグッドイヤー「イーグルF1 アシンメトリック2」から同「アシンメトリック6」に進化している点も見逃せない。ドライでのブレーキ性能だけでなく、ロードノイズや転がり抵抗の性能アップにつながっている。
目の前のメーターはS+時には赤い枠になるなど演出も上手になされていて気分がアガる。2つの丸型メーターの左側は、プレリュードではエンジン回転数を表示していたが、シビックでは数字で100までのパワーパーセンテージ表示になっているのはちょっと残念かも、だ。
2週目ではパドルを積極的に使用。こちら、樹脂製から金属製に換装されていて、手に伝わるカチリとした操作感が気持ちいい。コーナー手前では、かつて鈴鹿のF1で観たセナの130Rからシケインへのツッコミのように、パドルで一気にシフトダウン(セナはマニュアルでやっていたのだが、その速さたるや……)。そんな楽しさを味わえたのも、「e:HEV RS」ならではなのだ。
タイプR開発責任者「かっきー」も参画
駐車場には標準のカラーリングのもの以外に、ホンダファンなら誰でも「懐かしい!」と呟いてしまうJACCSカラーをまとったe:HEV RSが置かれていた。
「東京オートサロン2026」ですでにお目見えしていた同車は、1980~90年代のJTC(全日本ツーリングカー選手権)グループAに参戦していたEG6型シビックSiR(1.6L DOHC VTECエンジン搭載で今でも人気モデル)のカラーリングを再現したもの。当時ライバルだったトヨタ自動車「カローラ」勢を抑えて大暴れして連勝街道を爆進した、伝説のカラーなのである。リアウインドー右には「かきぬま」、左には「かっきー」の名前入りシールが貼られていた。そう、タイプRの開発責任者だった柿沼秀樹LPLも、今度の開発に参加していたのだ。
「今回フォーカスしたのは、タイプRのようなトップレベルの速さの追求ではなく、等身大で購入いただいているお客様が感じ取れる、日常でのクルマとの一体感や対話性というものです。ハイブリッド車が出て時間も経っていますが、僕自身、心に響くような乗り物はあまり体験したことがなかったのです。そこを追求すると、みんな3ペダルになってしまう。それが厳しい時代になってくると、やはりハイブリッド技術をもっと大切にして、そこにホンダが持っている走りの喜びをどれだけ昇華させるか。それが今一番大事なことだと思って創ったのがコレなんです」。柿沼LPLは続ける。
「プレリュードは2ドアのお兄さんで、値段もそこそこなので、選ぶ人が限られてしまう。そのすばらしい技術を、しっかりとハイブリッドと組み合わせて、もっと世に広めていく。多くの人に知っていただく。シビックがその役目を背負うべきだろうと思っているんです」
「シビックe:HEV RS」は2026年6月に発売予定だ。












































