日産自動車の新型「キックス」は、初代モデルと比べてデザインがガラリと変わった。なぜ変えたのか。どう変えたのか。変わった結果、カッコよくなっているのか? 詳細に見ていこう。
新型「キックス」の写真を一気に見る
先代は日本デビューまで時間がかかったが…
新型キックスの実車を見て感じたのは、今風になったということだった。
それもそのはず、初代キックスは日本では2020年発売だったものの、ベースとなるモデルは4年前の2016年にブラジルで発表されていたからだ。
初代キックスが登場するまで、日産のコンパクトSUVは「ジューク」が担当していたが、欧州で大人気だったこともあり、モデルチェンジとともに欧州専用車にシフト。日本には、北米や中国でも展開していたグローバルモデルのキックスを導入することにしたのだ。 しかし、海外向けには設定のなかった日産独自のハイブリッドシステム「e-POWER」の搭載など、日本市場への最適化に時間がかかり、デビューが4年後になってしまった。
おまけに、同じ2020年にはトヨタ自動車から「ヤリスクロス」が登場。翌年にはホンダ「ヴェゼル」がフルモデルチェンジした。競合が強力だったのだ。
ウエッジシェイプを強調し、各部にエッジを効かせた先代キックスのスタイリングや、イメージカラーのオレンジを取り入れたインテリアは、ひと世代前のトレンドと言えるものであり、ライバルの相次ぐ登場もあって、新鮮味が薄れてしまった。
トレンドを押さえつつ日産らしさも盛り込んだ
今回の新型も、米国では2024年3月にお披露目されており、出たてというわけではない。しかし、上記のライバルたちはまだモデルチェンジしていないので、キックスのフレッシュさが目立つ。
実車を見ると、主張のあるフロント/リアまわりに対して、ボディサイドはすっきりしていてコントラストが際立っている。これは最近の欧州車のトレンドでもある。世界のカーデザインをひととおり見ている人なら、この点でも今っぽいと感じるのではないだろうか。
新型キックスの発表会でプレゼンテーションを行ったチーフプロダクトスペシャリストの田中聡氏は、デザインをポイントのひとつに挙げた。エクステリアはタフ&アジャイル、つまり力強くダイナミックでありながら俊敏で軽快な姿を目指したとのことだ。
続いて登壇したプログラムデザインダイレクターの楠鉄平氏は、大胆なフロントマスクについて、アメリカンフットボールのヘルメットをモチーフにしたと説明した。
実車を観察すると、グリル内に日産ブランドが継承してきた「Vモーション」の面影は残るものの、灯火類は垂直に配置している。強くタフなデザインにしたいという想いが、ストレートに形になっていると感じた。
サイドでは四隅に張り出したタイヤ、マッシブなフェンダー、ブラックアウトした下回りなどにより、強固で先進的な姿を目指したとのこと。線ではなく面で表現しているところも、最近のデザイントレンドに沿っている。
リアはコンビランプとバンパーのブラック部分で「口(くち)」の字を描いて、プロテクト感を表現したことが特徴だ。ランプ形状をフロントとリンクさせて、車体全体でのまとまりを持たせていることも評価できる。
サイドからリアにかけての造形は、アルファロメオの「ジュニア」に似ているとも思った。ただし、前にも書いたように、新型キックスは2024年3月に米国で公開されている。ジュニアが発表されたのは翌月なので、同時並行で進んでいたことになる。
見方を変えれば、今のデザイントレンドを取り込んでいると言えるし、サイドウインドー上端とサイドシルのシルバーのモールは、日本刀をモチーフとしたという「フェアレディZ」のそれに似ているなど、日産車らしさもしっかり込めていると感じた。
ボディサイズは全長4,365mm、全幅1,800mm、全高1,610~1,615mm。先代と比べると、高さはほとんど同じだが、長さ方向は75mm、幅方向は40mm拡大された。ヴェゼルとほぼ同じボリュームを得たことで、伸びやかなスタイリングが実現できたとも言えそうだ。
グレードは「Xシンプルパッケージ」「X」「X+」「G」の4つで、すべてのグレードで前輪駆動と電動4WDの「e-4ORCE」(イーフォース)が選べる。
Gグレードのホイールタイヤは19インチ(他は17インチ)。このクラスのSUVでは、かなり径が大きい。フェンダーアーチやボディ下部は、艶のあるグロスブラックになる。
対するX系グレードは、サイドシルやバンパー下部にスニーカーのソールパターンを刻み込んでいる。Gより格下というイメージをなくし、むしろアクティブな方向性で差別化を図った、うまい仕立てだ。
ボディカラーはブラックルーフの2トーンが4色で、単色が5色。イメージカラーの「レゾナンスブルー」は国内向けでは初の設定だそうだ。
このクラスでは珍しい電動リアゲートを採用
インテリアについて田中氏は「コンフィデンス&コンフォート」、つまりモダンで開放的な心地良い空間がテーマだと説明した。そしてデザインを担当した楠氏は、水平基調による安心感と、ファブリックを用いたことによる心地よさを紹介した。
最近の日産車は、メーターとセンターのディスプレイをつなげた横長のインターフェイスが多い。キックスも例外ではなく、12.3インチのメーターとセンターディスプレイをつなげることで、先進性と視認性を両立している。
グレードごとの違いでは、XシンプルパッケージとXでは、インパネのアクセントカラーはシルバー、シートはファブリックとしたのに対して、X+とGではインパネのアクセントはゴールドになり、シートは合成皮革としてある。
前者はスポーティーで都会的な雰囲気、後者は力強さと洗練された質感を併せ持つことにこだわったそうだ。
気になったのはセンターコンソールで、カップホルダーやスマートフォンの非接触充電、アームレストなどをうまく収めた代わりに、ボタン式のドライブセレクターが奥のほうに配置されている。人によっては、実際に運転したときに遠いと感じるかもしれない。
新型のホイールベースは2,655mmで、これまでより35mm伸びた。後席はこの寸法をいかして、コンパクトSUVでナンバーワンの居住性を実現したとのこと。さらに感心したのは荷室で、開口部は広く、容量は後席を立てた状態でも476リッター(前輪駆動)と、先代を50リッター以上も上回るうえに、Gグレードでは電動リアゲートまである。
SNSの書き込みを見ると、新型のデザインは個性的なフロントマスクを含めて、好意的な意見が多い。これだけSUVが多くなったからこそ、力強くて頑丈そうなデザインが求められているのかもしれないし、「アメフト顔」の新型キックスは、そのニーズに応えているような気がした。






















