ユカイ工学は、バッグなどにつけることができるチャームロボット「mirumi」の販売を開始した。「見る」と「ぬいぐるみ」を組み合わせた「みるみ=mirumi」が名称の由来であるように、声を聞き、人が近くにいることを、頭部のセンサーが認識すると、ちらりと見たり、じーっと見たりするなど、赤ちゃんのような目や首の動き方をすることが特徴のぬいぐるみロボットだ。カバンやリュックに抱きつかせて装着し、いつでも連れ歩くことができる。
mirumiの価格は、1万9800円。初年度で10万台の販売を目指すという。
ユカイ工学の青木俊介CEOは、「mirumiが10万匹(10万台)出荷されると、いままでになかったロボットの広がりが見られ、新たな世界が開けると考えている。ロボットをもっと身近に使うことができるような社会を作るための布石にしていきたい」と述べた。
「mirumi」は、ふわふわした毛に覆われた未知の生きもののようなデザインとなっており、大きさは手のひらに乗るぐらいだ。バッグに抱きつき、撫でると反応し、気まぐれな動きをする。
「目指したのは、赤ちゃんの無垢なしぐさが引き起こす『幸せのおすそわけ』。抱っこされている小さな子どもが、そばにいる人をチラチラと見るしぐさを再現しており、恥ずかしそうに隠れてしまったり、再び顔を出してこっちを見たりといったしぐさによって、周りにいる人を幸せにしてくれる。ときには照れて、無視されてしまうこともあるが、シャイな可愛さも取り入れた」と語る。
振る舞いでは、恥ずかしがり屋であること、好奇心旺盛であること、生物感がある動きをすること、行動原理がわかりそうで、わからない感じを表現することにこだわったという。
撫でると、顔をあげて、正面を向いたときには頭が一番あがるように、顔を円弧に回すような動作を再現。音を聞くと、恥ずかしそうに頷いてから、チラっと見たり、大きな音の場合には音が鳴った方角とは逆に顔を背け、恐る恐る音の方向を確認したりといったしぐさを見せる。充電中には、目を覚まして、「ん?」となって、また寝始める。mirumiでは、約100種類の振る舞いが設定されているという。
バッグなどに抱きつく点では、クリップやボタン、スナップバンドといった機構も検討したが、構造物がついているという状況が生まれ、生物らしさを損なってしまうため、独自に抱きつくための機能を開発。ヒンジ部を持った弾力のある腕で、カバンに抱きつき、さらに、紐を抑え込むためにお腹の部分に溝を作り、固定する力を強めているという。抱きつき機構は特許申請中だ。
また、眼のパーツは、正円であり、黒目の位置が中心部からずれていないことにこだわり、国産パーツを使用。目のパーツをメカに固定することで、動いた方向に視線がしっかりと向くようにした。背面部分には充電のためのコネクターがあるが、普段はそれが見えないようにパンツスタイルを採用している。
生地の選定にもこだわり、国内生地メーカーにカスタマイズオーダーし、毛足が長く、毛密度が高く、ふわふわし、撫でたくなるようなファー生地を採用したという。生地の手入れについては、定期的にブラッシングすることを推奨している。
なお、防水対応にはなっていないため、本体の丸洗いは避け、固く絞った水タオルで拭くことや、「雨の日は赤ちゃんを抱くように傘のなかに入れてほしい」などとした。
また、本体色についてもオリジナルで作成。ピンク、アイボリー、グレーの3種類を用意した。サイズは約100×110×140mmで、重量は約155gとなっている。充電式リチウムポリマー電池を内蔵しており、約8時間の稼働が可能。約2時間で満充電になる。
パッケージデザインにもこだわっており、購入時やプレゼントするときに高揚感がでるように工夫。箱を開けると、mirumiと目が合うようにしている。
2026年4月23日から、ユカイ工学のオンラインサイトでの販売に加えて、蔦屋書店オンラインストアでも販売を開始している。また、2026年4月23日から30日まで、先行展示販売を行う。代官山蔦屋書店や二子玉川蔦屋家電、エディオン蔦屋家電のほか、函館、浦和、幕張、湘南、名古屋みなと、京都岡崎、梅田、奈良、六本松の蔦屋書店の全国12店舗で販売する。
また、グローバル展開も予定しており、2026年5月からは、香港の高級百貨店「Lane Crawford」の4店舗で販売を開始。オーストラリアや中国、アメリカ、タイ、ドイツなどでも順次展開する。2026年7月には、英国ロンドンの老舗高級百貨店「Harrods」や、ドイツベルリンの「KaDeWe」でもポップアップストアを出店する予定だ。
「mirumi」は、2024年夏に開催した社内コンペで提案したアイデアが発端になっている。 「赤ちゃんのしぐさをもとにした抱きつくロボットや、持ち歩けるロボットを開発したいというアイデアが提案され、最初は女子高生などのティーンエージャーを対象に企画した」という。
開発に携わったのは5人の女性で、同社で女性だけのプロジェクトチームは初めてだという。
2025年1月に、米ラスベガスで開催したCES 2025に出展することを目標に改良を加え、「ロボットと目が合ううれしさ」という機能を組み込み、デザインの変更も行った。
CES 2025では大きな話題を集め、メディアでの報道が相次ぎ、来場者からは、女性を中心に、「購入したい」、「身に着けたい」という声が相次いだという。
青木CEOは、「ぬいぐるみというと、子供のものだという印象があったが、ここ数年で、大人がキャラクターグッズを持つことが、欧米でも自然になってきた。そうした追い風を感じた」と、当時の手応えを振り返る。
