G-SHOCKの幅広いラインナップの中でも、サバイバルシーンで最先端の性能を発揮する“RANGEMAN”の新製品「GPR-H1000」が1月に発売されました。光学式心拍センサーなどの6センサーとGPS機能を搭載し、過酷な自然環境下で自分の状況を客観的に把握して的確な行動判断をサポートします。そんな生命の相棒ともいえる逸品が誕生するまでの経緯を、開発陣の2人に聞きました。
RANGEMAN「GPR-H1000」について詳しくはコチラ
――RANGEMANの開発の背景を伺うにあたり、それぞれどのような役割を担われたのか教えてください。
小島氏:GPRシリーズの企画担当の中でも、とくにセンサー付きの機能時計の企画を担当しています。4年前に商品企画に異動する前はデザイン畑にいて、センサーのデザインも多く担当しました。GPR-H1000は私が異動した前後くらいから企画が動いています。G-SHOCKは開発期間の長いプロダクトなのです。
濱上氏:私は「GPR-H1000」のデザインを担当しました。ほかにもG-SHOCKブランドの製品デザインを幾つか手掛けています。デザインは小島などの商品企画が動き始めて、1年ほどしてから関わっていくことが多いです。
――RANGEMANの開発コンセプトと、シリーズにおける「GPR-H1000」の開発コンセプトを教えてください。
小島氏:RANGEMANは2013年9月に“マスターオブG”シリーズの1モデルとして登場しました。初代の「GW-9400」から、密林や山岳地帯などの極限環境で活動するレンジャーたちが使用できるタフネスさがRANGEMANのコンセプトになっています。「GW-9400」では『方位』『気圧/高度』『温度』が計測できるトリプルセンサーをG-SHOCKとして初めて搭載しました。装着者が腕時計からの情報を頼りに動けることを重視したのです。
最新の「GPR-H1000」ではこのコンセプトを前進させ、GPSを軸に自分の位置や自分のハートレートを客観的に把握し、自分の取るべき行動をより的確に判断できるようにしました。ヘリコプターで現場に降り立ったレンジャーが腕時計を確認し、自分一人で次の行動につなげていく。そんなイメージです。
開発する上では、現場で活躍しているレンジャーに定期的に話を聞き、机上のアイデアにならないよう気を付けました。
――極限の環境という表現について、もう少し具体的なイメージが知りたいのですが、どのような定義なのでしょうか。
小島氏:レンジャーに実際の使用環境を聞くと、土の上で匍匐前進したり、泥の中や瓦礫の中に手を突っ込んだりといった場面が普通にあるそうです。
従来の時計だとボタンの部分から細かな砂が入って腐食するとか、ガラス面をぶつけて傷が付くといったことになります。雪山に行ったレンジャーからは、寒いところではバンドが硬くなるという報告を受け、バンドの素材を硬くなりにくいものに変えたこともあります。
そういった一般人の日常生活ではあまり遭遇しないけれど、レンジャーはしばしば遭遇する環境を、極限の環境と表現しています。
――GPR-H1000の一番の訴求ポイントを教えてください。
小島氏:スタンドアロンでスマート機能を持ちながら、極限の環境で気兼ねなく使えるところです。これを実現するため、「GPR-H1000」では従来のトリプルセンサーに加え、「光学式」「加速度」「ジャイロ」の3センサーを追加して、6つのセンサーになっています。また、GPSのアンテナも内蔵しています。
従来のRANGEMANでは外気圧などをセンシングして、周囲の環境を捉えていましたが、自分の血流がどうなっているかまでは取得しませんでした。しかし、レンジャーの意見を聞いたところ、周囲が把握できても自分の身体の状況が客観的に把握できないと、まだ判断を誤る懸念があるそうなのです。
たとえば、このままこの環境を走り続けたらどうなるか、どのくらい走っていられるのかといったことを、ある程度高い精度で予測したいというシーンが多々あります。しかし、気分が高揚していると『まだまだ行ける』と誤認してしまい、後で急激な疲労感に襲われ危険なことになります。
普段のトレーニングで自分のハートレートを把握していれば、そうした場面でも自分の身体状況を冷静に分析して判断できるのです。
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――極限の陸上環境での使用を想定し、デザインではどんな部分にこだわったか教えてください。
濱上氏:液晶画面の視認性の高さを犠牲にしないデザインを心掛けました。極限の環境では目をつぶっていても、手袋をしていても、ボタンを正確に押せることが求められます。その場合はボタンが大きければ大きいほど押しやすいし、視認性もフェイスが大きいほど見やすくなります。
しかし、フェイスやボタンが大きすぎれば、今度は手首の動きの邪魔になってしまいます。視認性やボタンの押しやすさを確保しながらも画面が大きくなり過ぎないよう、ボタンの飛び出し量なども計算して最適なバランスをデザインしました。
ボタンは泥や塵の多い環境でも安心して操作可能なマッドレジストボタンを採用し、ボタンを守るステンレスのメタルサイドガードを9時側と3時側に付けて補強しています。造形は複雑な仕上げで、より堅牢な作りになっています。
もちろん、正面だけでなく背面やバンドもきっちり調整しています。背面はハートレート測定用のセンサーが入るので、ウレタンの中でも柔らかい素材を選んでいます。
また、ラグの腕に当たる部分には、隙間を埋めてフィットさせる部品を用意しました。センサー搭載で大きく刻印できなかったブランドキャラクターのヤマネコは、この部分にあしらっています。
――「GPR-H1000」を開発するにあたり、機能の搭載やデザインの面で苦労した点を教えてください。
小島氏:機能面でいうと、GPSアンテナは苦労しました。ちゃんと受信できないと意味がないので、アンテナ感度は重要です。アンテナ感度を上げるにはケースを大きくしてアンテナも大きくすれば良いのですが、先程濱上もいったようにバランスが崩れて使いにくくなってはいけないのです。
