相続放棄で家の片付けはどうなる?遺品の整理方法と管理義務を解説

社会問題・用語解説

親の遺産を相続する予定があるけれど、親には多額の負債があり資産だけでは弁済しきれないという場合に、相続放棄という方法が検討されます。しかし、故人の遺産や形見を整理したり、分配したりする際に、相続放棄が絡むことでどこまで手をつけてよいのか、素人目にはなかなか判断が難しく、悩む方も多いのではないでしょうか。

本記事では、相続放棄の概要から手続きの流れ、また、故人の家が持ち家なのか賃貸なのかで異なる押さえておきたいポイントや、家の片付けで必ず気をつけたい点などを総まとめしています。相続放棄を検討していて遺品整理にお困りの方はぜひ参考にしてみてください。

知っておきたい相続放棄の基本ルール

そもそも相続放棄とは、どのような手続きのことを言うのでしょうか。まずはじめに、相続放棄の基本知識を押さえておきましょう。

相続人が遺産の相続を放棄すること

多くの場合、親が亡くなると遺産を相続することになりますが、その場合は不動産などの資産の他に、負債などのマイナスの資産に関しても引き継ぐことになります。残念ながら、プラス資産だけを受け取りマイナス資産は放棄するということはできないため、プラスよりもマイナス資産が大きくて借金を負ってしまう場合に検討されるのが相続放棄です。

相続放棄とは名前の通り、すべての財産を相続することを拒否するということで、家庭裁判所にて申述を行うことで放棄が成立します。なお、兄弟など相続人が複数の場合、1人だけ相続放棄して他の相続人で財産を分配するということは可能です。

以下の記事では、相続する不動産に負債がある時の対処法について解説しています。ぜひ合わせて読んでおきましょう。

相続する不動産に住宅ローンが残っていた!対応方法や注意点を解説
相続した不動産に住宅ローンが残っていたとしても、故人が団体信用生命保険という保険に加入していれば、所定の手続きを行うことで完済可能です。住宅ローンが残っていた場合の対応、完済できるなら物件を相続すべきか、メリット・デメリットも紹介します。

相続開始を知った日から3ヶ月以内に申し立て

総務省行政管理局が提供する情報ナビゲーションサイトe-Govポータルでは、相続についてのルールをまとめた民法を掲載しています。

民法第915条の相続の承認又は放棄をすべき期間によると、相続放棄は相続があったことを知ってから3ヶ月以内までという規約があります。これは、被相続人(亡くなった方)が死亡した日ではなく、相続開始を知り、自分が相続人になった旨を知った日から3ヶ月間が相続放棄が可能な期間という意味です。この3ヶ月を熟慮期間と言い、期間内に放棄の手続きをしなかった場合は単純承認したとみなされ、以降は相続放棄することができなくなります。

相続放棄する方法を知りたい方には以下の記事もおすすめです。ファイナンシャルプランナーのプロ視点で、どのように手続きを行えるのかを解説しています。

マイナビニュース「相続放棄の手続きや実行に必要な書類などをFPが解説

相続財産の管理義務は残る

家の相続放棄で混乱しやすいのが、相続人の管理責任です。相続対象の家が故人の持ち家だった場合と賃貸だった場合をそれぞれ見てみましょう。

持ち家だった場合

通常、持ち家の管理責任の範囲内には固定資産税の支払い義務が発生しますが、相続放棄をすると、固定資産税の支払いを行う必要はありません。

また、放棄後は解体処分や売却などはできなくなりますが、家の管理責任は相続人に継承されることになります。そのため、ゴミの放置、家の倒壊などでトラブルとなった場合、相続人は損害賠償を求められる可能性もあるので注意が必要です。なお、解体や売却などを行うと単純承認の扱いとなり、相続放棄はできなくなります。

賃貸だった場合

相続放棄をすると賃借人がいなくなるため、賃貸人から賃貸借契約の解除を求められます。しかし、相続放棄後は契約者の立場が引き継がれるわけではないので、契約解除を代行することはできません。基本的に、契約を継承する人がいなければ賃貸借契約は終了となります。

契約終了に伴い、家の片付けが必要になりますが、相続放棄する場合は相続人に遺品を処分する権利はありません。そのため、残置物の処理に関して賃貸人と相続人との間でしばしば問題が起こることがあります。次の章で、トラブルを避けるためのポイントを紹介します。

