ボルボの新たなフラッグシップモデル「EX90」で東京~日光の往復に挑戦した。3トンを超える大型電気自動車(EV)のEX90は、いろは坂をすんなり登っていけるのか? 長距離を走っても快適なのか? 静かで速いのか! じっくり乗った印象をレポートしよう。
EX90はカメラ、レーダー、LIDAR(ライダー)といった多数の最新センサーを搭載する「最も安全性が高いボルボ車」として、2022年に本国でデビュー。米国での生産開始後、中国でも生産体制を整えた。2026年にはビッグマイナーチェンジを実施。ソフトウェアを全面刷新し、800Vアーキテクチャを搭載した。2026年7月8日には日本でも発売となった。
今回はEX90で東京・青山を出発し、東北道で日光へ向かい、いろは坂を制覇したのち、関越道で都内に戻ってくるという400km超えのロングドライブを敢行し、クルマの出来栄えをじっくりと確認してきた。
「静かで速い」のレベルが違う チャージもスムーズ
試乗したのは上級版の「EX90 ウルトラツインモーター」(1,399万円)。全長5,035mm、全幅1,965mm、全高1,740mm、ホイールベース2,985mmはさすがに巨体だが、空力性能と静粛性を向上させたフラッシュサーフェスのエアロダイナミクスボディはボルボらしく洗練された印象で、フラッグシップらしい存在感を発揮している。前265/40、後295/35の22インチタイヤも迫力満点だ。
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「EX90」のグレードは「EX90 Plus Twin Motor」(1,199万円)、「EX90 Ultra Twin Motor」(1,349万円)、「EX90 Ultra Twin Motor Performance」(1,399万円)の3種類
おなじみのトールハンマーヘッドライトは1.3メガピクセルの新型ハイデフィニション・ピクセルLEDを採用。ロービームからハイビームまで、配光特性を最適化する仕様になった。外から見るとトールハンマーが中央から上下に分かれ、その間からビームライトがニョッキリと顔を出してくるのだ。
試乗モデルの3列シートは明るいベージュのファインナッパレザー仕様。物理スイッチを最小限に留めたシンプルで上質なマテリアルのインテリアは、スカンジナビアンデザインの権化といった感じだ。後席になるほど座面と視点が高くなるセッティングで、広大なパノラマガラスサンルーフの効果もあり、閉塞感が全くないのがいい。
ユーザーエクスペリエンスとしては、9インチのドライバーディスプレイと14.5インチセンターディスプレイ、大型ヘッドアップディスプレイが備わり、申し分のない組み合わせだ。
ステアリング右にあるコラム式シフトレバーを「D」に入れ、早速スタート。街中では回生モードを「高」に入れておけば、アクセルペダルのオン・オフだけで停止まで持っていけて、ストップ&ゴーが多い都市部でも楽々と走ることができる。
首都高や東北道に入ってしまえば、コラムシフトをもう一段下げるだけで新型「パイロットアシスト」がすぐに作動。遅いトラックなどに近づくとわずかに幅を開けて追い越すなど、行き届いたハンドル操作を自動で(静電式なので、手を触れておくだけでいい)やってくれる。
中禅寺湖に向かういろは坂では、再びワンペダルモードで登ってみた。680PSのツインモーターによる強力かつスムーズなパワー感と、ワンペダルによる軽やかな車速コントロールは、その巨体を感じさせることなくコーナーを次々とクリア。湖畔にある休憩ポイントの「ZEN RESORT NIKKO」ではおいしい赤城牛のステーキをいただいて、運転する人間の方もパワーアップした。
撮影のため茶ノ木平へのワインディングや金精峠を通過し、帰りは関越道経由のルートを選択。そのまま直行でも帰れそうだったが、赤城高原SAには150kW級の高速充電器があるというのでチャージの速さを試してみた。
ここまで265kmを走り、バッテリーは残り47%に。航続距離は220kmとの表示だった。CHAdeMOの急速充電に接続すると105kW~107kW程度で充電が進み、20分で77%まで回復。残りの航続距離は370kmまで伸びた。
そのまま高速で東京・青山にある「ボルボ・スタジオ」まで走り続け、到着時点で残り50%。チャージせずに直帰しても残り20%で帰って来れたことになる。ちなみに、全走行距離は420kmだった。