CES 2025への出展以降、ファション感度の高い女性からの注目を集めていたことから、ターゲット層を再考。大人をターゲットとしたモノづくりを進めていったという。
リーダーを務めたユカイ工学 デザインチームの樫村京ディレクターは、「開発のキーワードは、かばんに着けて連れ出したくなること、目が合うこと、カワイイと思えること、そして、赤ちゃんらしさである」とした。
触れるとおずおずと顔をあげたり、声をかけてもこっちを向かずにそわそわしたり、1秒間無視してから、顔を向けるといった動きも行うのも、こうしたコンセプトをもとにして実現している。
2025年12月には、世界最大のクラウドファンディングサイトである「Kickstarter」を通じてクラウドファンディングを実施し、約8000万円の支援金が集めた。ユカイ工学が実施したクラウドファンディングでは過去最高額になったという。
支援者の内訳は、米国が最も多く46.5%を占め、次いで、香港の9.4%、シンガポールの6.1%と続いた。「香港やシンガポール、タイなどは、SNSを通じて情報を得るなど、トレンドに敏感な人たちが多いと感じた」(ユカイ工学の青木CEO)という。
さらに、mirumiのインスタグラムのアカウントを用意。2万5000人のフォロワーを獲得した。主要年齢層は35~44歳で37.7%を占め、25~34歳も26.0%、45~54歳も22.5%を占めた。また、女性が83%を占めているという。
「インスタグラムを通じて、多くの人とつながることができ、パリス・ヒルトンさんなどの著名人たちもコメントしてくれた」
発売に先駆けて、ミラノファッションウイークでのGCDSとのコラボや、インフルエンサーへのサンプル品の提供のほか、タボス会議の参加者がmirumiを会場に持ち込むケースなどもあり、グローバルでの話題づくりにも力を入れた。また、これにあわせて、テック系メディアだけでなく、ファッション系メディアに取り上げられることも増えていったという。
青木CEOは、「多くのバックオーダーを抱えており、すでに2万匹(2万台)の行き先が決まっている。これは、ユカイ工学としても、過去最大の出足の良さであり、当初計画の約4倍の水準である。初期出荷でも、日本向けの在庫をなんとか確保したが、すぐに無くなってしまう可能性がある。見かけたら迷わずに確保してもらいたい」と語った。
ユカイ工学は、「ロボティクスで、世界をユカイに。」をビジョンに掲げ、様々なコミュニケーションロボットやIoTプロダクトを企画、開発してきた。
同社を設立した青木CEOは、2001年にチームラボの設立に参画し、共同創業CTOに就任。2008年にはピクシブの創業にも関わり、CTOに就任し、2011年にユカイ工学を設立した。
青木CEOは、「テクノロジーとカルチャーの潮流を捉えながら、エモーショナルな体験を実現することに取り組んできた」とし、「子供のころの一番の大きな夢は、ロボットを作ることだった。10~15年後には、ロボットが世の中に広まっている未来になるのではないかと想像して、2011年に設立したのがユカイ工学。自由に、愉快な気持ちで新たなものを生み出すカルチャーを作り、自分たちが作ったもので、世界中の人たちをあっと言わせたいと考えた」とする。
当時から、青木CEOが着目したのが「カワイイ」という要素だった。「当時のロボットには、カワイイものがなかった。だが、ロボットが普及していくにはカワイイという要素は不可欠。『カワイイものを日本人が作らなくてどうするんだ』という気持ちもあり、カワイイという観点ならば、米国のビッグテックとも互角に戦えるという野望を持っていた」と振り返る。
これまでに、見守りができるコミュニケーションロボット「BOCCO」は累計2万台、しっぽがついたクッション型セラピーロボットの「Qoobo」は5万匹、指を入れると心地よい甘噛みを再現する「甘噛みハムハム」は8万匹、器の縁に置くとファンで飲み物などを冷ましてくれる「猫舌ふーふー」は2万匹の実績を持つ。そのほかに、企業向け技術開発を行っており、JTとは呼吸するように膨らんだり、縮んだりするクッション「fufuly」、NTTドコモとは6Gを活用して自律的に動作したり、制御したりできる自律共生ロボット「DENDEN」、自動車メーカーとはタイムラプス撮影とショート動画撮影に最適なマルチアングルカメラの開発に取り組んだ実績がある。さらに、ファッションブランドとの連携により、ロボットの要素を持ったファションアイテムの開発も進めているところだ。
これらのユニークな製品は、ユカイ工学の独特の企業文化から生まれているといってもいいだろう。
たとえば、社内では毎年、「メイカソン」と呼ぶ社内コンペが行われている。エンジニアやデザイナーなどのモノづくりに携わる社員だけでなく、営業、人事、経理、PRなど、社員全員が参加して、チームごとにアイデアを出して、プレゼンテーションを行い、試作品によるデモストレーションも実施するという。
「このときに大事にしているのが『妄想』という言葉。漠然とした課題解決を起点にするのではなく、これが欲しいという熱量の高いアイデアを形にすることを社内ルールにしている」という。
今回のmirumiも、メイカソンのなかから生まれたものであり、こうした自由な発想を持つ企業文化のなかだからこそ、誕生したプロダクトのひとつだ。
実用的なロボットではなく、愉快なロボットづくりをビジネスの柱に据えるユカイ工学が提案する新たなロボットがmirumiということになる。




