相続放棄でスムーズに家の片付けをする方法

たとえ相続を放棄したとしても、家の管理責任は継続することになります。しかし、既に自分の財産ではない家を売却したり片付けたりすることは簡単にはできないため、家の管理を相続財産管理人へ託すのが一般的です。

この章では、相続財産管理人が決定するまでの流れや、持ち家と賃貸の場合それぞれの手続きについて解説します。

相続財産管理人を立てる

相続財産管理人は主に、遺産を管理する業務を行う人のことを言い、相続人や故人の遺言を受けて遺産を受け取る人がいない場合、相続人が全員相続を放棄した場合などに、相続財産の管理を代行する法定代理人です。また、所有者を失った財産は国庫と帰属されますが、必要な弁済を行い国の財産として帰属させる手続きも担います。

一般的にはその地域の弁護士が選ばれるケースが多く、相続放棄の場合は利害関係人として家庭裁判所に申し立て、相続財産管理人を選任してもらいます。以下で具体的な流れを見てみましょう。

相続財産管理人を利用するなら家庭裁判所へ

相続財産管理人を選任してもらうためにはまず、家庭裁判所へ相続財産管理人の選任審判を申し立てる必要があります。

選任審判を行うことを申し立てるのは、利害関係人か検察官です。利害関係人には、以下のような人々が含まれるでしょう。

利害関係人となれる人 概要
相続債権者 被相続人に対する債権者
特定受遺者 故人が指定した財産を受け取った人
特別縁故者 内縁、療養看護人など

申し立てを行う裁判所は、故人が最後に住んでいた地域を管轄している家庭裁判所となります。

また、申し立てるときには、以下の書類を用意しておかなければなりません。

  • 申立書
  • 財産目録
  • 被相続人とその両親の戸籍謄本
  • 被相続人の子供・兄弟姉妹・直系尊属・代襲者としての甥・姪で死亡者がいる場合はその死亡者の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票か戸籍付票
  • 利害関係人が申し立てを行う場合は利害関係を証明するもの
  • 財産目録に記載された財産を証明するもの

財産目録に記載された財産を証明するものとして望ましいのは、不動産登記証明書、固定資産評価証明書、貯金通帳や有価証券の残高証明などの書類です。

申し立て後は審理が執り行われ、裁判所が相続財産管理人を選任します。候補者がいる場合はそのまま選ばれるケースもありますが、適正で、公平さを有した弁護士や司法書士といった専門家が選任される場合もあります。

このとき、万一申し立て人と被相続人の利害関係が認められなかった場合、申述は却下され、相続財産管理人は選ばれません。

相続財産管理人選任のために予納金を準備する

通常、相続財産管理人への報酬や経費は、放棄する財産をもって支払うことになっていますが、負債が多いなどで財産では報酬を支払いきれない場合、申し立て人は予納金を納付しなくてはなりません。また、それ以外に必要になる費用もあります。以下は、予納金を含めた申し立てに必要な費用の一覧です。

必要になる費用種類 代金詳細 備考
予納金 20~100万円前後 事案に応じて裁判所が算定
収入印紙 800円 切手を貼る形で納付
官報広告料(政府の刊行誌へ掲載する費用) 3,775円 裁判所から納入用紙を受け取って納める
郵便切手代 1,000円前後 裁判所により異なる

上記費用のうち、予納金以外の費用はおおかた支払う金額が決まっていますが、予納金は事案によって必要になる出費が変わるため、金額のふり幅が大きくなっています。経費や報酬などを支払って余りがある場合は、返金されることもあるでしょう。

持ち家の場合

上述したように、相続放棄をした家は勝手に売却や処分や整理を行うことはできなくなります。しかし相続財産管理人が決定するまでは、法定相続人に管理責任がありますので、近隣の迷惑にならないよう十分な注意を払って管理する必要があります。

万一、管理責任が移行する前に問題が生じる場合は、近隣からだけではなく、財産価値を棄損させたとして債権者からも損害賠償を求められる可能性もあるので注意しましょう。

また、遺品や家財類の中で明らかに不用なものやゴミ、故人の古着や写真など他人にとって交換価値の見出せないものに関しては受け取ることが許されています。形見分けとしてこのような物品を持ち帰ったとしても単純承認にはなりません。

