マルケトは7月6日、マーケティングイベント「THE MARKETING NATION SUMMIT 2016」をグランドハイアット東京にて開催した。同イベントで行われた多数のセッションでは、マーケティングオートメーションツール「Marketo」の活用事例や最新のマーケティング動向などが語られた。本稿ではアクセンチュアによる講演「BtoB デジタル・マーケティングの潮流と要点」をレポートする。

BtoBにおける顧客の購買行動、その特徴とは?

アクセンチュア デジタルコンサルティング本部 シニア・プリンシパル 坂井田大悟氏

アクセンチュア デジタルコンサルティング本部 シニア・プリンシパルの坂井田大悟氏

当日、登壇したのはアクセンチュア デジタルコンサルティング本部 シニア・プリンシパルの坂井田大悟氏。これまでにコンサルタントとして製造業やITサービス業などのクライアントを支援してきた経歴を持ち、現在はアクセンチュア オープンイノベーション・イニシアチブにて先鋭技術選定やグローバル連携サポート、起業家メンタリングなどを担当している。

そんな坂井田氏が、昨今のBtoBにおける顧客購買の特徴として挙げるのは次の3点だ。

まず、「顧客は自社の営業に接する前に購買を進めている」こと。坂井田氏によるとその割合は実に57%にも上るという。

次に、「顧客とは視点の異なる複数の意思決定者である」こと。1つのBtoB購買が完了するまでには、例えば事業部、購買部、経理部など、視点の異なる複数部門で承認される必要があり、承認を行う人数は平均して5.4人だという。

最後に、「BtoB顧客の情報収集担当の46%は、18歳から34歳のデジタル・ネイティブ世代」、つまり、オンラインで情報を収集するのが当たり前の層であるということだ。BYOD(Bring your own device)が広まっていることもあり、デジタル・ネイティブ世代は勤務時間内にモバイルデバイスを用いて活発に情報収集を行っている。これは、最初に挙げられた「顧客は自社の営業に接する前に購買を進めている」ことにもつながるのだろう。

顧客の購買行動におけるもう1つの特徴は、「BtoBの顧客であっても消費者のような体験を求めている」ということだ。坂井田氏はオンラインショッピングを例に挙げ、「一般的な消費者が購買時に重視するのは『到着予定日』や『店頭在庫の有無』、『セルフピックアップ(コンビニなどでの受け取り)の可否』といった要素。一方、BtoBにおいて顧客が気にするのも『納期』『在庫』『購買の即時性』といった要素であるという調査結果が出ています」と説明する。

BtoB顧客のオンライン購買の期待値、消費者との対比

そして、BtoB顧客の71%は消費者と同じ体験を期待しており、企業がこうしたBtoB顧客の”消費者化”に対応すると、25%もの収益増加が起こりうるのだという。

これらの顧客行動の特徴を踏まえた上で、坂井田氏はデジタルマーケティングの要点を2つ挙げる。

1つは、「Webセルフサービス」だ。

Webセルフサービスとは、BtoB顧客を起点に情報を提供し、拾ってもらう情報(プル)と届ける情報(プッシュ)をすみ分けて、社内役割分担やWebサイトの機能に落としこむことである。顧客は、自身が抱える課題についてまず「興味(Interest)」を持ち、「学習(Leaning)」して「行動(Action)」を起こす。企業側はそうした顧客の購買プロセスに応じて、すみ分けた情報を「SEO」「SNS」「ライブチャット」「セミナー」といったコンテンツ、あるいはナビゲーションに振り分けるというわけだ。

顧客の行動を予測するために欠かせないのが、「ペルソナ」の設定と「ジャーニーマップ」の作成である。むろん顧客にはさまざまなタイプがあるが、ボリュームゾーンを見定めて、例えば「36歳の男性で自動車メーカーで開発・設計を担当している」というふうにペルソナを設定しておく。そして、その顧客が製品に興味を抱いてから購入に至るまでのプロセスと、各プロセスで働きかける際の施策をジャーニーマップとして明示するのだ。これにより、顧客像と施策とのブレがなくなり、社内議論の時間を短縮できるといった効果が期待できるという。

さらに、坂井田氏が勧めるのが「プロモーションチェックシート」を作ることだ。プロモーションの計画策定を行う際、チェックシートをベースに各事業部と打ち合わせ、対象や目的、どんなプロモーションを打ちたいのかをはっきりさせておくのである。氏は、「顧客や地域、対象商材、時期、サポートや予算といった項目をできるだけ詳細に書き込み、事業部周りの関係者との共通認識を確立しておくべきです」と強調した。

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