―― それで完成したのが、新FROGMAN。

牛山氏「水難救助隊のみなさんから3回くらいお話を聞いた段階で、だいたい完成形の姿は描けていました」

齊藤氏「だんだんと、センサーはどうにかなるかもしれない、こんな感じのムーブメントになりそう、時計のケースサイズにも収まりそうと、リアルになっていくんですね」

牛山氏「そしていよいよ、要望に応えられるようなユーザーインタフェースや、画面表示を考え始めるわけです。齊藤と大村がダイバーなので、話を聞きながら、三宅がユーザーインタフェースを設計していきました。私も山崎を誘ってスクーバダイビングのライセンスを取りに行きましたね(笑)」

―― 新FROGMANのユーザーインタフェースも、水難救助隊とのやりとりで完成させていったんですか?

牛山氏「最初の候補は、齊藤や大村のダイバーとしての意見をいったんカタチにして、FROGMANを進化させるように三宅が叩き台を作りました」

カシオ計算機 時計事業部 モジュール開発部 三宅毅氏

三宅氏「この段階で、かなり具体的にFROGMANのデザインで表示を作りました。

ダイバーが水中で一番気を付なくちゃいけないのは、潜水病ですとか、身体のことだと思うのです。時計に関してストレスを感じてはいけないので、操作は少なく、難しく考えずに済む、表示がわかりやすい……といったところを目指しました。

すべて自動化したくて、ユーザーが行うのは左下のボタンを長押しするだけっていう操作にしています(編注:ダイビングモード)。すると水深を測りだすので、あとは何も操作しないで潜って、浮上してくると記録が取れています。

内部的には自動化しているので、ソフトウェアは大村と一緒に作り込んでいったのですが、中身はかなり複雑になりました。いろいろな状況を想定してソフトウェアを開発する必要があるので、そこはやっぱりかなり苦労したところです」

左下のボタンを長押しすると、ダイビングモードになる

―― ボタンを長押しして水深を測りだすと、あとはもう潜れば水深が表示されるし、のぼってくるにつれて数字が「浅く」と、リアルタイムで変わるわけですね。

大村氏「左下のボタンを長押しすると『0m』で計測をスタートするので、そのまま水の中に潜って、水深1.5mくらいの水圧がかかると、潜水時間の計測を自動的に開始します。もちろん、10cm単位で水深を表示します」

齊藤氏「このボタン長押しで水深計モードになって、水槽などでも水深を測れます。ただ、それくらいの水深だと『ダイビング』ではなくて、海面に浮いているだけかもしれませんよね。ですので、身長分くらい潜ったら、潜水を開始したと判断して、潜水時間のカウントを始めます」

写真左が通常モードの表示、写真右がダイビングモードの表示。ダイビングモードでは、現在の水深、潜水時間、水温(または方位、または水面休息時間)が表示される