賃貸の場合

故人が賃貸物件に住んでいた場合も、持ち家と同様、金銭価値が見いだせる遺品類の売却や処分は原則行ってはいけません。

しかしそれでは、賃借人がいなくなった物件の、その後の賃貸借契約や残置物の処理についてはどのように対応すればよいのでしょうか。次で詳しく解説します。

賃貸借契約の手続きと賃料の支払い義務

賃借人が亡くなったからと言って、賃貸借契約が自動的に解除されるというわけではありません。相続人のいない物件の賃貸借契約に関しては、賃貸人は契約解除を行う必要があります。

しかし、相続人が相続放棄を行った場合は、例え故人の身内であっても契約解除の手続きを代行することはできません。この場合、故人の財産の管理人となった相続財産管理人に契約解除の権利があり、遺品や家財の整理も行うことができるため、賃貸人と相続財産管理人の判断により契約終了の手続きを行うことになります。

それに伴い、契約解除までの家賃や滞納分、敷金の精算についても相続財産管理人の対応範囲となるため、万一賃貸人から賃料不足分の請求をされたとしても支払う義務はありません。

また、孤独死していたようなケースで、賃貸人が家の片付けを行なう費用を遺族に請求できるのかについても詳しく知りたいなら、以下の記事もチェックできます。

マイナビニュース「孤独死居住者の部屋の清掃代金 大家は遺族に請求できるか

家財道具の処分

借り手がいなくなったとなれば賃貸人にとっては早急に残置物を処理して新しい入居者を募集したいところでしょう。しかし、相続放棄をすると基本的に故人の遺品や家具を簡単に整理することができなくなります。勝手に処分をした場合は単純承認とみなされる可能性もあるため注意が必要です。

しかし、そのまま荷物を置いておくのは賃貸人に多大な迷惑をかけてしまうため、取り急ぎトランクルームなどを借りて遺品を保管したり、自宅へ持ち帰って管理するという方法もありますが、保管のためだけにかかるコストと労力を考えるとあまり得策ではないでしょう。相続放棄の申し立てを行って、相続財産管理人が選任されたならば、早急に残置物を引き渡すように準備しておきましょう。

不用品回収を依頼するなら「JAPAN環境プロジェクト」がおすすめ

不用品やゴミの早急に回収を依頼したいなら、不用品回収サイトが便利です。電話や相談フォームの回答をするだけで、分別してなくても不用品を最短20分で回収しに来てくれます。 特に、編集部がおすすめしたいサービスがJAPAN環境プロジェクトです。JAPAN環境プロジェクトがおすすめな理由を以下にまとめています。
  • 24時間年中無休で即日回収
  • 見積もりからの追加料金なしのパック料金なので安心
  • 年間1500件の全国対応という信頼できる実績
  • 今なら最大28%オフのキャンペーンを実施中
  • 経験豊富な専門スタッフが丁寧な対応

相続放棄時の家の片付けで気をつけたい事

相続財産管理人が管理を開始するまでは、家や財産の管理責任は相続を放棄した人にありますが、相続放棄するということは、その財産が既に自分のものではなくなるということであり、自己判断で遺品を売却したり、処分したりすることはできません。

ではどのように管理や整理を行えばよいのでしょうか。この章では、相続放棄をする際の家の片付けで、留意すべき点をご紹介します。

相続放棄する人は遺品処分しない

前章にて少し触れましたが、相続を放棄する人は故人の遺品を安易に売ったり捨てたりすることはできません。相続人がいなくなれば、故人の家も遺品も所有者のいない財産として最終的に国庫となるためです。

ただし、誰が見ても処分するしかない紙屑、生ゴミなどの金銭価値のないものや、写真・古着・手紙など第三者にとって交換価値のないものに関しては処分したり受け取ったりしても問題ないとされています。

遺品処分するとどうなるか

万一、判断を誤って骨董品や高価な家財を使用したり処分してしまった場合、相続放棄が認められなくなる可能性があります。

前述した通り、勝手に財産を処分したとして法定単純承認が成立してしまい、プラス財産だけではなくマイナス財産もすべて無条件に継承されますので、負債が大きい場合は多額の借金を負うことになる可能性もあります。遺品の整理の際にはくれぐれも慎重に仕分けを行うように注意しましょう。

一部のみ相続放棄するなら限定承認

相続する財産に負債がある場合、相続放棄と合わせて知っておきたいのが限定承認という方法です。限定承認は、プラス財産とマイナス財産を差し引きし、プラスとなる場合に限り相続できるという仕組みです。逆にマイナス財産が上回った場合、超過した負債の支払いは必要ありません。

