新生活を迎える春の時期は、子どもや学生が初めてのスマートフォンを手にする機会が増えます。「子どもが使うスマホは性能や装備を抑えた低価格モデルや中古品で十分」という考えを持つ保護者も少なくないと思いますが、「初めての1台に選ぶ入門機こそ、最新の性能や装備を持つ必要がある」と考えるのがアップル。「アップルが考える入門機の姿を形にしたのが新しいiPhone SEです」と語るiPhone担当者に、iPhone SEの開発の狙いを取材しました。

  • 伝統のデザインやコンパクトなサイズはそのままに、A15 Bionicの搭載で中身をパワフルに一新した新しいiPhone SE(第3世代)。最小容量の64GBモデルは57,800円で購入できる

iPhone 13と同じA15 Bionicの搭載でカメラ画質を底上げ

米Apple本社でiPhone担当プロダクトマネージャー(iPhone Product Manager, Apple Product Marketing)を務めるFrancesca Sweet氏は「最新の機能、最新のテクノロジーを驚くほどの価格で提供し、多くの人にパワフルでポジティブな体験をお届けする――。これが当初からの新しいiPhone SEの設計の考え方です。初めてのiPhoneとして選んでいただくのに最適な1台に仕上げました」と語ります。

Francesca Sweet氏がまず挙げたのが、耐久性を高めた本体です。Touch IDを搭載する親しみのあるデザインや本体サイズを継承しつつ、「前面のディスプレイと背面パネルにはiPhone 13の背面パネルと同じガラスを用い、耐久性を向上。耐水性能や防塵性能も備え、愛用のiPhone SEがきれいなまま長く使えるように設計しました」とコメント。ものを手荒に扱いがちな子どもでも、容易には壊れたり破損しないように改良したのは頼もしく感じます。

  • スマートな見た目ながら、耐久性や防水性能をしっかり備えている

入門機という位置づけながら、主力のiPhone 13シリーズと同じA15 Bionicを搭載したのも見逃せません。「A15 Bionicは、いかなるスマートフォン用チップよりも高性能で、現時点で究極のチップといえます」と性能の高さに胸を張ります。チップ自体はiPhone 13に搭載しているものとまったく同等で、一部の機能を落としたり制限していることはないとしました。

その恩恵が顕著に現れているのがカメラ機能です。すでにiPhone SEのレビュー記事でリポートした通り、スマートHDR 4やDeep Fusionの働きで、明るい日中や薄暗い屋内でも写真の精細感や深みが向上したことが確認できました。あまりにも大きな画質向上が図られたので、レンズやセンサーなどもこっそり改良しているのではないか確認しましたが、 Francesca Sweet氏は「レンズやセンサーなど、カメラのハードウエアはこれまでのiPhone SEとまったく同じです」とコメント。A15 Bionicへの変更だけで大きな画質向上が図られたことに驚きます。

  • カメラのハードウエアは、第2世代のiPhone SEと同じであることが明らかになった

  • ハードウエアは変わらないものの、A15 Bionicの搭載でカメラの画質は明確に向上した

ミラーレスなどのカメラを持たない多くの子どもや学生は、日常の様子や友だちとの思い出をすべてiPhoneで撮影します。それらすべての写真のクオリティが手間をかけることなくワンランク底上げされ、大切な思い出を美しく残せる点でも、古い世代のチップを備える型落ちのiPhoneの中古品などではなく新しいiPhone SEを選ぶ価値があると感じました。

OSアップデートへの取り組みも、初心者が安心して使える大切な要素だとFrancesca Sweet氏は説明します。「アップルが大切にしているセキュリティやプライバシー保護の機能も、新しいiPhone SEは何ら欠けることなく網羅しています。iOSは高い頻度で無償アップデートを実施していますが、新しいiPhone SEならば将来にわたって長い期間アップデートの対象機種となり、最新セキュリティに守られた状態で安心して使っていただけます」

内蔵バッテリーは“サイレント改良”を施していた

バッテリーの持ちがよくなった点も、新しいiPhone SEのポイントとして挙げられます。わずらわしい頻繁な充電、残量警告が出た際の不安感、バッテリーがなくなった際の不便さを回避できることは、現代生活においてスマホの重要なポイントとなります。今回のインタビューで、新しいiPhone SEのバッテリーはアップルのWebサイトでは触れられていない“サイレント改良”が施されていたことが分かりました。

新しいiPhone SEは、第2世代のiPhone SEと比べてビデオ再生時の駆動時間が最大2時間長くなっています。効率を高めたA15 BionicとiOS 15.4の相乗効果で駆動時間を延ばしたのかと思ったのですが、Francesca Sweet氏は「新しいiPhone SEはバッテリーの容量を大きくしました。もちろん、スリムな本体サイズは変えていません」とコメント。密かにバッテリーの大容量化を図っていたことを明かしました。iPhone SEの“サイレント改良”は、まめなバッテリー充電の習慣が身についていない子どもにとってフレンドリーな改良といえます。

  • 見た目は第2世代のiPhone SEやiPhone 8と同じだが、バッテリーの容量が大きくなったことが明らかに。残念ながら、MagSafeへの対応は見送られた

充電まわりでは、MagSafeに対応しなかったのが唯一残念な点といえます。iPhone 12シリーズで初めて搭載され、磁力の力で充電ポイントに吸着されて手間なく確実に充電できるのがMagSafeの魅力。MagSafeの磁力を利用したホルダーもサードパーティーから登場し、車載用を中心に人気を集めています。

充電まわりの仕様については、「新しいiPhone SEは、Qi規格の充電器を用いたワイヤレス充電や、30分で最大50%チャージできる急速充電に対応しており、ワイヤレスでも有線でも効率よく充電できるようにしました」と回答。MagSafe非採用の理由は明言しませんでしたが、アップルとしてはMagSafeは上位のiPhone 13シリーズのプレミアムとして位置づけているものとみられます。

手放す瞬間まで価値をもたらし続けるiPhone SE

「スマートフォンのポジティブな体験は、優れたハードウエアと使いやすいソフトウエアがそろって初めてもたらされます。iPhoneは、高度なセキュリティやプライバシー保護機能も備わっており、子どもをはじめ家族そろって安心してお使いいただけます。A15 Bionicによるパワフルな体験が加わりつつ驚くほどの価格にしたiPhone SEは、初めての1台に選ぶ入門機として間違いのない存在だと確信しています」と新しいiPhone SEを総括するFrancesca Sweet氏。「もし、長く愛用したiPhone SEを下取りに出したり知り合いに譲ったりして手放す際にも、改めて価値の高さを実感してもらえるはずです」とも添えました。