• 新型「iPhone SE」好調の理由とは? 販売動向から見える小型スマホの再評価

    第3世代のiPhone SE

第3世代のiPhone SEの出足が順調だ。

量販店などの販売データを集計しているBCNによると、集計が可能なキャリア版モデルが発売となった2022年3月18日~31日までの2週間の販売台数は、2020年5月に発売となった第2世代のiPhone SEの2週間の販売台数に比べて8%増となっており、従来モデルを上回る売れ行きになっていることが明らかになった。

発売初日の出足こそ鈍かったものの、3月19日~21日までの3連休で大幅に販売を増加。その後も順調に販売を続けており、懸念された半導体不足による品薄はそれほど影響していないといえる。

  • iPhone SE販売台数初速累計比較 (BCN調べ)

iPhone SEの販売が好調な理由はいくつかある。

ひとつは、iPhone初心者層の取り込みだ。

実際、Androidスマホや、ガラケーからiPhoneに乗り換えるといった動きが見られているという。とくに、3Gサービスの終了にあわせて、ガラケーからスマホに乗り換えなくてはならないという需要が発生。そこにiPhone SEのニーズが生まれている。

3Gサービスは、auが2022年3月31日に終了。これに伴う駆け込み需要が見られたほか、今後、NTTドコモやソフトバンクも3Gサービスを終了する予定であり、今後もガラケーからの移行が、iPhone SEの売れ行きを後押しすることになりそうだ。

この需要を牽引しているのが、64GBモデルで57,800円からという価格設定と、操作性を高めるTouch IDおよびホームボタンの搭載だ。

10万円を超える価格設定が中心となっているiPhoneシリーズだが、iPhone SEは購入しやすい価格設定とともに、残価設定型販売プランの活用や、新規契約およびMNPによって、より低価格での購入が可能になっている。これがiPhone SE購入の敷居を下げている。

また、操作に困ったときには、ホームボタンを押せばいいという操作性の高さと、Touch IDを活用した指紋によるロック解除やアプリへのサインイン、Apple Payでの支払い認証にも活用できるという利便性が、スマホ初心者に受けている。

  • Touch IDの使い勝手の良さも評価されている

iPhone Proなどに慣れているユーザーにとっては、デザイン性の古さは感じざるを得ない部分もあるが、最新モデルでもそのデザインが採用されているのは、裏を返せば、多くのユーザーに愛されているデザインであり、iPhoneの使いやすさを象徴するデザインでもある。その点が、iPhone初心者に受けているといえる。

これは、シニア層の獲得にもつながっている。3Gサービスを利用していたガラケーユーザーのシニア層が、スマホに乗り換えなくてはならない際に、ホームボタンが使いやすい点や、iPhoneであれば周りに操作を教えてくれる人が多い点、エントリーモデルとして購入しやすい価格設定である点などが受けている。複雑な機能や高い性能をあまり意識しなかったり、iPhoneの特徴を知らない人でも、入門用スマホとして、iPhone SEを購入するきっかけになっているようだ。iPhoneを使ってみたいと思った人に、購入しやすい価格で提供できる点は大きな特徴だといえる。

また、これまでは、自分が使っていたiPhoneを買い替える際に、それまで使っていたiPhoneを子供に譲るといった使い方もあったが、価格設定などからiPhone SEを、子供用に購入するといった例もあるという。

iPhoneの既存モデルからの買い替え需要も確実に取り込んでいるようだ。

iPhone 6以降の機種を利用しているユーザーが、最新のテクノロジーを使いたいという場合に、iPhone SEは最適なスマホであり、同じくコンパクトなデザインを採用しているiPhone 13 miniでは価格が高いと感じているユーザーにも適している。

実際、4.7型ディスプレイ搭載のコンパクトデザインに対する評価も高く、従来のiPhone SEなどを利用していたユーザーが、ポケットに入るスマホとして、iPhone SEを購入しているという。

  • 144gと軽量でポケットに入るサイズが評価されている

iPhone SEは、第2世代と比べてデザイン面での変更はほとんどないが、重量は144gと、第2世代よりも4g軽くなっている。また、第3世代のiPhone SEでは、iPhone 13で採用しているA15 Bionicを採用。6コアCPUと4コアGPU構成によって、第2世代と比較して最大1.2倍のグラフィックス性能を実現。CPU性能は、iPhone 6sの3倍、iPhone 7の2倍、iPhone 8の1.8倍となっているほか、GPU性能はiPhone 6sの5倍、iPhone 7の3.7倍、iPhone 8の2.2倍に達している。

こうした性能は、グラフィックを駆使するゲームアプリの利用だけでなく、アプリの起動という単純な操作でも性能を発揮しており、そのメリットを体感しやすいといえる。

  • A15 Bionicチップを搭載するiPhone SE(左)とiPhone 13 Pro Max(右)

そのほかにも、iPhone SEでは、最先端の機能を搭載している点が評価されており、それらを踏まえたバランスや、コストパフォーマンスの高さも購入が促進されている理由になっている。

iPhone SEは、5G対応となっており、Wi-Fi環境がなくても、FaceTimeでHD通話ができたり、Share Playを使って友人と一緒に映画を楽しんだり、マルチプレーヤーのオンライゲインをプレイして、楽しんだりできる。

また、スマートHDR4などに対応した12Mピクセルのカメラを搭載し、集合写真でも人物のコントラストや明るさ、肌のトーンを、それぞれの人にあわせて自動で微調整して最適な写真が撮影できる。

さらに、A15 Bionicの効率性、iOSの統合、最新のバッテリー化学、内部設計の最適化など、様々な要素を組み合わせることで、バッテリー駆動時間を大幅に向上。従来モデルに比べて、約2時間の長時間駆動が可能になり、最大15時間のビデオ再生、最大50時間のオーディオ再生が可能になっている。20W以上のアダプタにつなげば、わずか30分でゼロの状態から最大50%までの高速充電が完了するといった使い勝手の良さも特徴だ。

第3世代のiPhone SEは、ガラケーからの買い替えが最終段階に入りはじめたいま、その受け皿としての役割を果たすとともに、既存のiPhoneからの乗り換えに最適なスマホとして、注目を集めるモデルになっている。