相続人全員での申述が必要であったり、支払う税金が増える可能性があるというデメリットはありますが、引き継ぐ資産と負債がどのくらいあるのか不明な場合や、高額な財産がある場合には検討価値のある方法と言えるでしょう。限定承認も相続放棄と同じく申述期限は相続開始を知ってから3ヶ月となります。

相続放棄についてのQ&A

相続放棄をする場合、どこまでの管理が必要で、逆にどこからは手を加えてはいけないという線引きが非常に複雑で、あらゆる場面で迷うことでしょう。最後に、相続放棄に関してよくある疑問をいくつかご紹介します。

相続放棄したら形見分けもできないの?

相続放棄をするからと言って、まったく形見分けができないわけではありません。前章でも触れたように、その遺品が第三者から見て換価性があるかどうかが重要なポイントとなってきます。以下に一例を挙げてみました。

換価性のあるもの 換価性のないもの
  • 土地
  • 家具家電
  • 骨董品
  • 貴金属
  • 高価な時計や酒類
  • 絵画
  • 着物
  • 楽器
  • パソコン
  • 親族同士の写真
  • 手紙
  • 位牌
  • 着古した服
  • 交換価値がない靴やスーツ

このように、自分にとっては思い出深い貴重なものでも、一般的には値の付けられない物品は沢山あります。金銭的な価値がなければ財産にはなりませんので、形見分けとして受け取っても問題ありません。

相続人や相続放棄人を悩ませる遺品整理ですが、その悩みを解決させるべく遺品整理士の資格を活かして家の片付けをしてくれる業者も存在します。以下の記事で、便利な遺品整理業について詳しく知ってみましょう。

マイナビニュース「身内に代わり遺品を整理する「遺品整理業」開始ー株式会社リリーフ

相続放棄の取り消しはできる?

相続放棄をした場合、原則、取り消しはできません。放棄をした後で、「実は高額の資産があったことを知ったので取りやめたい」というような相続人の個人的な都合で取り消しを申し出ても認められることはありませんので、十分に検討してから相続放棄するかどうかを判断しましょう。

ただし、以下のような場合では、特別に相続放棄の取下げが認められたケースがあります。

  • 強要・脅迫されて相続放棄せざるをえなかった場合
  • 騙されて相続放棄をしてしまった場合

しかし、いずれも非常にまれな事例となりますので、相続放棄をする前には必ず、相続財産の内訳を入念に調べておきましょう。

家の片付けで迷ったらどこに相談する?

遺品の整理に関して少しでも迷うことがあれば、専門知識を持った弁護士に相談するのが賢明です。

遺品の換価性を意識したところで、実際に物の価値というのはなかなか素人目には分別が付きにくいところが多いものです。ましてや、大切な人を失った直後に沢山の遺品を整理する作業となれば心の負担も大きく、判断力も鈍ってしまうこともあるでしょう。

また、自分にとって有利に相続放棄の手続きを進めるためには、それなりに法律的な専門知識も必要となります。誤ってうっかり価値のある遺品を壊したり使ったりしてしまえば、気付かぬうちに相続人となってしまい、すべての資産・負債が相続され多額の返済に苦しむことにもなりかねません。いらぬトラブルを避けるためにも、ぜひ弁護士への相談を行いましょう。

まとめ

ふどうさん6261511

相続放棄をする場合、遺品や家財の処分や売却は行うことはできません。しかし、相続放棄をしても財産の管理責任は継続しているため、ゴミなどを放置したり、家が倒壊するなどで近隣から苦情がきたりした場合には、損害賠償を求められてしまいます。家庭裁判所にて相続財産管理人を選任してもらい、財産管理の責任を引き渡すようにし、未然にトラブルを回避しましょう。

また、勝手に遺品を売却したり、処分したりすると単純承認とみなされて相続放棄の申し立てを却下されてしまいます。形見分けできるものをあらかじめ把握しておけば、相続放棄の申し立て却下となってしまうことを避けられるでしょう。

さらに、相続放棄は一度認められると取り消すことはできません。放棄を検討する場合は相続財産の内訳をしっかり確認するようにし、家の片付けを行う場合には、どこまで手をつけてよいか、どこからはよくないのかをきちんと理解して、適切に判断するよう意識しておきましょう。

タイトルとURLをコピーしました