2026年6月18日に発売となった日産自動車の新型「キックス」は、SNSの反応を見ているとおおむね好評な様子。気になるのは売れるかどうかだが、今回はライバルと目されるクルマと比較してみる。
新型「キックス」の写真を一気に見る
ライバルの後塵を拝していた先代モデル
新型に切り替わった日産キックスが属するのは、「コンパクトSUV」と呼ばれるカテゴリー。今の日本で人気上昇中の車種だ。
クルマを頻繁に運転する人なら、SUVを見ることが増えたと実感しているだろう。実際の登録台数でも、ジャンル別で最も多いのはSUVとなっており、その半分以上を占めるのがキックスが属するコンパクトSUVになっているというわけだ。
このクラスにはトヨタ自動車「ヤリスクロス」、ホンダ「ヴェゼル」など、強力なライバルがそろっている。これら2台と比べると、キックスのこれまでの実績は振るわなかった。
昨年1年間の登録台数を見ると、ヤリスクロスはヤリスシリーズで計上されているのでわからないが、ヴェゼルが約6.7万台を記録したのに対して、キックスは1万台に満たなかった。
コンパクトSUVのカテゴリーには、本格的なクロスカントリー性能を持つスズキ「ジムニーシエラ/ノマド」、ハイブリッド車や4WDを持たないホンダ「WR-V」などもあるが、昨年に限ればキックスはこれらの車種にも及ばなかった。
では、新型キックスはこの状況から挽回できるだろうか。実車を見た印象からいえば、ライバルを上回る部分がいくつかあって、かなり健闘するのではないかと思っている。
新型キックスについてはデザインの記事をすでに公開しており、そこでも書いたのだが、ボディサイズはモデルチェンジで拡大し、ヴェゼルと同等になった。よって車内の広さもヴェゼルに匹敵しており、身長170cmの筆者が後席で楽に過ごせる。ヤリスクロスは先代キックスよりさらに小柄であり、スペースで一歩譲るのはしかたがない。
スタイリングについては、デビューしたてということもあって、キックスには新しさを感じる。アメフトのヘルメットをモチーフにしたフロントマスクなど、SUVに求められる力強さのアピールはライバルには求め得ないものであり、これをもとに新型キックスを選ぶという人がいても不思議ではない。
前後モーターの最大トルクに注目
新型キックスのパワーユニットは、エンジンで発電し、その電気でモーターを回して走るハイブリッドシステム「e-POWER」の第3世代。先代の1.2リッターに代えて、発電専用として開発された1.4リッター直列3気筒エンジンを投入することで、弱点とされた高速域での燃費をレベルアップさせたという。
ヤリスクロスとヴェゼルはガソリン車も選べるが、ここでは条件をそろえるため、ハイブリッド車で比較してみる。システムは3車3様。エンジンはヤリスクロスが1.5リッター3気筒、ヴェゼルは同じ1.5リッターながら4気筒を使っている。
カタログ燃費はどうか。ヤリスクロスにはリッター30kmを超える車種があり、ヴェゼルの26.0km、新型キックスの25.7kmに差をつけている。とはいえ、先代キックスは23.0kmだったので、新型の燃費はヴェゼルに並んだといえる。
ただしトヨタのハイブリッドシステムは、市街地で急加速するときにエンジンの音が気になることがある。
フロントモーターの最大トルクで比べると、新型キックスは315Nm、ヴェゼルは253Nm、ヤリスクロスは141Nmとなっている。
新型キックスが積むe-POWERはモーターだけで走り、ホンダのハイブリッドシステムも市街地ではそれに近いマナーになる。なので十分なトルクを確保しているのだろう。対するトヨタのハイブリッドシステムは、モーターのトルクが限られているので、急加速時にはエンジンを高回転まで回すこともある。
加えて、第3世代e-POWERのもうひとつの技術的トピックである「5-in-1」、つまりモーター、インバーター、減速機、発電機、増速機の5つの部品をモジュール化したことも、スムーズさに貢献しているはずだ。
ハイブリッドのコンパクトSUVを静かで滑らかに走らせたいのなら、新型キックスはふさわしい選択になるだろう。
3台ともに設定がある4WDのメカニズムも違う。新型キックスとヤリスクロスが後輪をモーターで駆動する電動4WDなのに対し、ヴェゼルはドライブシャフトで回すメカニカル4WDだ。加えてキックスは、4輪を電子制御する「e-4ORCE」を採用している。
新型キックスは電動4WDながら、リアモーターの最大トルクは140Nmで、ヤリスクロスの52Nmの3倍近くの数値だ。e-4ORCEはモーターとブレーキを統合制御することで、加減速の前後方向の揺れを抑えつつ、気持ち良いコーナリングを実現する機構となる。電動車の経験が豊富な日産ならではのメカニズムといえる。
このe-4ORCEについては、「アリア」や「エクストレイル」で筆者も効果を体感済み。コスト面を考えると、コンパクトSUVに同システムを投入したのは驚きだった。それだけ、日産が新型キックスに力を入れているということなのだろう。
高剛性プラットフォームが長距離でいきる
走りでもうひとつ、新型キックスに期待しているのは、プラットフォームが変わったことだ。先代が新興国向けを想定した「V」プラットフォームを使っていたのに対し、新型は日欧で展開すべくルノーと共同開発した「CMF-B」を使う。付け加えれば、先代はタイで作られる輸入車だったのに対し、新型は日本製となる。
現行「ノート」やルノーの「ルーテシア/キャプチャー」などが使うCMF-Bプラットフォームは、同クラスの日本車が使うそれよりも骨太な感触で、直進安定性の高さとフラットな乗り心地が秀でていると考えている。
それを実感したのが2年前の春、能登半島地震の被災地にカーシェアリングのノートで金沢から向かったときだ。道路があちこちで波打ち、ひび割れるという状況だったのに、疲れずに往復できた。
カーシェアリングなので車種の選択肢はいくつかあったけれど、過酷なルートであることを想定してノートを選んだ。その甲斐があったと思ったものだ。
そんな強靭さを備えたプラットフォームだからこそ、力強いフロントマスクを持つSUVの新型キックスに合っているし、第3世代のe-POWER、電子制御4WDのe-4ORCEをいかせる車台になっていると期待できる。
こうした内容を備えた新型キックスは、全車ハイブリッドながらエントリー価格は300万円を切る。
モデルチェンジ直前のキックスは、ベースモデルでも300万円を上回っていた。新開発のハイブリッドシステム、高剛性プラットフォーム、凝った4WDシステムを搭載し、日本で作られることを考えれば、かなり頑張ったプライスといえるのではないだろうか。
デザインが気に入れば「買い」だと思うし、ロングドライブの機会が多い人にとっては、プラットフォームや4WDシステムのアドバンテージがいきるはずだ。















