不遇の名作!? トップクラスの完成度は健在 - PS3『アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団』

「アンチャーテッド」はコワ面白い～前作とキャラクターの紹介

「アンチャーテッド」が隠れた名作であることが分かってもらえたところで、続いて紹介しておきたいのがこのシリーズの世界観だ。「アンチャーテッド」というタイトルの意味自体も、このシリーズが初めての人にはちんぷんかんぷんだろう。

同ジャンルの人気作「トゥームレイダー」シリーズは「ララ・クロフト」という美しくもエネルギッシュな女性が主人公を務めるが、「アンチャーテッド」では「ネイサン(ネイト)・ドレイク」という二枚目半の男性が主人公だ。年齢は30代で、ほかの洋ゲーの主人公と比べるとオヤジ色は薄味で若め。雰囲気的には'90年代前半の「ゲッタウェイ」あたりまでの、若かりし頃のアレック・ボールドウィンといった感じか。

時代は現代。主人公のネイトは、16世紀に実在したイギリス人冒険家、フランシス・ドレイク卿の子孫という設定となっている。フランシス・ドレイクは、世界を航海し、スペイン軍と度々戦った経歴を持つ勇敢な私掠船船長で、南アメリカ大陸と南極大陸の間にあるドレイク海峡が彼の名を元にしているほどの大航海時代の著名人だ。

そんな歴史上の人物をご先祖様に持つネイトも、独学で得た豊富な考古学知識を元に、宝探しをするプロのトレジャーハンター。しかし、法律をギリギリ掠める……いや、むしろやや破っているくらいのヤバい墓泥棒まがいのことをやっているためか、その交友関係もかなり怪しめ。そうしたネイトのヤバ目の仕事に関してコンサルティングを行うのは第二の青春を謳歌している陽気な60代詐欺師のビクター・サリバン(サリー)だ。

そんな父子みたいなコンビがご執心なのは、ご先祖様のドレイク卿が残した日記帳に書かれていた黄金の秘境「エル・ドラド」について。その手記からは、どうやらご先祖様自身が「エル・ドラド」を発見してしまったという事実が読み取れるのだ。ジャーナリストでもあり、人気冒険ドキュメントTV番組『アンチャーテッド』(Uncharted:未踏の)の美人キャスターとして人気の高いエレナ・フィッシャーは、ネイトの口車に乗せられて、密着取材&ネタ独占を交換条件に番組予算を彼らに投資している。

『1』では、この3人組が、「エル・ドラドの秘宝」を巡って、大航海時代の元スペイン領の無人島を探検することになるのだ。

『1』の語り口で素晴らしかったのが、島に下り立ってからの最初のシーン。ネイトとサリーは川の浅瀬に打ち上げられた第二次大戦時代の赤錆びたドイツ軍の潜水艦と遭遇する。なぜ、400年前の大航海時代の遺跡島に第二次世界大戦の遺物が? この後、サリーのこしらえた借金の取り立てに国際犯罪組織のボスで武器商人ガブリエル・ローマンの軍勢が、エディー・ラジャ以下の地元海賊軍団を引き連れてこの島に下り立つ。『1』は、この悪者たちを交え、遺跡だらけの無人島でのお宝争奪戦となるのだが、味方のはずのサリーやエレナの振る舞いが何となく怪しかったりして、プレイヤーは疑心暗鬼になりつつストーリーに引き込まれていくことになる。ラストに明かされる「エル・ドラドの秘宝」の正体には、恐らくすべてのプレイヤーが「なんと!」と驚かされるはず。興味を持ったらすぐに『1』を買ってプレイしよう。

さてさて。シリーズが人気を博するのに、欠かせない要素に、キャラクター達の魅力というものがある。

「アンチャーテッド」の主人公・ネイトにもこの魅力が十分ある。なにしろ、このネイトは、これまでの考古学アドベンチャーの主人公たちとひと味違う性格の持ち主である。実はこのネイト、口先達者の「ヘタレ野郎」なのだ。『1』では、せっかく念願のエル・ドラドの秘宝があると思われる島に下り立ったのに、「もうエルドラドの秘宝なんかどうでもいいから早くこの島から出たい」と言い出して常に逃げの姿勢を取りたがるのである。インディ・ジョーンズやララ・クロフトよりも、よく言えば理性的、悪くいうと意気地がない。だが、この一般人的な等身大の性格こそが彼の魅力なのだ。刻々と変化していくストーリーとシチュエーションが、ヘタレ野郎のネイトを半ば強引に危険へと連れて行くというゲーム展開、ストーリー展開が実にスリリングであり、同時にユーモラスだ。

「コワ面白い」……これが「アンチャーテッド」シリーズ特有の楽しさになっている。

(次ページへ続く)