濱上氏:ケースの大きさだけでなく、フェイスの表面もソーラーのための面積と時刻の見やすさのせめぎ合いも苦労した点ですね。「GPR-H1000」はハートレートが着くので、ヘッドが大きすぎると普段のトレーニング中に外されかねませんから。
また、重量も意識しました。大きいリングベゼルやステンレスの裏蓋は敢えて採用せず、軽量化を図るためにMIM成型で肉抜きし、1つひとつのパーツを少しでも軽くなるよう工夫を重ねて、実用的かつ風格のあるデザインに仕上げるのは大変でした」
――心地よい装着性がないと便利でもずっと着けていられませんね。
濱上氏:肌に当たる場所の違和感をなくすため、いろいろな皮膚の人のことまで考えて作っています。それとベルトは2穴で、ピッチも狭くしてこまめに調整しても安定するようになっています。
レンジャーは過酷な活動が続くので、朝と夕方で腕の太さが違うこともあります。このため、腕時計に調整の利くプラバンドを選ぶことが多いです。腕に巻いたときにピッタリとフィットして、フェイスが自分のほうにしっかり向けられるようにするには、ベルトが調整しやすいことも大事なのです。
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――新たに9種類のアクティビティ計測に対応しましたが、これによってどんな情報が取得でき、どんな活用が可能になるのか教えてください。
小島氏:アクティビティはトレッキング、ランニング、ウォーキング、トレイルランニング、バイク、オープンウォーター、プールスイミング、ジムワークアウト、インターバルトレーニングの9種類です。
なかでもトレッキングを軸に組み立てました。山に登った時などは昇降ペースや心拍の状況をひと目で確認するモードが備わっています。ランニングやバイキング、ウォーキングなどはトレーニングのためのモードです。
腕時計だけでも情報は見られますが、地図上で高低差も含めた軌跡を見る場合などは、連携するスマートフォンのアプリで確認できます。どんなルートを通ったか一目瞭然です。
このあたりはレンジャーへのヒアリングの時に、腕時計の小さい画面上で無理に表示しても見づらいので、スマートフォンと役割分担をはっきりさせた方が使いやすいとアドバイスされました。
このほか、カロリー消費量のほか、脂肪や炭水化物、たんぱく質がどのくらい使われたのか確認できるほか、カーディオ負荷ステータスもチェックできます。カーディオ負荷ステータスはトレーニングで心血管系に掛かる負荷を計測するものです。
濱上氏:腕時計の液晶画面でこれらの情報を表示するに当たり、どんな角度からでも見やすく読みやすいフォントを専用でデザインしています。フォントのデザインはチームの中に専任がいるんですよ。
フォントはモデルごとにある程度共通化していますが、製品によってユーザーの利用目的が異なるので、新しいモデルを作るたびに毎回見直しています。
先程フェイスの大きさやボタンの大きさのバランスを取るのが大変だったとお話しましたが、フォントのデザインもバランスに関わってきます。いろいろなパーツごとに担当がこうしたほうが良いと提案するので、使いやすさを最大化して美しい形にまとめます。その調整に時間がかかりました。
――「GPR-H1000」の想定ユーザーは第1にレンジャーだと思いますが、レンジャー以外だとどんな人に手に取ってほしいですか?
小島氏:レンジャーは特殊な部隊で様々な場所で活動するので、「GPR-H1000」は幅広いシーンで使えるスペックになっています。RANGEMANは精密機器の腕時計は壊れやすいというイメージに挑戦した製品です。かなりラフに使っても安心してお使いいただけます。
ちなみにGPSは電池の消耗が早いパーツなのでオフにもできますし、GPSと時刻表示は電流ルートを分けているので、GPS測位の電力を消費しても、時計機能は動き続ける二段構えになっています。
濱上氏:RANGEMANはレンジャー以外の自衛官や消防官、工事現場や建築現場の作業員、警備員などにも多くの愛用者がいます。消防官のユーザーからは、火災現場の救護活動で被災者を抱きかかえるような場面で、腕時計が被災者に当たって怪我をさせない仕様にしてほしいとリクエストされたこともあります。
接触の多い時計の上面をを金属からウレタンにしているので、救護者などへの不意な接触などにも配慮しています。
小島氏:GPR-H1000は、G-SHOCKの中でもスペックの点ではかなり上位に入る製品です。これまでのG-SHOCKファンの方はもとより普段使いでもGの世界観を感じたい方々に向けて、「GPR-H1000」を手に取って進化の先端を感じてほしいです。
濱上氏:G-SHOCKは腕時計市場においてユニークな位置を占めています。「GPR-H1000」はその中でもどんな環境でも使い続けられる安心感を持たせました。今後も国産メーカーとして安心して使える魅力的な製品を作り続けていきます。
――本日はありがとうございました!
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自身の身体や周囲の状況が素早く正確に把握できることは、過酷な極限環境であればあるほど、ミッションの達成や生命の保全に密接に関わってきます。「GPR-H1000」はそんな極限環境でユーザーをサポートし、進むべき道を示す理想の機能が盛り込まれていることが、開発者の想いから伝わってくるのではないでしょうか。
普段のランニングやウォーキングなどのトレーニング、トレッキングなどの活動でも、「GPR-H1000」の抜群の性能が活かされます。レンジャーのみならず、身体を酷使する仕事に就く人や、危険な場所に行くことがある人、サバイバル好きやアウトドア好きにも心強いパートナーになるでしょう。ぜひその手に一度着けてみてはいかがでしょうか?
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