走行全般に関しては、静かで速くてEVらしくて文句なし。いろは坂では静かすぎて、ワインディング走行らしいリズム感があまり感じられなかったのは、筆者が古い人間であるせいか。
あと、buluetoothで接続する「CarPlay」の反応がイマイチで、せっかくのBowers&Willkins アビーロードスタジオモードでのお気に入り曲の視聴にちょっとストレスがあった点は報告しておこう。もっとも、このクルマのオーナーになればgoogle機能が内装されているので、マップもオーディオも自在に使いこなせるはずではあるのだが。
技術面の進化をおさらい
最後に、技術面の進化をおさらいしておこう。
新型EX90で最大のトピックは、従来型が搭載していた400Vシステムから最新の800V高電圧システムへとプラットフォームを刷新しているところだ。
高電圧システムを搭載するメリットは、発熱を抑えつつ高出力を受け入れることができる急速充電を使えること。たった10分で航続距離250km分の電力を充電することが可能になった。バッテリー残量10%の状態から80%まで戻す際の充電時間は、わずか22分だ。高電圧化により配線の直径を細くすることができるため、重量を削減し、電費性能と駆動効率を引き上げることにも成功している。
2つ目のトピックは「HuginCore」という高性能コンピューターシステムを搭載したこと。「NVIDIA」のインテリジェントカー用コアコンピューターチップ「DRIVE AGX Orin」は、毎秒254兆回(254TOP)という強力な演算能力を有する。驚くほど向上したAI機能の処理能力で、アクティブセーフティや車両センサー、バッテリーマネージメントなどの機能を管理できるようになった。
「Qalcomm Technologies」製のチップは、車載ディスプレイやヘッドアップディスプレイなどインフォテインメント系の反応速度や視認性を飛躍的に向上させた。
今後のOTA(無線によるソフトウェアアップデート)にもスムーズに対応可能。新型EX90は最新世代のソフトウェア・ディファインド・ヴィークル(SDV)化を果たしたことになる。
ちなみに「Hugin」(フギン)という名称は、北欧神話に登場する知識と思考を象徴する鳥「フギン」にちなんで名付けたという。
3つ目のトピックは「LiDAR」の廃止。従来型がルーフ先端部分に搭載していたレーザーセンサーのLiDARは、完全自動運転を想定したものだった。今回はそれを廃止し、超音波センサー、ミリ波レーダー、カメラによるADASシステムに変更。ちょっとプロトタイプのようにも見えていた(個人の意見です)LiDARの出っ張りが消えたことで、エクステリアは見違えるほどすっきりとした。安全性能も強化できたそうだ。
4つ目は強力なパワートレインの採用。ハイパワーグレードとなる「ツインモーター・パフォーマンス」(AWD)はフロントに参考出力220kW/最大トルク390Nm、リアに280kW/480Nm の2モーターを搭載。合計で500kW(約680PS)/870Nmを発生する。0-100km/h加速はスーパーカー並みの4.2秒。最高速度は180km/hだ。
標準の「ツインモーター」(AWD)は前130kW/265Nm、後205kW/405Nmの2モーターで330kW(449PS)/670Nmを発生。0-100km/h加速は5.5秒、最高速度は180km/hとなる。
どちらも106kWhの大容量バッテリーにより、航続距離650kmを実現している。
このほか赤外線カメラを使用してドライバーの状態を監視する「ドライバーアンダスタンディング」や、車内安全センサーを使用して置き去りを防止する「オキュパントセンシング」など安全技術も満載。とてもすべては書き切れないほどの充実ぶりだ。
EX90のライバルは?
ボルボは来年で創業100周年。日本市場では全体の4台に1台がEVかPHEVという販売構成で、プレミアムEV市場ではテスラの後を追う(かなり差はあるが)という状況だ。
フラッグシップ級のEVという点で、EX90のライバルとなるのはテスラ「モデルX」、ドイツ御三家のメルセデス・ベンツ「EQS SUV」、BMW「iX」、アウディ「Q8 e-tron」、また意外なところで韓国勢のキア「EV9」、ヒョンデ「アイオニック9」などが挙げられる。スマートで知的、サステナブルをアピールするスカンジナビアン・ラグジュアリーデザインのEX90は、そこにどれくらいの勢いで割って入っていくのか。興味のあるところだ。


















































