―― そういえば、新FROGMANを開発するにあたって、ここにいらっしゃる5人のみなさんは、潜水士の資格を取得されたそうですね。それはどういう流れだったのでしょうか。

齊藤氏「カッコよく言えば、水難救助隊の話をしっかり理解しなきゃダメだろう……というのがありました。私と大村はダイビングのライセンスを持っていたので、だいたいの想像はつきましたが、実際にわからないメンバーも多かったんです。牛山なんか特にそうですけど、自分の知らない世界のモノを作るには体験しないと気が済まない(笑)」

牛山氏「そこで山崎とダイビングのライセンスを取りに行ったのですが、レジャーダイビングの資格では、製品の試作機を身に付けてテストしたりできないんですね。なぜなら『業務』だから」

齊藤氏「業務として潜るには、ダイビングの資格に加えて潜水士の資格も必要ということがわかって、みんなで取りに行ったんですね。筆記テストだけで実技がないことは大きかったのですが、きちんと勉強すれば仕事でダイビングしている人の世界をしっかり理解できそうだし、知識として持っていたら必ず役に立つだろうと。

ただ、潜水士の資格があれば『業務』で潜れるかというと、結論としてはダメなんです。カシオ計算機が会社として、潜水士を雇用できる体制を構築している必要があります。例えば、装備品の管理や、半年に1回の健康管理といったいろいろな仕組みなんですが、現状では整っていません。ですので、我々が業務として潜ることはないのです」

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「アイサーチ・ジャパン」(国際イルカ・クジラ教育リサーチセンター)の活動をサポートする、通称「イルクジ」モデルの新FROGMANリミテッド

―― なるほど~、そういう背景があったのですね。実際に潜水士の資格を取られて、水難救助隊との会話に変化はありましたか?

牛山氏「潜水士の勉強をするまでは、『それってこういうことですか?』『いえ、それはこういうことです』『ああ、そういうことですか』という具合に、会話の行き来が多かったんですね。資格を取ったあとは、たいていの会話が一往復で済むようになりました。これは我々に知識が付いたからですね」

齊藤氏「先ほど『急浮上アラーム』の話が出ましたが、『このスピードで浮上してはいけない』ということが決まっているんですね。そういったルールと論理に即して、ソフトウェアを開発できるようになったのは本当に大きい。

潜水士は、仕事でダイビングする人に必要な資格なので、それこそいろいろな潜り方があるわけです。水難救助隊もそうですし、水中の工事や探索など、『こういう人には使える機能も、別の人には使えない』と、分類できるようになりました。水中に潜るということに対して、『新しいFROGMANがどう活用されるのか』という考え方で開発することができたので、勉強になったというか、取っておいて良かった資格です」